日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 コレステロール
英文名 Cholesterol

CAS 57-88-5 (link to ChemIDplus),  (link to JAN DB), (link to JANe DB)
別名 コレステリン
収載公定書  局方(JP17) 外原規(2006) USP/NF(28/23)  EP(5)
用途 賦形剤,基剤,界面活性剤


単回投与毒性
該当文献なし


反復投与毒性 (link to TOXLINE)
アルビノ マウス30匹にコレステロールおよびコリンを ,それぞれ1%、0.45%飼料に混入して投与した。対照群30匹は0.45%コリンの混餌投与とした。投与4週間後に各群10匹を屠殺して、肝臓の病理組織学的検査およびヒドロキシプロリン、グリコサミノグリカンを測定した。各群10匹は24週間投与を行い、残りの各群10匹は、4週間投与後、対照群の飼料を4週間与え て回復性を調べた。その結果、4および24週間投与群では、肝臓重量の増加、肝細胞へのコレステロールの蓄積(10-25倍)、ヒドロキシプロリン、グリコサミノグリカンの増加、壊死・線維化は認められなかったが、びまん性の肝細胞の脂肪化が認められた。コレステロールを4週間投与 後の4週間休薬例では、対照群に比べ肝細胞におけるコレステロール濃度の軽度増加のみであった。このことから、肝臓の変化は可逆性のものとみなされた。Lee, 1981 1)


遺伝毒性 (link to GENE-TOX)

試験

試験系

濃度

結果

文献

復帰突然変異

サルモネラ菌TA98,TA100,TA1535,TA1538

2500 μg/plate

陰性

Anderson, 1978 1)

復帰突然変異

サルモネラ菌TA1535,TA1537,TA1538

40 μg

陰性

Beljanski, 1982 1)

突然変異

チャイニーズハムスターV79細胞

25 μM

陰性

Chang, 1988 2)

細胞形質転換
in vitro

ゴールデン・シリアンハムスター胚細胞

10 μg/mL

陰性

Pienta, 1980 1)

細胞形質転換
in vitro

シリアン・ハムスター胚細胞

代謝物
cholesterol-α-epoxide
cholestan-3β,5α,6β-triol

陽性

Pienta, 1980 1)




がん原性 (link to CCRIS)
コレステロールをマウスの皮下に連日投与してがん原性を調べた結果、局所に肉腫が認められたが、偽陽性とみなされた。Hieger, 1947, 1949, 1954, 1957, 1958, 1959, 1962 1)

Fisher 344系ラットの無菌動物、コンベンショナル動物を用いて、コレステロール、cholesterol epoxide, cholesterol triol、sodium litocholateの,結腸癌のプロモーション作用を調べた。MNNG(N-methyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine) 2.5 mgを生理食塩液あるいはトウモロコシ油に溶解して週2回2週間直腸内投与した後、各被験物質20 mgは0.2mLの生理食塩液あるいはトウモロコシ油に溶解して、週3回46週間直腸内投与した。対照群にはMNNG投与後、溶媒を投与した群と48週間溶媒のみでイニシエーションを行わない群を設けた。その結果、いずれの動物も48週間生存し、剖検・組織学的検査から、MNNG+sodium litocholate群では、結腸癌の発生頻度がMNNG単独群より有意に増加した。MNNG+コレステロールおよびコレステロール代謝物群では、MNNG+溶媒群と比較して、腫瘍の頻度に差は認められなかった。これらのことから、コレステロール、cholesterol epoxide, cholesterol triolは本試験では結腸癌へのプロモーション作用はないとみなされた。Reddy, 1979 1)


生殖発生毒性 (link to DART)
アルビノ ラット雌2群各10匹を用いてコレステロールによる口蓋裂を調べた。第1群ではコレステロール15mgを植物油2mLに溶解して、連日皮下投与を行った。第2群 では植物油2mLのみを皮下投与した。投与は妊娠8-14日に実施した。母動物は妊娠18日目に屠殺して、胎児の口蓋異常を肉眼的、組織学的に調べた。対照群10例中7例が妊娠し、1腹あたりの胎児は平均12.5匹で、奇形は認められなかった。 コレステロール群では、10例中5例が妊娠し、1腹あたりの胎児は平均10匹であった。57%の胎児で口蓋異常がみられた。Buresh, 1964 1)

上記と同様な方法で、コレステロールによる口蓋裂をアルビノ ラット雌3群各10匹を用いて調べた。コレステロール5 mg、10 mg群では、口蓋異常がそれぞれ27%、52%に認められた。Buresh, 1967 1)

