日本医薬品添加剤協会 |
和名 カルミン 英文名 Carmine CAS 1260-17-9(カルミン酸として) (link to ChemIDplus) 別名 カルミン酸アルミニウムキレート、Aluminium lakes of carminic acid 収載公定書 薬添規(JPE2018), 食添(JSFA-IX、コチニール色素) 外原規(2006) 用途 着色剤 ■JECFAの評価 (link to JECFA) 毒性学的作用を起こさない用量; ラット:500mg/kg bwの混餌用量。ヒト1日摂取許容量(ADI); 0〜5mg/kg bw。本ADIはカルミンのアンモニウム塩、又は相当量のカルシウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩に適用される。 ■単回投与毒性 該当文献なし ■反復投与毒性 (link to TOXLINE) マウス マウスにカルミン酸のリチウム塩の1〜2%水溶液を60日間、腹腔内投与した。唯一認められた異常は、脾臓組織の増殖であった。1) (Harada 1931) ラット 雌雄同数の40匹から成る群に、0.4%水溶性寒天に含ませたアンモニア性コチニールカルミン0、2.5、5.0、10.0 g/kgを週5日間13週間に渡って強制投与した。体重を2週間ごとに記録した。血球数を3回計測した。高用量2群でラットの組織に用量関連の色素蓄積が認められた以外、顕著な肉眼および顕微鏡所見はみられなかった。血液学的作用も認められなかった。高用量2群で多少の発育抑制が認められた。投与期間中、投与群ラットの尿および糞に着色がみられた。1) (Battele, 1962) 雌雄同数の離乳ラット50匹から成る群にカルミンカルシウム0、50、250、500 mg/kg体重を90日間混餌投与した。血球数、血糖値、血中尿素窒素の測定および尿検査を3回実施した。発育、血液学的所見、その他の臨床的所見において、カルミンによる作用は報告されなかった。肉眼および顕微鏡による病理検査で顕著な所見は認められなかった。1) (Food and Drug Res. Lab., 1962) 雌雄のWistar系ラットに3%の濃度で13週間混餌投与した実験で、血清リン脂質、中性脂質、総コレステロールの増加は認められたものの、ほかには全く毒性変化は認められなかった。2) (川崎ら, 1994) ウサギ ウサギ5匹に対して、カルミン酸のリチウム塩の2〜4%水溶液3〜10 mlを5〜7日間連日静脈内投与した。このような投与を130〜529日間継続した。腫瘍は認められなかったが、脾臓組織の顕著な増殖が認められた。1) (Harada, 1931) ■遺伝毒性 (link to CCRIS) Bacillus subtilis による レックアッセイ(DNA損傷性)においてカルミン酸にDNA損傷性は認められなかった。1) (Kada et al., 1972) 肝ミクロソーム調製物質、またはラット糞微生物叢の酵素抽出物の有無に関わらず、カルミン酸はいくつかのSalmonella typhimurium 株に対して変異誘発性を示さなかった。1) (Brown & Brown, 1976、Brown et al., 1977) フェノバルビトンを前投与した動物から得られた肝ミクロソーム(S9)分画の有無に関わらず、カルミン酸は、試験したSalmonella typhimurium 4株(TA1535、TA1537、TA98、TA100)に対して復帰変異原性を示さなかった。Saccharomyces cerevisiae D株を用いてin vitroでカルミン酸を同様に試験したところ、遺伝子変換は認められなかった。また、Schizosaccharomyces pombe を用いた宿主経由試験でもin vitro、in vivoいずれでも前進突然変異は認められなかった。1) (Barale et al., 1978) Salmonella typhimurium TA1538およびEscherichia coli WP2 uvrA を用いた試験でも同様の結果が得られた。1) (Haveland-Smith & Combes, 1980) サルモネラ復帰変異原性試験、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、マウスの小核試験で全て陰性であった。2) (Loprieno et al., 1992) ■がん原性 マウス 雌雄のB6C3F1系マウスに混餌(0、3、6%)で、2年間投与した発癌性試験で、有意な腫瘍の発生は認められなかった。2) (Mori et al., 1991) ラット 雌雄各66匹のラットから成る群にカルミンを混餌投与し、50、150、500 mg/kg体重/日のカルミンを8週間摂取させた。雌雄各114匹のラットから成る群に基礎飼料を与え、対照群とした。投与は、同群内での雌雄の交配中、妊娠中、誕生仔の養育中にも投与を続けた。誕生した同腹仔を用いて、同用量のカルミンを投与する雌雄各54匹から成る投与群、および雌雄各90匹から成る対照群を編成した。各動物への投与は、親動物と同用量にして、いずれかの群の生存割合がおよそ20%になるまで継続した。その結果、生存雄性ラットは108週目に屠殺し、生存雌性ラットは109週目に屠殺した。500 mg/kg体重/日まで混餌投与したところ、ラットの生存、発育、摂餌量、摂水量に有害作用はみられなかった。3、6、12、18ヶ月後に一部のラットから、さらに終了時の全生存ラットから採取した血液試料に、投与と関連すると考えられる変化はみられなかった。同様に、3、6、9、12、18ヶ月後に実施した腎濃度試験(renal concentration test)と尿の半定量分析、あるいは試験終了時に実施した血清化学検査および臓器重量測定においても、投与関連の変化は認められなかった。 腫瘍発生率は投与に影響せず、大半の非腫瘍性病変も投与と関連がないと考えられた。