日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 ポリソルベート20
英文名 Polysorbate20

CAS 9005-64-5 (link to ChemIDplus)
別名 ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン Polyoxyethylene (20) sorbitan monolaurate, Tween 20, Polyoxyethylene-20-sorbitan monolaurate, Polyoxyethylene-20-sorbitan monolaurate

収載公定書  薬添規(JPE18), 外原規(2006)USP/NF(27/22) EP(5)
用途 安定(化)剤 ,界面活性剤,懸濁(化)剤,乳化剤,分散剤,溶解補助剤

JECFAの評価 (link to JECFA)
無毒性量;ラット: 混餌経口投与50,000 ppm (5%) (換算投与量2500 mg/kg BW) 1)
ヒトにおける1日摂取許容量;0〜25 mg/kg bw.* 1)
* ポリオキシエチレン (20) ソルビタン エステル類の総量として. 1)



単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
マウス 静脈内 3.75 g/kg Hopper et al., 1949 1)
ラット 経口
静脈内
>39,000 mg/kg
1,450 mg/kg ( 雄 1,680、雌 860 )
Brandner, 1973 1)



反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
ラットへの 3%及び5% ポリオキシエチレン(20) ソルビタン モノラウリン酸塩の8週間混餌投与により、対照群と比較して有意で緩徐な体重増加の抑制がみられ、これは中等度の下痢によるものであった。しかしながら、一般症状及び病理組織学的検査において異常はみられなかった。1) (Krantz, 1943a)

長期投与試験は、1群15-30匹のラットを用いて行った。ポリオキシエチレン(20) ソルビタン モノラウリン酸塩の0.5%及び2%混餌投与では、対照群と比較して試験餌投与に関連した異常はみられなかった。更に、発育に関する項目、死亡率及び以下の臓器に関する組織学的検査も実施されている。脳、脾臓、膵臓、胸腺、副甲状腺、前立腺、脳下垂体, 唾液腺、副腎、膀胱、肝臓、腎臓、骨髄、心臓、肺、精巣、リンパ節、筋肉。1) (Oser & Oser, 1957a, 1957b)

ハムスター
ハムスターを用いた試験において(各群10匹)、ポリオキシエチレン (20) ソルビタン モノラウリン酸塩の5%、10%及び15%混餌投与は、致死性かつ慢性の下痢が高頻度にみられ、28から39週にかけての剖検時に多くの組織で有意性の高い変化がみられた。1) (Eagle & Poling, 1956)

ポリオキシエチレン (20) ソルビタン モノラウリン酸塩の10%及び15%混餌で、高い死亡率もみられた。5%混餌では、有意な発育遅延と下痢がみられた。1) (Poling et al., 1956)

同様の結果は、36匹のハムスターに68日間、ポリオキシエチレン (20) ソルビタン モノラウリン酸塩の5%及び15%混餌投与した試験においても観察されている。1) (Harris et al., 1951).

サル
6匹のサルにポリオキシエチレン (20) ソルビタン モノラウリン酸塩又はモノオレイン酸塩を1 g/dayの割合で17ヶ月間投与した時、体重増加量と組織学的検査に有意な変化はみられなかった。1) (Krantz, 1943a, 1947a)

ヒナドリ
1群12匹のヒナドリにポリオキシエチレン (20) ソルビタン モノラウリン酸塩又はモノステアリン酸塩の0.1、1又は2%混餌飼料を7週間与えたが、何ら有害作用は認められなかった。1) (Ringrose & Waller, 1959)


遺伝毒性
Salmonella typhimurium系の2つの細菌を用いたAmes test(遺伝子突然変異検索法)の結果では、ラット肝臓の代謝活性化系(S9 mix)存在の有無に関係なく変異原性は認められていない。2) (Procter & Gamble, 1979)

ほ乳類培養細胞を用いた試験において代謝活性化系の存否にかかわらず変異原性は認められていない。2) (Coopinger et al., 1981)


