日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 糖水アメ還元麦芽
英文名 Hydrogenated Maltose Starch Syrup

CAS 585-88-6 (link to ChemIDplus)

収載公定書  薬添規(JPE2018)
用途 甘味剤,基剤,矯味剤


JECFAの評価 (link to JECFA)
50〜90%のマルチトールを含む還元グルコースシロップ(HGS)(マルチトールシロップ)のADIの評価は特定せず(ADI not specified)と評価された。(第29JECFA会議1987年)


単回投与毒性

動物種

投与経路

LD50(mg/kg体重)

文献

マウス雄雌

経口

24370

Dupas, 1982a

マウス

経口

16000

Yamasaki et al.,1973a

マウス雄

腹腔内

10640

Dupas, 1982a

マウス雌

腹腔内

12430

Dupas, 1982a

マウス

腹腔内

18500

Yamasaki et al.,1973b

マウス雄

静脈内

6390

Dupas, 1982a

マウス雌

静脈内

8150

Dupas, 1982a

マウス

静脈内

12000

Yamasaki et al.,1973b

マウス

皮下

24000

Yamasaki et al.,1973b

ラット雄雌

経口

24370

Dupas, 1982b

ラット雄雌

経口

24000

Nishibori, 1968

ラット

経口

24130

Kotani & Chiba, 1968

ラット雄雌

腹腔内

13000

Dupas, 1982b




反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
雌雄同数の20匹のSprague-Dawleyラット被験群に、HGSを飼料に115又は20%添加して3カ月間連続して摂取させた。対照にはショ糖を20%添加した飼料を摂取させた。死亡率、成長あるいは摂餌量に影響はなかった。下痢やその他の臨床症状は認められなかった。眼科検査後の結果では処置による影響は認められず、臓器重量は正常であった。HGS添加量15%及び20%群の雌雄のラットに、処置4週後及び13週後にヘモグロビン量並びに赤血球数の若干の減少が認められた。血中の尿素濃度は、処置4週で全ての被験群のメスにおいて若干増加した。血中尿素及びグルコースの緩やかな増加が、処置13週に全ての被験動物で認められた。処置13週に、HGS添加量15及び20%群の雌雄ラットで血中リンが若干増加した。全般的、組織病理学的変化は認められなかった。1 (Coquet et al..,1980)

雌雄同数の離乳Sprague-Dawleyラット40匹に、20%のHGS90日間摂取させた。同数の対照には20%のソルビトールを添加した飼料を摂取させた。死亡あるいは著明な臨床症状は認められなかった。血液学、血液化学、尿分析あるいは臓器重量に影響は認められなかった。試験終了時の外観並びに顕微鏡による検査で、臓器あるいは組織に組織病理学的変化は認められなかった。1(Stevens et al., 1980)

各群10匹のWistar系オス離乳ラットに、マルチトール又はショ糖を030%、あるいはHGSを20%添加した資料を31週間摂取させた。マルチトールの20及び30%群及びHGS群で4週時に体重が減少したが、8週時では対照と同等であった。試験終了時にマルチトール摂取群とショ糖摂取群とで、体重並びに選定した臓器の重量は同等であった。1 (Wada, 1972)

雌雄各15匹の若齢Wistarラットの被験群に、HGS010%添加した飼料を13週間摂取させた。死亡率、摂餌飲水量、体重、血液学、血液化学、尿分析、並びに臓器重量は対照と同等であった。6カ月の中間時点での剖検により、被験動物の約半数に胃の拡張が認められた。結腸の若干の浮腫が、3カ月時には被験動物の半数、6カ月時にはおよそ10%に認められた。試験終了時における組織病理学的変化は、被験群と対照とで同等であった。1(Yamasaki et al., 1973c)

