日本医薬品添加剤協会
Safety Data
|  Home | menu |

和名 エタノール
英文名 Ethanol

CAS 64-17-5 (link to ChemIDplus), (link to JAN DB), (link to JANe DB)
別名 アルコール(109611)、エチルアルコール
収載公定書  局方(JP17/無水JP17), USP/NF(28/23)(Alcohol) EP(5)(Ethanol)
用途 安定(化)剤、可溶(化)剤、基剤、矯味剤、懸濁(化)剤、着香剤・香料、消泡剤、乳化剤、分散剤、防腐剤、保存剤、溶剤、溶解剤、溶解補助剤


JECFAの評価 (link to JECFA)
本溶剤の使用はGMPで特定されるものに制限すべきである。食事における役割を考慮するとごく少量の残留溶媒を確認することは緊急の案件ではないが,GMPの結果として生じる残留溶媒が重篤な毒性を有することはないと考えられる。


単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
LD50 (FAO Nutrition Meetings Report) 2)

動物種

投与経路

LD50

LD100

文献

マウス

経口
皮下
皮下
静脈内
吸入

9488
8285
-
1973
-

-
-
4700
-
29300ppm

Spector, 1956
Spector, 1956
Browning, 1953
Spector, 1956
Browning, 1953

ラット

経口
腹腔内
吸入

13660
5000
-

-
-
12700ppm

Spector, 1956
Spector, 1956
Browning, 1953

モルモット

腹腔内
吸入

5560
-

-
21900ppm

Spector, 1956
Browning, 1953

ウサギ

経口
経口
経口
経口

6300
9500
-
-

-
-
7890
9000-10000

Spector, 1956
Spector, 1956
Spector, 1956
Browning, 1953

ウサギ

腹腔内
静脈内

-
-

3500
9400

Browning, 1953
Spector, 1956

ネコ

静脈内

-

3940

Spector, 1956

イヌ

経口
皮下
静脈内

-
-
-

5500-6500
6000-8000
5265

Spector, 1956
Spector, 1956
Spector, 1956

ヒト

経口

-

6000-8000

Wvon Oettingen, 1943


反復投与毒性 (link to TOXLINE)
マウス
1
10匹のマウスに通常飼料及び0.8, 4, 20%のエチルアルコールを含む飲料水を5週間供与した。投与量に依存した死亡率の増加がみられたが,生存動物の平均体重に影響は認められなかった。2) (College Pharmaceutical Society, 1962)

16
匹のマウスに50% アルコール溶液の0.1 mL2日に1回,547日間直腸内投与した。2匹の動物に腫瘍がみられ,1匹では肉腫であった。別の実験では,雌雄各10匹に50%アルコール溶液の0.1 mL2日に1回,554日間経口投与した。背部に2つの腫瘍が観察された。2) (Krebs, 1928)

ラット
5
匹の雌性ラットに40%アルコール水溶液の1 mLを,週341日間経口投与した。腫瘍の発現は認められなかった。2) (Russell et al. 1941)

雄性ラットに15%アルコールを飲料水として供与した。177日後,腫瘍発現は認められなかった。2) (Best et al. 1949)

エチルアルコール含有飼料を300日間供与したラットにおいて,病理学的変化は認められなかった。2) (Nakahara & Mori, 1939)

ウサギ
64
匹のウサギに20%アルコールの20-100 mL/日を,胃管を用いて304日間投与した。13匹が感染症により死亡したが,生存例に腫瘍の発現は認められなかった。2) (Connor, 1940)

イヌ
23
匹のイヌに40%水溶液の10 mL/kg626ヵ月間投与した結果,腫瘍の発現は認められなかった。2) (McNider & Donney, 1932)


遺伝毒性 (link to CCRIS),  (link to GENE-TOX)

試験

試験系

濃度
μg/plate

結果

文献

復帰突然変異

ネズミチフス菌 (TA104, TA100, TA1535, TA98,TA97)

100-10000 μg/plate (±S9)

陰性

Zeiger E, 19928)

遺伝子突然変異

マウスリンフォーマL5178細胞

0.0922-0.738 mol/L (-S9)
0.414-0.517 mol/L (+S9)

陰性

Wangenheim IM, 19887)



がん原性 (link to CCRIS)
SD
系雌雄ラットに,1及び3%濃度のエタノールを含む飲水を104週間供与した結果,がん原性を示唆する変化は認められなかった。4) (Holmberg B et al. 1995)


生殖発生毒性 (link to DART)

妊娠イヌに妊娠1日から20週間,500 mL/日を混餌投与した結果,児動物に軽度ながら明らかな中枢神経系の形態学的及び生化学的変化が認められた。5) (Marcinik et al, 1974)