がん原性 (link to CCRIS)
(現在の発がん性試験の基準に準じた方法によるものではない。)
経口投与:ハムスター及びラットを用いた混餌投与試験
ハムスター各10匹(雄6、雌4)を用いてポリソルベート20を5、10及び15%の用量で9週間混餌投与、並びにラット雄10匹に25%用量で21週間混餌投与した試験、及びラットを用いて25%混餌で59日間投与した発がん性試験では、いずれも腫瘍の発生は認められていない。2) (Poling,C,E, et al., 1956)

その他、ハムスター36匹に5%混餌にて68日間投与 2) (Harris et al., 1951)、あるいはラット14匹に25%混餌、59日間実験 2) (Harris et al., 1951)でも、腫瘍の発生を認めていない。

経皮投与:
マウスに0.18 mol濃度で1日1回、週6日、30日間、並びに1日2回、週6日、30日間経皮投与、あるいは希釈溶液を1日1回、週6日、24時間経皮投与した試験では、いずれも腫瘍の発生は認められていない。しかし、100%溶液(約3 mg/kg BW/day)を1日1回、週6日、52週間経皮投与した試験では、36週目に1個の良性皮膚腫瘍の発生が認められている。2) (Setala, 1956)

既知発癌物質との複合投与:
Wistar系ラットの飲水に、50 ppmの濃度にN-methyl-N’-nitro-N-nitorosoguanidine (MNNG)と、0.4%にポリソルベート20を加えて(およそ100 mg/kg/dayに相当する量)26週間経口摂取させる発がん性試験において、MNNG単独投与と比較して、ラットの腺胃の腺がんの発生頻度を高めたほか、胃肉腫の発生を認めた。2) (Fukushima et al., 1974)

ICR及びSwissマウスに7, 12-dimethylbenz[a]anthracene (DMBA) 0.125 mgを経皮投与後ポリソルベート20の0.3〜3%溶液0.2 mLを反復皮膚塗布した発がん性試験では、弱い皮膚腫瘍発生増強作用が、DMBA経皮投与後ポリソルベート20の原液を皮膚に1年間塗布する発がん性試験では、皮膚腫瘍を5匹に認めたが、DMBA単独群では発生を認めなかった。2) (Setala, 1956)


生殖発生毒性 (link to DART)
実施された試験は古いものが多く、現状のガイドライン外の方法による試験も散見されるが、現状の指針から見て妥当な全データを総合すると、雌雄の生殖能や新生児の発達に対する影響はなく、催奇形性もないと判断される。

雄16匹、雌14匹の離乳ラットに、実験開始後10日の間にポリソルベート20の添加量を5%から10、15、25%と順次増加させ、以後25%(10 g/kg/day)添加飼料を10週間与えた混餌投与試験において、投与期間中雌雄とも著しい下痢と体重増加抑制が認められ、組織学的検査において雄では精子形成の遅延が観察された。2) (Harris et al, 1951a)

雌雄合わせて36匹のハムスターに、ポリソルベート20を飼料中5又は15%の濃度で10週間混餌投与した試験において、著しい下痢と体重増加抑制が認められ、試験終了時までに15%群で全例、5%群で雌雄各7匹が死亡した。また、組織学的検査において卵巣と精巣の成熟が不完全であった。2) (Harris et al, 1951b)

妊娠9日の雌マウス15匹に、ポリソルベート20の1.1 g/kgを腹腔内に投与した試験において、胎児に奇形が誘発され、投与した15匹中の1匹が死亡したと記載されている。異なる系統のマウスに同様の処置を行った結果、投与量(1.1〜3.6 g/kg)に相関して早期の胎児の死亡が増加し、胎児の奇形も観察されている。なお、1.1及び1.9 g/kgを投与した群では母動物への明らかな毒性影響は認められなかったと述べられている。2) (Kocher-Becker et al, 1981)

