日本医薬品添加剤協会 |
和名 パラオキシ安息香酸メチル 英文名 Methyl Parahydroxybenzoate CAS 99-76-3 (link to ChemIDplus),, (link to JAN DB), (link to JANe DB) 別名 Methylparaben 収載公定書 局方(JP17), USP/NF(27/22) EP(4) 用途 安定(化)剤,防腐剤、保存剤 ■単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
LD (致死量)
■反復投与毒性 (link to TOXLINE) ラット 1群雌雄各10匹のラットにパラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸プロピルをそれぞれ0.2%含む製剤 0,40,200 mg/kgを1ヵ月間連日経口投与した。その結果,被験物質による死亡例はみられず,一般状態にも変化は認められなかった。体重,摂餌量,血液学的検査,血液化学的検査,臓器重量,病理組織学的検査成績のいずれにも投与に関連した変化はみられなかった。1) (CTFA, 1980) 1群40匹のラットにパラオキシ安息香酸メチルナトリウム及びパラオキシ安息香酸エチルナトリウムをそれぞれ60:40に配合して, 0.014 g/kgを18ヵ月間連日経口投与した。投与2及び4ヵ月目に各群10匹を屠殺して剖検及び病理組織学的検査に供した。1群各20匹のラットに同配合剤を0,0.14及び1.4 g/kgを18ヵ月間連日経口投与した。その結果,1.4 g/kg群では投与4及び8ヵ月目に体重増加抑制を示したが,病理学的検査成績には変化が認められなかった。1) (Applied research Lab., 1942) 1群24匹のラットにパラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸プロピルをそれぞれ2%,8%含む飼料を96週間混餌投与した。またパラオキシ安息香酸エチル及びパラオキシ安息香酸ブチルをそれぞれ2%,8%含む飼料を12週間混餌投与した。その他,陰性対照群を設けた。その結果,8%パラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸プロピル群では投与初期に体重増加抑制が認められた。8%混餌量では,パラオキシ安息香酸エチル群で体重増加抑制,自発運動の減少がみられ,投与1週目には数例の死亡例が認められた。8 %パラオキシ安息香酸ブチル群雄では投与12週目までに全例が死亡した。同群雌では中毒徴候が認められた。2 %パラオキシ安息香酸群では毒性学的に意義ある所見は認められなかった。試験終了時にいずれの生存例も屠殺して検査を行ったが,投与に関連した異常は認められなかった。 1) (Matthews et al., 1956) Fisher系ラットにパラオキシ安息香酸メチル0.6,1.1,2.0,3.5 mg/kgをそれぞれ1群20,40,60,80匹に52週間週2回皮下投与した。一部は投与終了後に屠殺し,残りは6ヵ月間観察した。生存期間,体重増加,臓器重量に所見がみられたが,対照群と比較して有意差は認められなかった。1) (Mason, 1971) ウサギ 1群雌雄各5匹のウサギにパラオキシ安息香酸メチルを0.2%含む製剤を5.5 mg/cm2/8.4%体表面積の割合で3ヵ月間連日経皮投与した。雌雄各7匹は無処置対照群とした。その結果,投与局所に判別できる程度から中等度な紅斑,軽微な浮腫が継続的にみられ,時折,軽微な落屑が認められた。試験期間中に死亡例3例がみられたが,投与との関連は認められなかった。体重,摂餌量,尿検査,血液学的検査,血液化学的検査,病理組織学的検査成績には,被験物質投与と関連した変化は認められなかった。1) (CTFA, 1980) 1群雌雄各5匹のウサギにパラオキシ安息香酸メチルを0.2%含む製剤を6.6及び11 mg/cm2/8.4%体表面積の割合で3ヵ月間連日経皮投与した。その結果,投与局所に判別できる程度から中等度な紅斑,軽微な浮腫が継続的にみられ,時折,軽微な落屑が認められた。いずれの投与群にも死亡例はみられず,体重,摂餌量,尿検査,血液学的検査,血液化学的検査,病理組織学的検査成績には,被験物質投与と関連した変化は認められなかった。1) (CTFA, 1980) 1群雌雄各3あるいは4匹のウサギにパラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸プロピルをそれぞれ0.2%含む製剤を2及び6 mg/cm2/10%体表面積の割合で3ヵ月間連日経皮投与した。6 mg群及び無処置対照群では,紫外線(Westinghouse製FS-20ランプで波長2800-4000Åを6インチの距離で4分間)を連日照射した。