和名 イソプロパノール 英文名 Isopropanol
CAS
67-63-0 (link
to ChemIDplus,
(link to
JAN DB), (link to
JANe DB)
別名 イソプロピルアルコール 収載公定書 局方(JP17)
USP/NF(28/23) EP(5)
用途 可溶(化)剤,基剤,保存剤,溶剤,溶解補助剤
■JECFAの評価 (link to
JECFA) 飽和脂肪族非環式鎖状二級アルコール類,ケトン類及び飽和/不飽和エステル類のグループとしての評価において,クラスTに分類されている。ヒトの推定摂取量 (EU: 99000 μg/日,US:
9900 μg/日)
がクラスTの摂取許容量 (1800μg/日)
を上回るが,香料としての使用では現在の使用量に安全性上の問題は認められない。2)
■単回投与毒性 (link
to ChemIDplus)
動物種 |
投与経路 |
LD50(PIM 290)
1) |
文献 |
マウス |
経口 |
4.8
g/kg |
|
ラット |
経口 |
4.42-5.84
g/kg |
|
ウサギ |
経口 |
7.9
g/kg |
|
|
(経口 |
6.4
mL/kg |
Lehman,
1944) |
|
経皮 |
13
g/kg |
|
■反復投与毒性 (link to
TOXLINE) ラット イソプロピルアルコールの潜在的毒性について,110匹の雄性Wistarラットに0, 1, 2,
3もしくは5%溶液を飲料水として12週間供与することにより検討した。嗜好性の理由により,投与2週に最高用量を4%濃度に低下した。1日平均摂取量は0, 870, 1300,
1700及び2500 mg/kgと報告されている。1700もしくは2500
mg/kg群では,統計学的に有意な体重の減少が認められた。1300
mg/kg以上の群で,肝臓及び腎臓の相対重量の用量依存的な増加が,1700
mg/kg以上の群で副腎の相対重量の増加が,2500
mg/kg群で精巣重量の増加がみられた。腎臓の近位尿細管に硝子円柱形成及び硝子滴の増加が,用量依存的に認められた。無毒性量は870 mg/kg/日であった。2) (Pilegaard & Ladefoged,
1993)
■遺伝毒性 (link to
CCRIS),
(link to
GENE-TOX)
試験 |
試験系 |
濃度 |
結果 |
文献 |
復帰突然変異 |
ネズミチフス菌 (TA98,TA100, TA1535,TA1537) |
3μmol/plate (±S9) (174μg/plate) |
陰性 |
2) Florin et al.
1980 |
|
ネズミチフス菌 (TA98,TA100,TA1535, TA1537,
TA1538) 大腸菌
(WP2uvrA) |
5-5000μg/plate (±S9) |
陰性 |
2) Shimizu et al,
1985 |
|
ネズミチフス菌 (TA97,
TA98,TA100, TA102,TA104,
TA1535,TA1537) |
≦10 mg/plate (±S9) |
陰性 |
2) Zeiger et al,. 1992 |
前進突然変異 |
チャイニーズハムスター卵巣細胞, Hprt
locus |
0.5-5 mg/mL(±S9) |
陰性 |
2)
Chemical Manufacturers' Association,
1990 |
|
チャイニーズハムスター卵巣細胞, Hprt
locus |
0.5-5 mg/mL (±S9) |
陰性 |
2) Kapp et al.,
1993 |
■がん原性
(PIM 290) (link to
CCRIS) 動物実験において,がん原性はみられなかった。1)(Cheminfo, 1989) 劣化品 (イソプロピルオイル)
には,職業上の曝露により呼吸器系の腫瘍の発現が懸念されている。1) (Weil et al.,
1952)
■生殖発生毒性 (link to
DART) 母動物毒性が発現する用量の吸入により,胎児体重の低下及び骨格異常の増加が認められた。1) (PIM 290, Nelson et al., 1988)