コレステロールによる口蓋裂はSDラット雌でも妊娠7-14日に15 mg、20 mgを投与した群で認められている。Islaelsen, 1971 1)


局所刺激性
コレステロール原液の皮膚刺激性をアルビノ ウサギ雌9匹を用いて調べた。閉塞パッチを剃毛した皮膚に24時間貼付し て、パッチ除去2時間及び24時間目に刺激性の評点をつけた。その結果、コレステロール原液の評点はいずれもゼロで、一次刺激性インデックスもゼロであった。このことから、コレステロール原液にはウサギの皮膚刺激性はないものとみなされた。CTFA, 1977 1)

1.7%コレステロール含有保湿剤の皮膚刺激性をアルビノ ウサギ雌9匹を用いて調べた。保湿剤の閉塞パッチを剃毛した皮膚に24時間貼付した後、パッチ除去2時間、24時間目に刺激性の評点をつけた。その結果、パッチ除去2時間目に1例死亡し、5例の評点は0.5で、1例は1であった。24時間目の評点は2例で0.5、1例で1であった。このことから、コレステロールを含む保湿剤のウサギ皮膚刺激性は軽微で、軽微な皮膚刺激物(slight skin irritant: 皮膚刺激インデックス0.56)とみなされた。CTFA, 1980 1)

コレステロール結晶の皮膚刺激性はラットの足蹠皮下に投与した場合に認められる。0.20 mLの皮下投与によって惹起された刺激性および浮腫はプロスタグランジンEあるいはスロンボキサンB1の投与により抑制される。コレステロール結晶注射により惹起される刺激性と浮腫の程度は、必須脂肪酸欠損症のラットでは軽微であった。Denko, 1980 1)

5%コレステロール含有トウモロコシ油溶解液の眼粘膜刺激性をDraize法に従ってアルビノ ウサギ2群各 匹を用いて調べた。被験液0.1mLを片眼に点眼し、他眼は対照とした。点眼後の洗浄は行わなかった。点眼1日目の評点は第1群ではいずれの例もゼロであった。第2群の2例では、結膜に軽度な刺激性が認められた。点眼2日目の評点はいずれの例もゼロであった。眼粘膜刺激性評点は第1群ではゼロ、第2群では1となった。このことから、5%コレステロールの トウモロコシ油液は極めて軽微な眼粘膜刺激物(minimal eye irritant)とみなされた。CTFA, 1977 2)

6%コレステロール含有美顔用クリームの眼粘膜刺激性をウサギ9匹を用いて調べた。被験液0.1mLを片眼に点眼し、他眼は対照とした。被験物質を点眼後、30秒後に洗浄する3匹については、点眼後1、2、3、4、7日目の眼粘膜刺激性を評価した。洗浄しない眼粘膜は、角膜に軽微な斑点、結膜の紅斑が6例中それぞれ2例、5例に認められた。点眼後3-7日目には刺激性はみられなかった。洗眼を行った3例中2例では、点眼1日目に結膜の軽微な紅斑がみられた。これらのことから、美顔用クリームは軽微な眼粘膜刺激物(slight eye irritant)とみなされた。Toxicological Resources, 1973 1)

1.7%コレステロール含有保湿剤原液の眼粘膜刺激性をウサギ6匹を用いて調べた。点眼後の洗浄は行わなかった。0.1mLを片眼に点眼し、他眼は対照とした。点眼後24時間目に結膜の軽微な刺激性が5例4例に認められたが、48時間目には刺激性はみられなかった。刺激性評点が2であることから、保湿剤は極めて軽微な眼粘膜刺激物(minimal eye irritant)とみなされた。Kritchevsky, 1958 1)


その他の毒性
該当文献なし


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
1.4%コレステロール含有保湿剤6製品の皮膚刺激性を被験女性23名で調べた。また、流動パラフィンを用いた対照群も設けた。保湿剤各0.3 gを閉塞パッチにして、背部に72時間貼付した。パッチ除去直後(72時間目)および24時間後(96時間目)に刺激性を0〜4(潰瘍、水疱)までの評点で評価した。平均値で、投与72時間目は,0.31、96時間目は0.22であった。この保湿剤の皮膚刺激性は極めて軽微(minimally)ないし軽度な(mild)皮膚刺激物とみなされた。CTFA, 1982 1)