15匹の妊娠ラットに、妊娠7〜17日の期間継続的に投与した試験 2) (Wickramaratne, 1987)

ポリソルベート20の10%溶液(1.1 g/kg/day)を反復強制経口投与した結果、胎児及び新生児への成長と生存率への影響は認められなかった。

ポリソルベート20の原液あるいは50%溶液を皮膚塗布した結果、両群とも胎児の成長と生存率及び新生児の重量と成長は正常の範囲内にとどまり、被験物質投与による有害影響は認められなかった。

ポリソルベート20の5%(550 mg/kg)又は10%(1.1 g/kg)溶液を腹腔内投与した結果、両投与群の母動物の体重増加が著しく抑制され、新生児にも生存率の低下と体重増加の抑制がみられた。

1群24又は25匹の妊娠ラットに、ポリソルベート20を500又は5,000 mg/kg/dayの用量で、6〜15日の期間に強制経口投与した試験において、5,000 mg/kg投与群において体重増加抑制が認められた。しかし、両投与群とも子宮重量に変化はみられず、また、母動物の黄体数、着床数及び着床前の胚損失率においても対照群との間に差は認められなかった。さらに、胎児の成長、発達に対照群との間に明らかな差は認められなかった。2) (NTP Study: TER91010, 1992)

ラットにTween20とTween80の500 及び 5,000 mg/kg/day又は溶媒を、妊娠6日から15日までの期間、強制経口投与した。いずれの化合物も母動物に対する毒性はわずかであった。Tween20の母動物に対するLOAEL(最小無毒性量)は、投与期間中に14%の体重増加抑制がみられたことから、5,000 mg/kg/dayと判断された。Tween80の、母動物に対するLOAEL(最小無毒性量)は、500 mg/kg/day以上で肝臓重量の増加、5,000 mg/kg/dayで摂餌量の減少がみられたことから、500 mg/kg/dayを超える用量と判断された。両化合物とも、出生前の成長、生存率及び形態学的発生に影響を及ぼさず、発生学的無毒性量(developmental NOAEL)は5,000 mg/kg/dayあるいはそれ以上と判断された。3) (Price CJ, et al., 1994)


局所刺激性
ポリオキシエチレン ソルビタン エステル類(Tween20, 21, 40, 60, 61, 65, 80, 81, 85)は、ウサギの角膜への投与においても、その後の洗眼の有無に関わらず反応はみられなかった。1) (Treon et al., 1967)


その他の毒性
雄性CD2FlマウスにTween20を腹腔内投与し、その後12時間の自発運動量を測定し、その影響を溶媒投与群と比較した。Tween20は、16%の濃度で自発運動量を有意に低下させた。4) (Castro CA, et al. 1995)


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
ポリオキシエチレン ソルビタン エステル類(Tween20, 21, 40, 60, 61, 65, 80, 81, 85)は、50人の被験者を用いたパッチテストで反応を示さなかった。1) (Treon et al., 1967)


参考文献
内閣府 添加物 database(2007年)  (link to 評価書)

1) WHO Food Additive Series No. 5, WHO Food Additive Series No. 5, Sventeenth Report of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives, Wld Hlth Org. techn. Rep. Ser., 1974, No.539 (link to WHO DB)
2) ポリソルベート類の食品添加物指定に係る食品健康影響評価資料;食品安全委員会:添加物専門調査会:第一回会合結果
3) Price CJ, George JD, Marr MC, Myers CB, Heindel JJ, Schwetz BA.. Developmental toxicity evaluation of polyoxyethylene sorbitan monolaurate (TW20) and polyoxyethylene sorbitan monooleate (TW80) in rats. Toxicologist 1994 Mar;14(1):163.
4) Castro CA, Hogan JB, Benson KA, Shehata CW, Landauer MR. Behavioral effects of vehicles: DMSO, tthanol, tween-20, Tween-80, and Emulphor-620. Govt Reports Announcements & Index (GRA&I), Issue 21, 1995.

 




   


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