雌雄各26匹のWistarラットの3群に、HGS03あるいは10%添加した飼料を7週間摂取させた。52週時に、オス3匹メス4匹について中間時の剖検を実施した。50週後に両添加食群のオスの死亡率が増加したが、メスでは高用量群のみ増加が認められた。60週後には高用量群のオスの体重は対照よりかなり低下した。中間並びに終了時の剖検で、血液学、血液化学、並びに臓器重量は対照と同等であった。非新生性病変の発生率は有意ではなかった。メスの副腎及びオスの甲状腺において、新生物の発生率が増加した。皮膚及び乳房部に認められた腫瘍は、化合物に起因するものではなかった。上部内分泌腺以外の内部の臓器並びに組織に、新生物の生成は認められなかった。1 (Shimpo, 1977)

HGS
を飲料水に0又は18%濃度添加して、雌雄各50匹の被験群に24カ月間摂取させた。試験期間中に測定したHGSの摂取量は、オス13.9g/kg/day、メス21.5g/kg/dayであった。両群の体重増加は、適応のための短い予備期間を除いて本質的に同等であった。その後処置群のメスの体重は、殆ど常時にわたり対照より若干多かった。被験群のオスの体重は、最初の1年間は対照より若干少なかったが、次の2年間で増加し対照より若干多くなった。被験群では下痢が最初の1週間から認められたが、4週から減少した。これは高張の飲料水を摂取した動物で普通に認められるものである。飼料への適合により盲腸がかなり肥大した。血液学並びに臨床化学パラメータにより、被験物質に関連した変化は示されなかった。対照群で認められた有意な所見は、摂取した水分量がかなり増大したことによる尿素量の低下であった。尿分析では処置に関連する差は認められなかった。組織病理学的検査では組織の変化は示さなかった。試験期間中の自然死亡率は、対照のオスより被験群のオスの方が低かった。メスでは被験群の方が若干高かった。内部の臓器及び組織の新生物は、対照と被験群とで同等の発生率であった。1(Dupas et al., 1984)

イヌ
オス4頭あるいはメス4頭のビーグル犬に、毎日4.95g/kgHGS13週間摂取させた。毎日臨床検査を実施し、全動物を剖検した。処置動物の摂餌量は試験期間を通して若干低下したが、体重増加には影響がなかった。眼科検査では異常は認められなかった。唯一認められた有意な作用は下痢であった。血液学並びに尿分析では、処置による異常は認められなかった。剖検による異常所見は認められなかった。臓器重量は変化がなかった。1(Virat, 1982)


遺伝毒性 (link to GENE-TOX)
HGS
は宿主の介在するアッセイで、1g/kgの用量までSchizosaccharomyces pombeに遺伝子変異の有意な増加を誘起しなかった。1(Mondino et al., 1979a)

HGS
300μg/mLまでの濃度で、3H-チミジンのヒト異数体繊維芽細胞への取り込みを有意に増大させなかった。1(Mondino, 1980)

HGS
をオスマウス成獣に10あるいは50mL/kg2日間経口摂取させ、小核試験を実施した。被験動物は2回目の投与6時間後に屠殺した。大腿骨髄を採取し、1匹当たり2,000個の多染色赤血球を計数し、小核をスコアー化した。HGSの投与により、小核のある多染色赤血球の割合は有意に増加しなかった。1 (Siou et al., 1981)

HGS
in vitroC3H/10T 1/2(クローン8)マウス繊維芽細胞に、代謝活性の存在あるいは非存在下101,000μg/mL加えた。HGSへの暴露により、形態学的に形質転換した細胞の割合が有意に増加した。1(Farrow & Sernau, 1982; Farrow, 1982c)

L5178Y
マウスリンパ腫細胞系のチミジンキナーゼ座における正突然変異誘導能を271,000μg/mL濃度のHGSについて代謝活性の存在及び非存在下で試験した。HGSは変異頻度を若干増加させたが、用量依存性はなかった。1 (Farrow, 1982b)

チャイニーズハムスターの卵巣細胞における変異誘導能を、494,900μg/mL濃度のHGSについてin vitroで試験した。代謝活性の存在あるいは非存在下いずれの濃度においても、構造染色体の異常の割合は有意に増加しなかった。1 (Farrow, 1982a)