その結果,投与局所に中等度な紅斑,軽微な浮腫,軽度な落屑が継続的に認められた。 1) (CTFA, 1981) イヌ 1群各1匹のイヌにパラオキシ安息香酸メチルを18,53 mg/kgを4日間経口投与した。剖検及びその他所見に毒性学的変化は認められなかった。 1) (Bijlsma, 1928) 離乳したイヌ6匹にパラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸プロピルをそれぞれ1 g/kgを378〜422日間連日経口投与した。イヌ3匹にパラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸プロピルをそれぞれ0.5 g/kgを318〜394日間連日経口投与した。イヌ2匹は無処置対照とした。試験終了後,屠殺した結果,いずれの投与群にも毒性徴候は認められず,全ての組織は正常であった。 1) (Matthews et al., 1956) ■遺伝毒性 (link to CCRIS)
■がん原性 C57BL/6マウス雄100匹にパラオキシ安息香酸メチル 2.5 mgを鼠径部に皮下投与した。5週間後に投与部位皮膚を切除,細切してプールした。この混合物をC57BL/6マウス雄25匹に皮下投与した。18週間後にマウスを屠殺して,腫瘍を顕微鏡的に観察した。投与部位皮下には多数の巨細胞を伴う肉芽腫巣が散在していた。痂皮及び嚢胞がみられたが,肉芽や痂皮が悪性化することはなかった。このことから,パラオキシ安息香酸メチルは本試験条件下ではがん原性はないものとみなした。1) (Homburger, 1968) CF-1 A及びA/Jaxマウス雌各50匹にパラオキシ安息香酸メチル 2.5 mgを尾静脈に単回投与した。また,CF-1マウス雌20匹にパラオキシ安息香酸メチル 2.5 mgを連日7ヵ月間腹腔内投与した。投与7ヵ月目に屠殺して,肺について腫瘍を調べた。肺腺腫の形成は投与群と対照群で差が認められなかった。1) (Homburger, 1968) C57BL/6マウス雄50匹にdibenzo[a,I]pyrene(DBP) 12.5 μgを皮下投与した。24時間後にパラオキシ安息香酸メチル 2.5 mgを同じ部位に皮下投与した。7日,14日後にパラオキシ安息香酸メチルを追加投与した。マウスは29-31週目に屠殺した。その結果,パラオキシ安息香酸メチルのがん原性は認められなかったが,陽性対照(クロトン油)群でも同様にがん原性がみられなかったので,本試験からは結論が得られなかった。1) (Homburger, 1968) 離乳したFisherラット雌雄各10-40匹にパラオキシ安息香酸メチル0.6,1.1,2.0,3.5 mg/kgを週2回52週間皮下投与した。死亡例及び投与終了後26週目の計画屠殺例全例について剖検した。乳腺線維芽腫の頻度が対照群に比べて投与群で高かった。その他の腫瘍は対照群と投与群で頻度に差は認められなかった。1) (Mason et al., 1971) ■生殖発生毒性 (link to DART) 妊娠マウス各群21-25匹ずつにパラオキシ安息香酸メチル 5.0-550 mg/kgを器官形成期(妊娠6-15日)に経口投与し,妊娠17日目に帝王切開を行い剖検した。その結果,一般状態,母体体重,着床数,吸収胚,生存胎児数,死亡児数,生存胎児体重,泌尿器,内蔵異常,骨格異常,外表異常などに対照群と投与群で差が認められなかった。1) (Food and Drug Research Labs., 1972) 妊娠ラット各群21-25匹ずつにパラオキシ安息香酸メチル 5.0-550 mg/kgを器官形成期(妊娠6-15日)に経口投与し,妊娠20日目に帝王切開を行い剖検した。その結果,一般状態,母体体重,着床数,吸収胚,生存胎児数,死亡児数,生存胎児体重,泌尿器,内蔵異常,骨格異常,外表異常などに対照群と投与群で差が認められなかった。1) (Food and Drug Research Labs., 1972) 妊娠ハムスター各群21-25匹ずつにパラオキシ安息香酸メチル 3.0-300 mg/kgを器官形成期(妊娠6-10日)に経口投与し,妊娠14日目に帝王切開を行い剖検した。その結果,一般状態,母体体重,着床数,吸収胚,生存胎児数,死亡児数,生存胎児体重,泌尿器,内蔵異常,骨格異常,外表異常などに対照群と投与群で差が認められなかった。1) (Food and Drug Research Labs., 1972) 妊娠ウサギ各群9-11匹ずつにパラオキシ安息香酸メチル3.0-300 mg/kgを器官形成期(妊娠6-18日)に連日経口投与し,帝王切開を行い剖検した。その結果,着床数,母体生存率,胎児生存率に影響はなく,内蔵異常,骨格異常,外表異常は対照群と投与群で差が認められなかった。