対照群と比較して全投与群では、より多数の雌性ラットに乳腺腺房過形成および乳管拡張が認められ、高用量2群では、より多数のラットに胃の軽度変化が認められた。高用量群雌性ラットでは、膣炎またはリンパ節浮腫を認めるラットの発生率がわずかに増加し、高用量群雄性ラットでは、肝類洞拡張を認めるラットの発生率がわずかに増加した。このような所見が投与に起因するとは考えられなかった。胎生期ラットおよび20%の生存ラットに対して、カルミン投与は発癌性を示さず、有害事象を認めない用量は500 mg/kg体重/日と結論された。1) (Ford et al., 1981) 2) (Ford et al., 1987) ■生殖発生毒性 (link to DART) マウス 胎仔毒性および催奇形性はマウスを用いて試験された。妊娠8日目のマウスにカルミンリチウムまたはカルミンナトリウムを腹腔内注射し、妊娠19日目に屠殺した。両投与群の胚吸収率(20%)は対照群(2%)よりも高かった。奇形率はカルミンリチウム投与群でおよそ16%であり、カルミンナトリウム投与群で2.5%であった。カルミンナトリウム投与群のマウスのみに、発育遅延胎仔数の増加が認められた。1)(Schluter, 1970) 妊娠6、8、10、12、14日目のいずれかの日に、マウス群に対して2.5%カルミンリチウム150 mg/kgを単回投与した。最初の3投与日に催奇形性作用があることが認められ、最大作用は妊娠8日目にみられた。1)(Schluter, 1971a, b) マウスの5週齢F0から9週齢F1まで、0.5、1.0及び2.0%で混餌投与した結果、授乳期の体重低下、神経行動学的パラメーターに変化が認められた。2) (Tanaka, 1995) ラット 雌雄のラットに交配期及び妊娠期を通して、60日間混餌で投与した生殖発生毒性試験(50、150及び500mg/kg bw/day)の結果、有害作用は認められず、無毒性量は500mg/kg/dayであった。2) (Ford et al., 1987) 交配させた雌性ラット30匹から成る4群に、妊娠0日目〜20日目までカルミンアンモニウム0、200、500、1000 mg/kg体重を胃挿管によって連日強制投与した。同様のラット17匹から成る1群には、最高用量のカルミン投与時と同等のナトリウム、カリウム、アンモニウムイオンを摂取させるため、それらの塩化物溶液を投与した。体重、妊娠率、着床前胚損失率、生存出生仔の平均数、同腹仔重量【average number of live young litter weightを2つの項目として訳出しました】、胎仔重量に有害作用は認められなかった。カルミンの最高用量群と陽イオン投与対照群では、着床部位数と着床後胚損失率が増加した。後者は、胚毒性作用ではなく、増加した着床数を維持できなかったことが理由であると考えられた。胎児に催奇形性作用は認められず、カルミン投与群胎仔の骨形成は、対照群よりも高度に進行している傾向がみられた。1) (Gaunt et al., 1976) 2)(Gaunt et al., 1987) 3世代投与の特別試験 カルミンアンモニウム0、50、150、500 mg/kg体重/日を摂取するように食餌中濃度を調整し、数世代に渡ってWistarラットにカルミンアンモニウムを混餌投与した。群構成には雌雄ラットを用い、カルミン投与群は36匹、対照群は60匹とした。適切な投与期間経過後、最初の世代(F0a世代)のラットを交配させてF1a世代をもうけ、その後、第1世代を再び交配させて、F1b世代をもうけた。F1a世代からF2世代をもうけ、F2世代から最終のF3世代をもうけた。F0a、F1a、F2世代の成獣の体重、摂餌量、摂水量、受精率、臓器重量に、投与に起因すると考えられる作用は認められなかった。 F1b、F2、F3世代仔の剖検および臓器重量測定では、対照群と投与群間に投与に関連すると考えられる差は認められなかった。F3世代仔の病理組織学的検査でも、投与関連の作用は認められなかった。歯の萌出のわずかな遅延がF1bとF2世代の150および500 mg/kg群で認められた以外、投与群仔の生存、発育、発達は、対照群と同じであった。F3世代の投与群仔には、歯の萌出遅延は認められなかった。 奇形学的調査を行ったところ、F3世代の全投与群の胎仔は、対照群に比較し、骨格の骨形成がわずかに進行していた。催奇形性試験のF0a、F1a、F2世代母動物の最終的な剖検では、F1a世代の150mg/kg群で黄体数および着床後胚損失率にわずかな増加が認められた以外、対照群と投与群間で有意な差は認められなかった。この差も投与に関連するとは考えられなかった。1) (Grant et al., 1979) 2) (Grant and Gaunt, 1987) ■局所刺激性 皮膚感作性試験 カルミンカルシウムを含む赤色の唇軟膏を用いてパッチテストを実施したところ、唇に損傷を認める被験者3名は陽性反応を示した。しかし、無色の唇軟膏に対しては反応を示さなかった。各被験者は赤色の唇軟膏を試験前に使用していたため、アレルギー反応症状はカルミンに起因すると考えられた。1)(Sarkany et al., 1961) ■その他の毒性 該当文献なし ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) ■引用文献 1) WHO Food Additive Series 17 The 26th meeting of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives (JECFA) World Health Organization, 2) 食品添加物公定書解説書 第7版、監修;鈴木郁生、野島庄七、谷村顕雄、廣川書店、1999年ppD-475 |メニューへ| |
copyright(C) 2005 日本医薬品添加剤協会 all rights reserved |