8
匹のオスSprague-Dawleyラット(対照4匹)に、HGSを飼料に020%添加して15日間毎日摂取させた。各ラットの尿を15日目に採取した。濃縮精製した尿について、Salmonella typhimurium TA98TA100TA1535、及びTA1538に対する変異原性を、代謝活性の存在及び非存在下でAmes法によって試験した。変異原性は認められなかった。1(Farrow, 1983d)


がん原性
ラット
雌雄のラットに、マルチトールを87%含有する試験食を、106週間にわたって摂餌させ癌原性試験を行なった。ラットには試験期間中0、0.5,1.54.5g/kgを摂餌させた。(最高用量の4.5g/kgは食餌中に約10%のマルチトールを含有させたものである。)その結果、死亡率は試験食摂餌によって影響を受けなかった。摂餌させた雄の体重と高用量を摂餌させた雌の体重について、それぞれの未処置グループと比較したところ、100週から104週までの期間で、低、中用量を摂餌させた雌の平均体重は、対照群に比べて有意に低かった。腸や盲腸を含めた臓器には、摂餌に関連した病理学的変化は観察されなかった。副腎に腫瘤や結節が見られたが、その発生頻度は用量依存的ではなかった。最も高い発生頻度においても、同じ研究室で行なわれた同種のラットを用いた2年間の癌原性試験において、対照群に発生した腫瘤や結節の発生頻度の範囲内であった。
摂餌に関連した組織病理学的変化として、副腎に腫瘤(良性と悪性両方)の発生が観察された。 副腎に発生した腫瘤(良性と悪性両方)は対照群と比較すると雄雌ラットの高用量摂餌グループに顕著に現れた。それに加えて、全ての摂餌グループに、極僅かな骨髄増殖の発生がみられた。骨髄増殖の発生頻度は対照群に比較して高かった。この発生頻度の差は雌ラットの高用量摂餌グループと対照群との間で顕著であった。
雌で乳腺腺癌の発生率を観察したところ、無処置群で8.0%、低用量群で4.6%、中用量群で18.6%、高用量群で20.0%(P0.044)であり、高用量摂餌群と対照群との間でかろうじて有意差が認められた。乳腺線種または繊維腫の発生率の増加は観察されなかった。2)Conz & Maraschin,1992


生殖発生毒性 (link to DART)
ラット
雌雄のSprague-Dawleyラットを対象に、HSH (7:52:41) を飲料水に18%添加して摂取させ、4世代にわたる繁殖試験を実施した.受精能、繁殖能、あるいは生後の生存に諌死、対照と比較して有害作用は認められなかった。又成獣の生存率、親世代の血液学的パラメータ、あるいは成獣の大腿長にも有害作用な認められなかった。仔畜及び成獣に形態学的変化所見は認められなかった。これらの結果から、被験物質の無影響量は最大用量以上と結論付けた。3)

雌雄のSprague-Dawleyラットを対象に、HSH (7:54:39) 3050及び70%水溶液を、妊娠615日目に胃管で投与した(3,0005,000及び7,000mg/kg/day用量)。いずれの用量も充分耐性であり、試験期間中に母畜に対する毒性は認められなかった。生産仔数、胎仔死亡率、胎仔の胎盤吸収、並びに胎仔重量について、各被験群に差は認められなかった。胚毒性は認められなかった。胎仔の形態学的検査で、内臓の奇形並びに主要な骨格奇形は認められなかった。微小な骨格の奇形に用量依存性は認められなかった。主要な骨格部分の骨形成について、各被験群で有意な差はなかった。無影響量は最高用量の7g/kg以上であると結論付けた。3)