1群25匹のSD系妊娠ラットの妊娠6日〜15日に,イソプロピルアルコールの0, 400, 800及び1200
mg/kgを経口投与した。800及び1200
mg/kg群では死亡がみられた。母動物の妊娠期間に体重増加の抑制がみられ,800及び1200
mg/kg群の妊娠子宮重量の低下との関連が認められた。400
mg/kg群では母動物毒性及び胎児の発生への影響はみられなかった。いずれの群においても催奇形性は認められなかった。2) (Tyl et al,
1994)
1群15匹の妊娠ウサギ
(ニュージーランドホワイト) の妊娠6日〜18日に,イソプロピルアルコールの0, 120, 240, 480 mg/kgを経口投与した。480
mg/kg群の4例が死亡し,重篤な毒性兆候がみられ,統計学的に有意な摂餌量の低下が認められた。120及び240
mg/kg群では母動物並びに胎児の発生への影響はみられなかった。いずれの群においても催奇形性は認められなかった。2) (Tyl et al,
1994)
イソプロピルアルコールを飲水に混じてラットに3世代にわたり供与した。イソプロピルアルコールの平均摂取量は,第1,第2及び第3世代でそれぞれ1470, 1380, 1290
mg/kgであった。第1世代では,投与初期に成長の遅延がみられたが,投与13週には回復した。成長に対するその他の影響,並びに生殖への影響は認められなかった。2)(Lehman et al, 1945)
■局所刺激性
(PIM 290)1) 刺激性発現用量: 皮膚 (ウサギ): 500 mg/24h (軽度)、 眼 (ウサギ): 0.1
mL 70%溶液 (重度)
■その他の毒性 併用毒性 (PIM 290)1)
イソプロピルアルコールはハロケン類 (例;
四塩化炭素) の肝毒性及び腎毒性を増強した。(Ellenhorn, 1981)
■ヒトにおける知見 (link to
HSDB) その他 成人の致死量は240 mL (2-4 mL/kg)
より低いものと推定される。死亡時の血中薬物濃度は150 mg/dL (25 mmol/L)
であった。しかしながら,透析による生存例の血中濃度が560 mg/dLであったことも報告されている。(PIM 290)
1)
8人の成人にイソプロピルアルコールの0,
2.6もしくは6.4 mg/kgを6週間摂取させた。血液もしくは尿における生化学的もしくは細胞学的検査,肝臓におけるスルホブロモフタレインの排出能,眼の肉眼的性状,ボランティアの一般状態に明らかな変化は認められなかった。(WHO Food Additive Series No.42, Wills et al., 1969)
2)
急性毒性 経口摂取 (PIM 290) 1) 中毒の一般的な経路である。30分以内に80%が吸収され,2時間以内に完全に吸収される。症状としては嗜眠,消化管痛,痙攣,悪心,嘔吐及び下痢がみられ,大量投与により意識消失を伴う死亡が認められた。小児では,70%イソプロピルアルコールを3回以上嚥下した場合,医師による観察が必要な状態となる。 イソプロピルアルコール中毒は急速 (30〜60分)
に発症し,数時間以内に最大の作用を示す。重篤な毒作用は初期の消沈及び血圧低下である。その他の症状としては,めまい,一般状態不良,頭痛,錯乱,胃の刺激,腹痛,嘔吐,吐血,血圧低下,頻脈,(循環器系の抑制),十分な腱反射の消失がみられた。
吸入 (PIM 290)
1) 中毒の一般的な経路である。軽度の気道系の刺激性は400 ppmで生じる。高濃度により,悪心,頭痛,もうろうとした状態,嗜眠,運動失調,深い昏睡に陥る。
経皮曝露 (PIM 290)
1) 短時間の曝露は刺激性を示さないが,接触時間の延長により中枢神経系への作用を誘発する。(Martinez,
1986) 発熱調整のため大量のイソプロピルアルコールを吸込んだ小児は,結果としてかなりの量を吸収してしまうかもしれない。
眼への接触 (PIM 290)
1) 蒸気は400 ppmで軽度の刺激性を示す。液体の眼に対する直接の接触は重篤な刺激性 (Cheminfo, 1989)
及び角膜の損傷を生じる。(Osborn and Rosales,