1.4%コレステロール含有保湿基剤3製品について上記と同様な方法で皮膚刺激性を評価した。第1の基剤は25名で行い、72時間目で平均評点0.24、96時間目で0.28を示し、軽度な(mild)皮膚刺激物とみなされた。第2の基剤は26名で行い、72時間目の評点は0.17、96時間目の評点は0.23であった。第3の基剤は25名で行い、72時間目は0.42、96時間目は0.48であった。CTFA, 1982 1)

1.4%コレステロール含有製品について、Kligman and Woodingの方法に従い10日間累積刺激性試験を実施した。製品0.3 gを被検者10名の掌に閉塞パッチを連日10日間行った。投与局所の刺激性は、パッチ交換時に0〜4(浮腫を伴う軽微な紅斑、小疱性びらん)までの評点で評価した。いずれの10名ともに、試験終了時は評点1の軽度な紅斑が認められた。最も早期にみられた例は投与4回後より終了時までであった。群平均刺激性評点は3.5であった。このことから、閉塞パッチでは軽度な皮膚刺激物(mild irritant)とみなされた。CTFA, 1979 1)

2.7%コレステロール含有保湿基剤5製品について、21日間累積刺激性試験を被検者15名で実施した。製品各0.3gを3週間月曜日から金曜日まで閉塞パッチを交換した。合計15回交換となる。金曜日に貼付したパッチは週末をそのままとした。投与局所の刺激性は、パッチ交換時に0〜4(紅斑、硬結、水疱)までの評点で評価した。いずれの刺激性変化も評点は1(紅斑)に留まった。このことから、5製品は極めて軽微(minimal)ないし軽度な皮膚刺激物(mild irritant)とみなされた。CTFA, 1980 1)

1.4%コレステロール含有保湿剤をマキシミゼーション法 で感作性を調べた。被験物質に対する刺激性を認めない被検者24名に予め1% sodium lauryl sulfate(SLS)を含む閉塞パッチを24時間施した。その後、保湿剤0.3 gを閉塞パッチで48時間貼付し、24時間間隔の後、再度閉塞パッチを5回行い感作した。5回目のパッチを除去後10日目に閉塞パッチを48時間貼付し、除去後24時間目に評点をつけた。誘発部位は10% SLSを1時間処置した。その結果、誘発部位に感作反応は認められなかった。このことから、保湿剤には感作性はないものとみなされた。CTFA, 1980 1)

1.4%コレステロール含有保湿基剤の光毒性を被験者10名で調べた。5 μL/cm2の保湿剤を腰部に閉塞状態で6時間適用した。パッチを除去後、150Wのキセノンランプ(UVAおよび可視光、98.2 mW/cm2曝露、UVA 25 mW/cm2相当)を照射後、直後、24時間、48時間後に局所の評点をつけた。流動パラフィンを対照群に用いた。その結果、いずれの部位にも反応はみられなかった。このことから、本試験条件下では光毒性はないものとみなされた。CTFA, 1979 1)

6%コレステロール含有美顔用クリームをSchwarz-Peck法を用いて刺激性、感作性、光感作性を調べた。さらに、累積損傷皮膚(insult)パッチテストも実施した。本試験には 被験者110名が参加し、開放、閉塞パッチの両方を行った。背部への48時間の閉塞パッチ後、直ちに右耳に開放パッチをを実施した。48時間後に投与部位の評点をつけた。14日間の無処置後、2回目の開放、閉塞パッチを実施し、48時間後に評点をつけた。2回目の閉塞パッチ除去後、Hanovia Tanette Mark 1ランプ(300-370nm)で照射後48時間目に評点をつけた。その結果、いずれの部位にも刺激性は認められなかった。45名について、累積損傷皮膚パッチテストを実施した。各々に開放および閉塞パッチを10個づつ貼付した。パッチは月曜日、水曜日、金曜日に貼付して、48時間後に刺激性を調べた。14日間の休薬後、開放および閉塞パッチを行い、1,4,7,10,11回目に評点をつけた。UV照射では、照射後48時間目に評価した。その結果、コレステロール含有美顔用クリームは、刺激性、感作性、光感作性を2つの方法で調べたが、認められなかった。Research Testing Laboratories, 1974 1)


引用文献
1) Anonymous, Final report on the safety assessment of cholesterol. J. Am. Coll. Toxicol. 1986; 5: 491-516
(link to the Journal
2) Chang CC, Jone C, Trosko JE, Peterson AR, Sevanian A, Effect of cholesterol epoxides on the inhibition of intercellular communication and on mutation induction in Chinese hamster V79 cells, Mutat. Res., 1988; 206: 471-478

 


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