SD
系妊娠ラットの妊娠6日〜12日に12.5%エタノールの0.015 mL/gを腹腔内投与した。妊娠12日に母動物の帝王切開を行い,胎児の検査を行った。150例中4例の胎児に心臓原基の発達の遅延が認められた。心臓の分化の変わりに,"S"状心管の拍動がみられた。頭部の変形及び中枢神経系の欠損も何例かにみられた。6) (Ross et al. 1986)


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
エタノールによる直接の心臓機能低下が,実験動物への急性投与により認められた。心筋の収縮性及び運動効率に対する有害作用が,100 mg/dLという低い血中濃度で発現する。3) (Gilman, 1980)

数種類の系統 (Swiss, BALB/c, DBA/2, CBA, C57BL/6, B6D2F1) の雌雄マウスに,95%エタノールの経皮投与(day 0, 2) 及びFCAの皮下投与 (day 2) を行い,day 995%エタノールの0.05 mLを耳介皮膚に経皮投与し,投与24時間後に厚さを計測した結果,皮膚の肥厚はみられなかった。Swiss系マウスにFCAとエタノールの混合物の0.05 mLを背部皮下に投与するとともに腹部に経皮投与した。day 3, 5, 7, 10, 12, 14にエタノールを経皮投与し,day 7FCAを皮下投与した。day 26に耳介皮膚に経皮投与し,24及び48時間後に厚さを測定した結果,変化は認められなかった。
1) (Descotes, 1988)


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
誤用

その他 (FAO Nutrition Meetings Report) 2)
エチルアルコールは経口もしくは吸入により主に脳に作用し,初めは高次機能の抑制に働き,それから麻酔のようになる。ヒトの致死量は8-10 mL/kgもしくは1クォートのウィスキーあるいは0.5%以上の血液中濃度である。2) (Haag et al. 1951, von Oettingen, 1943)

重篤でおそらく非可逆的な中枢神経系の障害により死亡が発現する。急性中毒は視力,視野,目の協調運動及び距離の判断に影響を及ぼす。蒸気は,目及び気道系粘膜に軽度の刺激性を示す。ヒトと同様に動物においても耐性の形成が認められている。吸入では3500 ppmまでの濃度においては,刺激性を示さないか,自覚症状がないか,もしくは血中アルコール濃度の上昇も認めらい。2) (Treon, 1958)

中等度の用量は,欲求及び食事の吸収を刺激する。高濃度では,胃粘膜に対する刺激性を示す。2)(Jacobs, 1947)

0.5 g/kg
未満の摂取量ではヒトの行動への影響は認めらず,0.5-2 g/kgでは何らかの障害が現れ,2 g/kgを超えると重篤な酩酊を示す。2) (von Oettingen, 1943)

慢性的摂取により,視覚障害及び随意筋の非協調運動を示す。2) (Browning, 1965)

毎日160 gを超えるアルコールの10年以上の摂取により,肝硬変を誘発する。 2) (Thaler, 1969)

肝臓におけるエタノールの特異的な酸化は,アルコール脱水素酵素活性の抑制にもかかわらず細胞内生化学の変化及び病理学的損傷を誘導し, NADを他の箇所から移動させる。2) (Mistilis & Birchall, 1969)

ヒトでは栄養不足の二次的変化として,電解質及び無機質の不均衡が生じる。心臓毒性は,マグネシウム減少症及び亜鉛減少症により発現する。エタノールは利尿剤であり,比較的大量の水分を消費すると,結果としてマグネシウム尿及び亜鉛尿が生じる。長期化した場合,心臓のマグネシウム 2) (Heggtveit, 1964) もしくは亜鉛 (Wendt et al. 1966) 2)の低下の二次的変化として心臓の障害が発現する。

20% w/v
濃度の腹腔内投与により,化学物質による腹膜炎,膵炎及び腹腔内臓器の癒着が生じる。2) (Wiberg et al. 1969)


参考文献
OECD
database (link to SIDS)
小児(link to STEP database

1) Cutan Ocular Toxicol 7(4): 263-72. 1988. (link to the Journal)
2) FAO Nutrition Meetings Report Series No. 48A  (link to WHO DB)
3) Gilman AG, Goodman LS, and Gilman A (eds.): Goodman and Gilman’s The pharmacological Basis of Therapeutics. 6th ed. New York: Macmillan Publishing Co. Inc. 1980., p.378.
4) Toxicology 96(2): 133-145, 1995. (link to the Journal
)
5) Neuropatol Pol 12(1): 27-33, 1974. (link to the Journal)
6) Ross CP et al: Can J Cardiol 2:160-163, 1986.
7) Muragenisis 3(3): 193-205, 1988. (link to PubMed)
8) Environ Mol Mutagen 19(suppl 21): 2-141, 1992. (link to PubMed)

Abbreviation

ChemIDplus; ChemIDplus DB in TOXNET, CCRIS;Chemical Carcinogenesis Research Information System , DART; Developmental Toxicology Literature

メニューへ




 

copyright(C) 2005 日本医薬品添加剤協会 all rights reserved

Japan Pharmaceutical Excipients Council