1981)
慢性毒性 経口摂取
(PIM 290) 1) イソプロピルアルコールの6.4
mg/kgを1日1回6週間摂取させた結果,血液もしくは尿における生化学的もしくは細胞学的検査において明らかな変化は認められなかった。(Cheminfo,
1989)
吸入 (PIM
290) イソプロピルアルコール製造作業者において,sinus
cancer及び喉頭癌の過剰な発現が認められている。これは類縁物質であるイソプロピルオイルによるものと考えられた。
経皮曝露 (PIM
290)1) 慢性的な毒性用量の曝露は,昏睡及び死亡を誘発するかもしれない。(Broughton,
1944) 反復もしくは長期の接触により,乾燥性,クラッキング及び湿疹を誘発するかもしれない。
眼への接触 (PIM 290)
1) ウサギにおいて,角膜における酸素の取込みの低下が認められた。(Roseman,
1987)
経過,予後,死因 (PIM 290)
1) 中枢神経系の抑制は終末の24時間にしばしばみられる。低血圧の進行は予後不良における特徴である。重篤な中毒患者においてイソプロピルアルコールの排泄のため,そして昏睡時間を短縮するために,他の補助的処置と共に血液透析を行うべきである。 昏睡中の中枢神経系及び呼吸器系の抑制の結果として,死亡が発現する。
臨床における各器官毎に発現する作用 循環器系 (PIM 290)
;末梢血管拡張による低血圧、頻脈 重篤な不整脈は報告されていない (Ellenhorn, 1988) 呼吸器系 (PIM
290) ;呼吸の低下及び死亡 呼気からアセトンが検出可能である (Teramoto, 1987; Buckley,
1986) 神経系 (PIM 290)
1) 中枢神経系;めまい感,協調運動の低下,頭痛,錯乱,昏迷の進行,昏睡,腱反射の消失。重篤な神経系の抑制は最後の24時間で認められる。発揚状態は発現しない。 自律神経系;しばしば縮瞳がみられ,一般に眼振が認められる。 骨格及び平滑筋;昏睡において深部腱反射は認められない。
胃腸管 (PIM
290);胃の刺激性が初期に認められ,腹痛及び嘔吐が顕著であり,さらに吐血が認められる場合もある。(Buckley, 1986)
肝臓 (PIM
290);肝機能障害が報告されている。(Kulig, 1984)
泌尿器系 (PIM
290) 1)、腎臓 (PIM 290)
1);急性尿細管壊死及びミオグロビン尿症が報告されている。(Buckley,
1986)
皮膚 (PIM 290)
1);反復もしくは慢性の直接接触による,乾燥,刺激性,アレルギー性湿疹
眼,耳,鼻,喉:局所作用 (PIM 290)
1);眼:蒸気は刺激性を示す、液体は角膜の損傷を含む強度の刺激性を示す。
血液 (PIM 290)
1);ミオグロビン尿症,溶血性貧血が報告されている。
アレルギー反応 (PIM 290)1);アレルギー性湿疹が報告されている。
■参考文献 OECD database (link to
SIDS)
内閣府 添加物 database2003年 (link to
評価書) 内閣府 添加物 database2012年 (link to
評価書) 内閣府 添加物 database2013年 (link to
評価書)
1) Isopropyl alcohol (PIM 290): accessed; Oct. 2004
(linkd to
PIM) 2)
WHO Food Additive Series No.42 Saturated aliphatic secondary alchohols, ketones, and
related saturated and unsaturated esters. (accessed; Oct. 2004
(linkd to
WHO DB)
■Abbreviation ChemIDplus; ChemIDplus DB in TOXNET,
CCRIS;Chemical
Carcinogenesis Research Information System ,
DART;
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