1) (Food and Drug Research Labs., 1973) ■局所刺激性 背部被毛を剃毛した白色ウサギにパラオキシ安息香酸メチルを10%含有する親水性軟膏を48時間貼付した。その結果,皮膚一次刺激性は認められなかった。1) (Soko, 1952) ウサギ9匹にパラオキシ安息香酸メチル原液0.1 mLをDraize法に従って剃毛した皮膚に24時間貼付した。その結果,皮膚一次評点は0.67(最高4.0)で,軽度な刺激性とみなされた。1) (CTFA, 1976) 白色ウサギ6匹にパラオキシ安息香酸メチル原液を点眼した結果,一過性で軽微な刺激性(投与1日目の眼刺激性評点は1/110)が認められた。1) (CTFA, 1976) ウサギ及びモルモットに0.1〜0.2 %パラオキシ安息香酸メチル等張液を点眼した結果,眼刺激性は認められなかった。1) (Soehring et al., 1959) 白色ウサギ6匹の健常皮膚及び損傷皮膚にパラオキシ安息香酸メチルを0.2%含む製剤0.5 mLを21日間連日経皮投与した。投与は24時毎に行い,毎投与前に皮膚を観察し,Draize法に従って評点をつけた。皮膚は週1回剃毛し,損傷皮膚は再度損傷処置を実施した。投与開始後,軽微な刺激性がみられ,週末までに軽度ないし中等度の刺激性を示した。その後,試験終了時まで,中等度を維持した。この刺激性の程度はこの種の製剤で通常観察される程度であった。1) (CTFA, 1981) ■その他の毒性 依存性 該当文献なし。 抗原性 モルモットにパラオキシ安息香酸メチル,パラオキシ安息香酸プロピル,パラオキシ安息香酸ブチルそれぞれ生理食塩液に0.1 %に溶解して,週3回,3週間(合計10回)皮内投与を行い感作した。初回投与24時間目に変化は認められなかった。最終感作投与後2週間目に,感作局所近くに惹起皮内投与を行い,48時間後に観察した。いずれのパラオキシ安息香酸塩もアレルギー反応を惹起しなかった。1) (Sokol, 1952) モルモット10匹にパラオキシ安息香酸メチル,パラオキシ安息香酸プロピル,パラオキシ安息香酸ブチルそれぞれ0.1 %に溶解して,Draize法に従って週3回,3週間(合計10回)皮内投与を行い感作した。初回投与24時間目に変化は認められなかった。最終感作投与後2週間目に,感作局所近くに惹起皮内投与を行い,24時間に観察した。これらパラオキシ安息香酸塩には感作性はないものとみなした。1) (Matthews et al., 1956) DNCB(dinitrochlorobenzene)に過敏なモルモットを用いて,Marzulliらの方法でパラオキシ安息香酸メチル,パラオキシ安息香酸プロピル溶液を隔日3週間(合計10回)皮内投与あるいは閉塞パッチによる経皮投与による感作を実施した。最終感作投与後2週間目に,各動物にDNCB 0.5 mLを皮内惹起投与し,2週間後にさらに 0.5及び1.0 %DNCBを1匹あたり2ヵ所投与した。パラオキシ安息香酸メチル 5 %液を皮内投与,1 %及び10 %液を経皮投与したDNCB過敏モルモット21匹のいずれにも感作性は認められなかった。パラオキシ安息香酸プロピル 3 %液を皮内及び経皮投与したDNCB過敏モルモット23匹のいずれにも感作性は認められなかった。 背部を剃毛したモルモット5匹にパラオキシ安息香酸メチル 0.1 %液を週5日8週間皮内投与した。各投与前に投与局所の評価を実施した。皮膚の陽性反応の程度は投与回数の増加に伴い軽度に減少した。このことから,脱感作作用があるとみなされた。1) (Aldrete, 1970) モルモット20匹にパラオキシ安息香酸メチル 0.1 %液を隔日3週間(合計10回)皮内投与した。投与局所の評価は各投与24時間目に実施した。感作2及び3週目には,パラオキシ安息香酸メチルはFreund完全アジュバント及び生理食塩液で0.1 %液を用いた。最終感作投与後,2週目に,惹起投与を行った。24時間目に投与局所の評点をつけた。さらに,10日後,5 %パラオキシ安息香酸メチル パッチを皮膚に貼付した。24時間後に刺激性について,対照群と比較して評点をつけた。モルモット20匹中3匹が皮内惹起投与に反応を示し,4匹が惹起パッチに反応した。3匹の反応は対照群と比較して有意な差はみられなかった。1) Maurer, 1980) パラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸エチルの感作性ついて,Magnusson-Kligmanモルモット マキシミゼーション法で雌性モルモット合計80匹を用いて調べた。モルモットのアレルギー反応を増強させるためFreund完全アジュバントとラウリル硫酸ナトリウムを用いた。その結果,パラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸エチルに接触感作性はないとみなされた。