Sprague-Dawley
ラットを対象とした多世代繁殖試験を実施した。オスには5.48.5g/day、メスには5.313.5gHGS18%水溶液として3世代にわたって摂取させ、各世代とも2回連続して仔畜を生産した。対照には水のみ摂取させた。各世代の動物数は雌雄各10匹であった。試験期間中に、被験群の摂餌量は対照より少なかったが、F2世代のメスを除き生長率に非可逆的な影響はなかった。殆どの被験群の動物では、飲料水中のHGSによるカロリー競合が原因の生長率低下は認められなかった。試験期間に行動の異常は認められなかった。記録した臓器の内、対照と比較して処置ラットの腎臓重量は少なく、盲腸重量は多かった。親ラットの血液学及び全体的な病理学所見に目立ったものはなかった。死亡率、妊娠期間、同腹仔数、生及び死産仔畜数、出産後生存数、並びに授乳率に影響はなかった。処置した同腹仔においては、メスの割合がおよそ10%増加した。1) (Leroy & Dupas, 1983)


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
該当文献なし


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
絶食させた健常ボランティア6名(男性3名、女性3名)と糖尿病患者4名(男性1名、女性3名)にマルチトールを30gまたはショ糖30gを経口投与した。投与後、30分、1時間、1.5時間、2時間、3時間後に血中及び尿中のグルコース濃度とマルチトール濃度を測定した。健常成人及び糖尿病患者共に、血中グルコース濃度は、マルチトール投与群のほうがショ糖投与群より低かった。マルチトールの尿中排泄量もマルチトール投与群の方が低かった。1)Atsuji et al., 1982

健常者3名、糖尿病患者3名、急性肝炎患者1名に、グルコース、ソルビトール、マルチトール50gを水溶液にして経口投与し、投与開始時0.5123時間後にこれらの糖類の血中濃度を測定した。マルチトール濃度は0.5時間後にピークとなりそれ以降急速に減少した。グルコースはマルチトールと同様のパターンを示したが、その濃度はマルチトールより優位に高く、特に糖尿病患者では顕著であった。1) (Nishikawa, 1982)

6名から10名のボランティアに、20g、30g、40g、60gのHGSまたはショ糖を単回投与する二重盲験試験を行なった。HGS60gを単回投与したボランティアの80%が腹部不快感、水様性下痢、激しい腹痛、を訴えるか、腸内ガスの産生が増加したと報告した。少量投与ではこれらの徴候の発現は殆どみられなかった。別の試験で、10名の別のボランティアにHGSを30g、60g、120gまたはショ糖64gを分割して2日間に亘って間欠的に投与した。最高用量では50%の被験者に腹部の症状が認められたが、最低用量での発現率は20%であった。更に別の試験において、10名のボランティアにHGS 30gあるいはショ糖30gを毎日21日間、もう一方の12名のグループにはHGS 15g、ソルビトール15g、あるいはショ糖15gを毎日28日間投与した。より高い用量群の5名に緩和な鼓腸が報告された以外は、HGS2128日間摂取した全ての被験者に有害な症状は認められなかった。血液学並びに生化学指数(肝機能、グルコース、コレステロール、リポ蛋白、血漿インスリン、及びトリグリセリド)に異常は認められなかった。1) (Abraham et al., 1981)

9
名の糖尿病患者(男性5名、女性4名)を対象に、マルチトール50g、グルコース50gを単回、あるいはショ糖、粉末デンプンシロップ又はマルチトール各50gを毎日7日間経口投与した。投与03時間後に、血中のグルコース、免疫反応性インスリン(IRI)、遊離脂肪酸(FFA)、並びにトリグリセリド(TG) 量を測定した。マルチトールの単回投与では、グルコース自体を投与した場合より血中のグルコース及びIRI量は低かったが、FFA及びTG濃度は高かった。複数回投与の結果は、評価するには明確なデータではなかった。1)(takeuchi & Yamashita, 1972)

糖尿病患者11名(男性6名、女性5名)及び健常対照ボランティア9名(男性7名、女性2名)に、マルトース50gあるいはマルチトール50gを単回経口投与した。マルチトール投与の方が、マルトースを投与した場合よりも血中のグルコース及びIRIの増加は低かった。追加の糖尿病患者10名及び健常対照ボランティア10名に、マルチトール又はショ糖を甘味剤として用いた「ぜんざい」を摂取させた。マルチトールを添加した方がショ糖を添加した場合より、血中グルコース量の増加は低かった。本試験では、両甘味剤を加えた「ぜんざい」の甘味の強さと質に有意差はなかった。好ましくない副作用は認められなかった。1)(Mimura et al., 1972)

