日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 マクロゴール200
英文名 Macrogol 200

CAS 25322-68-3 (link to ChemIDplus)
別名 ポリエチレングリコール200(108860)、Polyethylene glycol 200
収載公定書  薬添規(JPE2018) 薬添規(2003)  外原規(2006) (ポリエチレングリコール200)  USP/NF (28/23) (Polyethylene glycol)
用途 基剤 ,溶剤


JECFAの評価 (link to JECFA)
(分子量10000以下のマクロゴール全体として)
ラットにおける無毒性量; 混餌投与で20,000ppm (2%)、これは1,000mg/kg bwに相当する。
ヒト1日許容摂取量(ADI)は0-10mg/kg body weightである。


単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
マウス 経口 33900mg/kg  Union Carbide, 1965 1)
マウス 腹腔内 11800mg/kg Union Carbide, 1965 1)
ラット 経口 28900mg/kg Union Carbide, 1965 1)
ラット 経口 34000mg/kg Union Carbide, 1965 1)
ラット 経口 28250mg/kg Union Carbide, 1965 1)
モルモット 経口 16900mg/kg Union Carbide, 1965 1)
ウサギ 経口 14100mg/kg Union Carbide, 1965 1)

吸入毒性
マウス及びラットに、ポリエチレングリコール200(PEG 200)を2516mg/m3の濃度で6時間吸入させた。LCt50は、この実験で用いられた905760mg min/m3以上であった。血液化学、血液学的検査、呼吸抵抗に有意な変化は見られず、PEG 200曝露による変異原性も病理学的な異常も認められなかった。ラットでの静注及び経口投与による毒性実験でもPEG 200は比較的害のないクラスに属する。11) (Crook et al., 1982)


反復投与毒性(link to TOXLINE)
ラット
5例の雄ラットに,PEG200,300及び400をそれぞれ0.06,0.25,1,4および16%の濃度で90日間飲水投与した.16%投与群では投与9日以内にPEG200では4例,PEG300では 3例が9日以内に,PEG400では3例が80〜84日に死亡した.死亡した動物において,PEG200及び400では明らかな変化は認められなかったが,PEG300では,剖検で肝臓の混濁腫脹,病理組織学的検査で腎糸球体の拡張および腎尿細管に壊死が認められた.PEG200,300及び400の投与量は,それぞれ10.9,20.5及び16.4 g/kg/日相当であった。また,PEG300の90日間生存した動物では,剖検で肝臓の肥大,病理組織学的検査で腎糸球体の拡張が認められた.4%以下の投与群では,PEG200,300及び400とも,一般状態,体重,摂水量,血液学的検査,血液生化学的検査,尿検査及び病理組織学的検査(副腎,小腸,腎臓,肝臓,脾臓,精巣)に変化は認められなかった。PEG200,300及び400の投与量はそれぞれ4.8,5.4及び4.8 g/kg/日相当であった。2) (Smyth et al., 1945)

ラットにPEG200を4%および8%の濃度で飲水投与したところ,8%投与群では投与15日以内にすべての動物が,4%投与群(8g/kg)では,投与80日以内に9例中2例が死亡した.また,PEG300を4%,8%および16%の濃度で飲水投与したところ,16%投与群では投与7日以内にすべての動物が,8%投与群では投与60日に2/10例が死亡した.4%投与群(7.2g/kg)で変化は認められなかった。PEG400を4%,8%および16%の濃度で飲水投与したところ,16%投与群では投与13日以内にすべての動物が,8%及び4%投与群(20.0及び7.5g/kg/日)では腎臓重量の軽度の低下がみられた以外に変化は認められなかった。3) (Smyth et al., 1950)

雌雄各5例のラットに,PEG200,300,400,600,1000,1500,1540,4000及び6000をそれぞれ2,4,8,16および24%の濃度で90日間混餌投与した.一般状態の観察,体重,摂餌量及び臓器重量(肝臓及び腎臓)測定,並びに病理組織学的検査(肝臓及び腎臓)を行った。結果を下表に示す。
雌雄各20匹のラットに,マクロゴール200を0.5,1.0,2.0,4.0%の濃度で2年間混餌とうよした.4%投与群においても,一般状態,生存率,腫瘍の発生率,体重,摂餌量,ヘマトクリット値,肝臓および腎臓重量,剖検結果に影響は認められなかった。5) (Well & Smyth, 1956)

平均分子量

飼料中濃度(%)

 

2

4

8

16

24

200

-

-

-

肝重量

摂餌量↓, 肝・腎重量

300

-

-

体重増加

肝・腎重量

体重増加↓,摂餌量↓, 肝重量

400

-

-

-

体重増加

肝・腎重量

600

-

-

-

体重増加↓, 腎重量

体重増加↓, 腎重量

1000

-

-

-

体重増加

体重増加

1500

-

-

体重増加

体重増加

体重増加↓, 腎重量

1540

-

-

体重増加

体重増加

体重増加↓, 腎重量

4000

-

-

体重増加

体重増加↓, 腎重量

体重増加↓, 腎重量

6000

-

-

-

-

体重増加↓, 腎重量

-=変化なし

PEG6000を除いて,ほぼ同様の変化が認められた。分子量200から4000までの間に,分子量と亜急性毒性との関連性はみられず,この範囲では明らかな差は認められなかった。PEG600は低分子量のPEGに比較して明らかに低毒性であった。4) (Smyth et al., 1955)

雌雄各12例のSDラットにPEG200を2.5-5ml/kgの用量で13週間経口投与した.両投与群とも,一般状態,血液学的検査,血液生化学的検査,剖検,病理組織学的検査に変化は認められなかった。1) (Prentice & Majeed, 1978)

