和名 ケイ酸マグネシウムアルミニウム
英文名 Aluminum Magnesium
Silicate
CAS 1327-43-1 (link to
ChemIDplus)別名 アルミニウムマグネシウムシリケート(109615)、ケイ酸Mg/Al
収載公定書
薬添規(JPE2018) 外原規(2006) USP/NF(28/23)(Magnesium Aluminum
Silicate) EP(5)
用途 懸濁(化)剤,粘着増強剤,粘稠化剤
■単回投与毒性 (link to
ChemIDplus)
■反復投与毒性 (link to
TOXLINE)
■生殖発生毒性 (link to
DART)
以下は類縁化合物のメタケイ酸アルミニウムマグネシウムのデータである。
以下については該当文献なし
■遺伝毒性
■がん原性
■生殖発生毒性
12-18週齢のICR-JCL初妊マウスに妊娠7日から12日までの6日間、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(MAS)6000、3000及び600mg/kgを毎日1回経口投与した。妊娠18日に母体を屠殺して、胎仔について検査した結果、着床数、吸収死亡胚数、生仔平均体重及び外形異常仔数は、MAS群と対照群との間に有意差は認められなかった。生仔のalizarin
red S染色による骨格透明標本の観察では、6000mg/kgで後肢距骨出現頻度が対照群との間で有意差が認められた。また頸肋、胸骨格非対称の出現頻度にも、MAS投与群に有意差を認めたが、骨奇形は1例も認められなかった。生仔の生後発育を検索した結果、出生仔数、体重、哺育率にも影響はなく、離乳時の検査、剖検時の所見、骨格観察標本においても特に本剤の影響と考えられる所見は認められなかった。 以上の結果から、本実験条件下においてMASは、マウスの胎仔に対する催奇形性作用、または発育抑制作用を有しないものと結論できる。1)(酒井ら, 1975)
■局所刺激性
該当文献なし
■その他の毒性
該当文献なし
■ヒトにおける知見
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムによる尿路ケイ酸結石の報告
55歳男性。1973年頃より、十二指腸潰瘍、多発性胃潰瘍のため、抗潰瘍剤の他に、調剤用胃腸薬(SM散、1包1.3g中メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.4g含有)を食後3回、及び胃痛が生じた時に服用し、多いときは1日8-9回服用した。この胃腸薬を服用し始めた約半年後に尿路結石の自排があり、その後も数回にわたり排石がみられた。結石の成分は、赤外線分光分析にて98%以上二酸化ケイ素と判明した。抗潰瘍剤の服用だけでケイ酸マグネシウム(ケイ酸Mg)含有の胃腸薬の内服を中止すると、それ以降は1回自排石をみて以来、結石の排石はみられていない。ケイ酸Mgの服用を中止した後、再び通常量、及び通常の3倍量をそれぞれ1週間ずつ服用させた。その結果、血清中ケイ素濃度は胃薬非服用時0.1μg/mL以下、ケイ酸Mg 通常量0.1μg/mL以下、3倍量0.2μg/mL、尿中ケイ素濃度は非服用時5.8μg/mL、通常量11.0μg/mL、3倍量7.1μg/mLであった。頻回に小さな小さな尿路結石の排石を繰り返し、KUB撮影で確認できない場合、ケイ酸結石の可能性を念頭に入れて、ケイ酸Mgを含む胃薬を服用していないかなど、十分に病歴を聴取することが重要と思われる。 2)(平沢ら、1990)
52歳男性。1987年10月より十二指腸潰瘍で健胃整腸消化剤(FK散、1包1.3g中メ タケイ酸アルミン酸マグネシウム0.4g含有)を1日2g内服していた。1989年12月24 日右側腹部痛と肉眼的血尿が出現し、26日初診、KUB(腎尿管膀胱単純X線撮影)で は結石陰影は不明で、IVP(静脈製腎盂造影法)で右尿管下端に造影剤の停滞を認め
た。初診日の2日後に排石し、以後症状は消失した。赤外線分光分析による結石成分 は98%ケイ酸塩であった。ケイ酸マグネシウム服用中と服用中止後の血清中、尿中の
ケイ素濃度を測定したところ、服用中止後血清中、尿中のケイ素濃度に低下が認めら
れ、ケイ酸結石形成にケイ酸マグネシウム服用が関与していることが考えられた。
3) (三原ら、1992)
71歳女性。高血圧のためカルシウム拮抗剤を約20年間服用しており、粟粒大−砂状の結石の自排を数度経験した。その後、大動脈弁閉鎖不全症と僧帽弁不全症の診断で2弁置換術を受けた後、野菜中心の食事療法を行うとともに抗凝固療法を受けていた。なお、患者はケイ酸Mg剤の投与は受けていなかった。今回、突然右側腹部痛が出現、疼痛は次第に下降し、結石の自排を認めたため当科に紹介された。X線検査の結果、KUBでは尿路に結石を疑わせる異常陰影は認められなかったが、DIUでは両腎の機能、形態に異常はないが、右下部尿管は軽度の拡張を示し、右尿管下端に結石の存在が疑われた。自排された結石は砂状―粟粒大、灰白色で、重量は28mgであった。採取した結石と沈降無水ケイ酸の赤外線分光分析図(KBr錠剤法)では98%ケイ酸結石と判定し、粉末X線回析図でも対照の沈降無水ケイ酸と同様のパターンを示し、反射角度26.3付近での反射X線強度は5393CPSであった。ケイモリブデン黄法によるケイ酸定量及び原子吸光法によるケイ酸定量では、ケイ酸87.3%、ケイ素43.9%が含有されていた。また、血清及び尿中ケイ酸濃度は各0.5μg/mL、86μg/mLであり、これまでの報告に比し高値であった。本症例ではケイ酸剤の服用歴もなく、食事の内容にも偏りはみられなかった。これまで報告された3例を含めたケイ酸剤の服用歴のなかった4例は、いずれも慢性疾患に対し何等かの長期薬剤投与を受けており、薬品添加物(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素など)としてのケイ酸が尿中濃度を上昇させ、結石形成をきたしたものと推察された。 4)(木下ら、1993)
ケイ酸結石の4例中1例にメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが投与されていた。58歳男性。55歳から慢性胃炎に対してメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含むキャベジンを3年間内服の既往歴があった。1988年12月2日右側腹部痛が出現した。11日結石を自排したため12日初診となった。DIPにて右上腎杯のみの鈍化が認められた。自排した結石は98%以上がケイ酸結石であった。5)(稲原ら、2002)
■引用文献
1)
酒井 克美、森口 幸栄 妊娠中に経口投与されたメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのマウス胎仔の発生および生後発育におよぼす影響:応用薬理, 1975: 9, 703-714
2)
平沢 潔、広瀬 始之、日下 史章、坂本 克輔、畑 弘道 ケイ酸結石の1例 :西日本泌尿器科, 1990: 52, 50-53
3)
三原 聡、河村 秀樹、根本 良介、宮川 征男 ケイ酸結石の1例 :西日本泌尿器科, 1992: 54, 875-877
4)
木下 博之、伊東 史雄、田中 啓幹 ケイ酸結石の1例 :西日本泌尿器科, 1993: 55, 1644-1648
5)
稲原 昌彦、甘粕 誠、永田 真樹、山口 邦雄 ケイ酸結石の4例 :泌尿器科紀要, 2002: 48,
359-362
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