1) (CTFA, 1981) モルモット雌雄各5匹を用いてパラオキシ安息香酸メチルを0.1%含有する製剤の接触感作性について調べた。0.5 mLを剃毛した背部皮膚に塗布して,6時間閉塞した。塗布は週3回合計9回実施した。最終塗布後14日目に惹起投与を行った。感作投与時に軽微な刺激性を認めたが,惹起投与時には反応はみられなかった。1) (CTFA, 1981) ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) 誤用 その他 パラオキシ安息香酸メチル 500 mgを服用した患者1名,200 mgを連日28日間服用した後,500 mgを連日4日間服用した患者1名,1000 mgを連日29日間服用した患者2名のいずれにも毒性徴候は認められなかった。 1) (Bijlsma, 1928) くも膜下腔内に薬物を投与後,対麻痺を起こした例では,製剤にパラオキシ安息香酸メチルが含まれていたことから,くも膜下腔内の脊髄に損傷を惹起させた可能性が疑われた。1) (Saiki, et al., 1972) ヒトにパラオキシ安息香酸メチル 0.10-0.30 %溶液を点眼後,中等度の充血,軽微な流涙,軽微なヒリヒリ感が認められたが,1分後にはいずれの徴候も消失した。この結果を再現するため,ヒト100名以上に同様な溶液を連日数回点眼したが,刺激性は認められなかった。 1) (Simonelli and Marri, 1939) ヒト50名の背部にパラオキシ安息香酸メチル,パラオキシ安息香酸エチル,パラオキシ安息香酸プロピル,パラオキシ安息香酸ブチルを5,7,10,12,15 %濃度で連日5日間パッチを貼付した。パッチ交換時には投与局所の刺激性について評点をつけた。5 %パラオキシ安息香酸メチル,7 %パラオキシ安息香酸エチル,12 %パラオキシ安息香酸プロピル,12 %パラオキシ安息香酸ブチルでは刺激性は認められなかった。濃度が高くなると,ある程度刺激性が認められた。 ヒト雌雄各25名の損傷皮膚に上記の試験で刺激性がみられなかった用量を隔日3週間(合計10回)4-8時間パッチを貼付した。3週間の休薬後,24-48時間惹起貼付した。その結果,感作性は認められなかった。 1) (Sokol, 1952) 反復損傷皮膚パッチ試験法を用いてパラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸プロビルの混合物の感作性について,ヒト雄で調べた。混合物はヒトの腕に48時間閉塞パッチを行った。これを3週間(合計10回感作投与)実施した。最高濃度の混合物では,24時間貼付後5 %ラウリル硫酸ナトリウムの24時間閉塞パッチで刺激性が認められたため,感作は5回とし,2週間の休薬後に72時間の惹起パッチを行った。いずれの例も10 %ラウリル硫酸ナトリウムを惹起投与前1時間1ヵ所にパッチを行った。その結果,0.3 %の濃度までは,感作性は認められなかった。従って,外用医薬品に0.1-0.3 %は適用できるとみなした。 1) (Marzulli et al., 1968, Marzulli and Maibach, 1973) パラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸プロビルがそれぞれ0.2 %含有する4製剤について,ヒトにおける光毒性を調べた。10-12名の手のひらの角化細胞を除去したの後に被験物質0.2 mLを24時間閉塞貼付した。被験物質を適用した一側の前腕にUVA(極大360 nm)光を10-12 cmの距離(4400 μW/cm2)から15分間照射した。1名では,2製剤について軽度な刺激性が認められたが,いずれも光毒性はみられなかった。1) (Food and Drug Research Labs., 2-7-84, 1978, 1979) ■参考文献 小児 (STEP database;要Login) 1) Moore J Final report on the safety assessment of methylpraraben, ethylparaben, propylparaben, and butylparaben. J. Am. Coll. Toxicol. 1984; 3: 147-209 2) Prival MJ, Simmon VF, Mortelmans KE Bacterial mutagenicity testing of 49 food ingredients gives very few positive results. Mutat. Res. 1991; 260: 321-329 |メニューへ| |
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