イヌ
雌雄各1例のイヌに,PEG200を1mL/kgの用量で8日間,筋肉内投与した.体重,尿検査に変化は認められず,剖検および病理組織検査においても変化は認められなかった。7) (Lee & Anderson, 1962)

サル
雌雄各2匹のカニクイザルにPEG200を4mL/kgの用量で3週間,2mL/kgの用量で10週間,経口投与した.一般状態,血液検査,血液生化学検査,剖検の結果に変化は認められなかった.病理組織検査では,雌2例で近位尿細管の管腔内にマクロゴール200の代謝物であると考えられる黄色結晶が認められた。6) (Prentice & Majeed, 1978)


遺伝毒性 (link to CCRIS), (link to GENE-TOX)
試験 化合物 試験系 濃度 結果 文献
染色体異常 マクロゴール200 チャイニーズハムスター
由来肝細胞
≧3mM 陽性 Biondi et al..,2002 6)
染色体異常 PEG200 チャイニーズハムスター
由来卵巣細胞(CHO)
- 陰性 Biondi et al..,2002 6)



がん原性
雌雄各20例のラットに,PEG200を0.5,1.0,2.0,4.0%の濃度で2年間混餌投与した.4%投与群においても,一般状態,生存率,腫瘍の発生率,体重,摂餌量,ヘマトクリット値,肝臓及び腎臓重量,剖検結果に影響は認められなかった。1) (Well & Smyth, 1956)


生殖発生毒性 (link to DART)
マウス
CD-1マウスの妊娠6日から17日までPEG200を0.5あるいは0.7mL/日の容量で投与し,妊娠18日に帝王切開して,生存胎児の外表,骨格および内臓検査を実施した.帝王切開時の観察では,0.5および0.7mL投与群で生存胎児数の軽度な減少,胎児体重の低下が認められた.胎児観察では,0.5および0.7mL投与群で外脳,顔面裂,四肢形態異常,肋骨癒合等が認められた。マウスにおける催奇形性が確認された。7) (Vannier et al., 1989)

ラット
SD系ラットの妊娠6日から14日,あるいは妊娠11日から16日にマクロゴール200を1.5あるいは5mL/日の容量で投与し,胎児検査を実施した.すべての投与量で,母動物の死亡が認められたが,胎児観察において変化は認められなかった。9) (Vannier et al., 1989)


局所刺激性
ウサギ
20%に生理食塩水で希釈したPEG200,300及び400を6例の白色ウサギの背部及び腹部皮膚に4時間適用した.適用中及び適用24時間後に刺激性を示唆する変化は認められなかった。2) (Smyth et al., 1945)

PEG200,300及び400の2 mL/kg/日を,6例の白色ウサギの腹部皮膚に週5日,18週間にわたり投与した。死亡はみられず,体重に変化は認められなかった。副腎,腎臓,肝臓,脾臓,精巣の病理組織学的検査において異常は認められなかった。投与部皮膚に変化はみられなかった。2) (Smyth et al., 1945)


その他の毒性
抗原性
試験 化合物 動物 結果 文献
皮膚感作性 マクロゴール200
マクロゴール200
モルモット
モルモット
陰性 Smyth et al., 1950 3)
Smyth et al., 1950 3)



ヒトにおける知見 (link to HSDB)
感作性に関して、Smithらの初期の報告では、或る種のpolyethylene glycolでモルモットや少数例のヒトで皮膚感作性のあること観察している1) (Smith et al., 1950)。
その後の報告では、最近製造のPEGには刺激作用、感作性のないことが示されている1) (Carpenter et al., 1971)。
しかし、更に最近のFischerらの報告によると、4名の患者で低分子量液状PEGの局所投与によりアレルギー反応を示したことを報告している。そのうちの2名はPEG 400に対する即時型の蕁麻疹であり、他の2名はそれぞれPEG 200及び PEG 300による遅発性のアレルギー性湿疹であった。1) (Fischer, 1978)


引用文献
1) WHO Food Additives Series No.14   (link to WHO DB)

2) Smyth, H. F., Jr., Carpenter, C.P., and Shaffer C.B. The Subacute Toxicity and Irritation of Polyethylene Glycols of Approximate Molecular Weights of 200, 300, and 400. J. Am. Pharm. Assoc. 1945. 34. 172-174.

3) Smyth, H. F., Jr., Carpenter, C.P., and Well, C.S. The toxicology of the Polyethylene Glycols. J. Am. Pharm. Assoc. Sci. Ed. 1950. 39. 349-354.

4) Smyth, H. F., Jr., Carpenter, C.P., and Well, C.S. The Chronic Oral Toxicology of the Polyethylene Glycols. J. Am. Pharm. Assoc. Sci. Ed. 1955. 44. 27-30.

5) Lee C C and Anderson R C. Toxicologic Studies on Vancomycin and Polyethylene Glycol 200. Toxicology and Applied pharmacology. 1962 4 206-214.

6) Biondi O, Motta S and Mosesso P. Low molecular weight polyethylene glycol induces chromosome aberrations in chinese hamster cells cultured in vitro. Mutagenesis. 2002 17(3) 261-264.

7) Vannier, B., Bremaud R, Benicourt M, Julien P. Teratogenic effects of polyethylene glycol 200 in the mouse but not in the rat. Teratology. 1989 40(3) 302.

参考
Fruijtier-Polloth C: Safety assessment on polyethylene glycols (PEGs) and their derivatives as used in cosmetic products. Toxicology. 2005 214(1-2) 1-38. Review.



   



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