炭水化物の代謝に対するHGS(マルチトールを89%含む)の影響を調査する目的で、健常人を対象に種々の量のHGSを経口投与し血中グルコース及びインスリン量を測定した。ボランティア6名にグルコース50gあるいはHGS 1025又は50gを別々に投与した。マルチトール投与後の血中グルコース量は、グルコースの投与後よりもかなり低かった。HGS 50g投与後の血中グルコースの曲線下面積は、グルコース投与後の面積の25%であった。同様にインスリン量も、グルコースよりHGS摂取後の方が有意に低かった。HGS 10g用量では、血中グルコース又はインスリンの増加は実質的に認められなかった。1) (Secchi et al., 1982)

健常人及び糖尿病を含むある種の疾患のある患者を対象に、マルチトールによる血中の化学的変化をグルコースの場合と比較した。健常人の血中グルコース量はグルコース(12.550g) あるいはマルチトール(50g) 投与後に測定した。グルコースの吸収曲線に基づき、経口摂取されたマルチトールの38%が消化管から吸収されたが、マルチトールの吸収はグルコースより遅かった。糖尿病及び耐糖能障害のある別の疾患の患者にマルチトールを投与すると、血中グルコース量は健常人より高くなった。マルチトール投与後の血中グルコース量は、グルコースによる上昇の2550%であり、両者に相関性が認められた。グルコース50g及びマルチトール50gの混合物を投与した後のピーク血中グルコース量は、グルコース50gのみを投与した場合よりも低かった。健常人及びグルコース耐容試験で境界値を示した患者は、マルチトール投与後にしばしば下痢が認められた。しかしながら糖尿病患者あるいはグルコース耐容性に障害のある他の疾患の患者では、下痢の頻度は極めて低かった。1)(Kamoi et al., 1975)

男性10名及び女性7名のボランティアに、甘味剤をおよそ80g/day含むキャンディー20個を毎日2週間、盲検法で摂取させた。各ボランティアには、ショ糖の対照キャンディーを1週間、HGSのキャンディーを1週間摂取させた。ボランティアの大部分は、両試験期間に食欲不振、時折下痢、痙攣、及び「膨満感」といった消化管の障害を訴えた。HGSのキャンディー80g/day量は耐容の限界を超えていた。1) (Leroy, 1982a)

年齢2356歳の健常人5名に、早朝の空腹時にマルチトール0.5g/kg/day30日間摂取させた。17及び30日目に、マルチトール投与12及び3時間後に、血中のマルチトール及びグルコース量を測定し、更に血清の蛋白、コレステロール、ビリルビン、尿酸、尿素窒素、SGOTSGPTLDH、ナトリウム、カリウム、及びカルシウム量を測定した。下痢は認められなかった。3名のボランティアでは、マルチトール投与1時間後に血中グルコースがおよそ20%増加した。他の変化は認められなかった。1) (Itoya et al., 1974)

男性107名(糖尿病患者11名を含む)及び女性20名(同2名)に、50%のHGS溶液30180mL124カ月まで摂取させた。被験者は毎日調査し、1カ月毎に血液の詳細な化学分析を実施した。高用量では下痢並びに腸の通過亢進がしばしば起き、男性より女性の方が高頻度であった。男女とも4カ月まで30mL/dayの用量に耐容性であり、臨床上あるいは消化器症状は認められなかった。1) (Tacquet & Devulder, 1978)

15
名を対象に、グルコース50gあるいはHGS 405080又は100gを単回投与した。投与後00.511.522.5及び3時間の間隔を開け、グルコース及びインスリンの血中濃度を測定した。マルチトールの尿中排泄量を投与3時間後に測定した。血中のグルコース及びインスリンのピークは、グルコース又はHGSの投与後0.5時間に認められたが、その量はグルコースよりHGSの方が少なかった。マルチトールの尿中排泄データは明確であった。1) (Debry, 1983)

健常女性5名及び糖尿病患者5名(男性3名、女性2名)に、グルコース50g又はHGS 50gを別々に単回経口投与した。別の健常ボランティア5名(男性1名、女性4名)と糖尿病患者5名(男性3名、女性2名)には、ショ糖25g、ソルビトール25g又はHGS 33gを別々に経口投与した。投与00.511.52及び3時間の間隔を開け、血清のグルコースとインスリン濃度を測定した。グルコースの投与により、血清のグルコース濃度が最も高くなった。HGSを投与した健常ボランティアのインスリン量は、ショ糖及びソルビトールを投与したボランティアのインスリン量と異なった。糖尿病患者では、異なる糖の投与後に実質的な差は認められなかった。1) (Vessby, 1982)

35
名の被験者(女性10名、男性25名)を3群に分け、HGSをそれぞれ5085あるいは125g/day投与した。対象者には各溶液を2.5時間に1回、計6回摂取して、腸の不快感、膨満あるいは下痢を記録するようを要請した。50g/dayを摂取した12名の内2名が、下痢、膨満、並びに腹痛を報告した。85g/day用量では3/12125g/dayでは6/11の被験者が下痢、膨満及び腹痛を報告した。男女間に差は認められなかった。1日以上かけて摂取した場合、HGS85g以上が殆どの被験者に過度の問題なく耐容性があると筆者らは結論付けた。腸の不快感、膨満、並びに下痢は、HGSの摂取によって重篤度が増大した。1) (Kearsley et al., 1982)

一晩絶食させた16名の被験者(男女各8名)に、5種の物質(HGS、マルチトール、グルコース、及びHGSに含まれる比率のグルコースとソルビトール混合物、あるいは高マルチトールシロップ)の内1つを0.5g/kg摂取させた。いずれの試験炭水化物に付いても、摂取後の尿中にグルコースは検出されなかった。HGS、グルコース/ソルビトール混合物、あるいは高マルチトールシロップを摂取した被験者において、尿中ポリオール類の濃度に有意な差は認められなかった。血中グルコース及び血清インスリンプロフィールについて、HGS、マルチトール、及びショ糖/ソルビトール混合物を摂取した被験者で差は認められなかった。これら全ての物質は、グルコースを摂取した場合よりも低いグルコース及びインスリンのピーク値を示した。これらの結果から、HGS及び高マルチトールシロップはそれらの基本成分とほぼ同程度に代謝されることが明らかになった。1) (Kearsley et al., 1982)

30歳と35歳の健康な二名の被験者に、空腹時69.5gのマルチトールを摂取させた。経口摂取20分後に血中グルコース濃度はそれぞれ20mg/dL,30mg/dLに増加した。マルチトール摂取後、この血中濃度は2時間後まで持続し、3時間後に正常化した。この時2名の被験者に下痢が発生した。1) (一人は2時間後、もう一人は3時間半後) (Zunft et al., 1983)

年齢3453歳の被験者4名に、1日量35gのマルチトールを10日間食事と共に摂取させた。自覚症状(膨満、腹痛及び悪心)及び便のパラメータ(総量、排便頻度、pH、及びマルチトール含量)を、マルチトール非摂取の対照期間と比較した。10日間の試験期間に、便の頻度と量あるいはpHに有意な変化はなかった。薄層クロマトグラフィーによる分析で、便にマルチトールは検出されなかった。1) (Zunft et al., 1983)


引用文献
1) WHO Food Additives Series, No.20 Hydrogenated Glucose Syrups 05-18-04,  (link to WHO DB
)

2) WHO Food Additives Series, No.32 Maltitol and Maltitol Syrups 05-18-04,  (link to WHO DB)
3) Modderman, J. P., Regul. Toxicol. Pharmacol., 18, 80-114 (1993).
   


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