日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 メチルセルロース
英文名 Methylcellulose

CAS 9004-67-5 (link to ChemIDplus), (link to JAN DB), (link to JANe DB)
別名 Cellulose methyl ether

収載公定書  局方(JP17),  食添(JSFA-IX), USP/NF(28/21)  EP(5)  
用途 安定(化)剤,滑沢剤,基剤,矯味剤,結合剤,懸濁(化)剤,コーティング剤,湿潤剤,糖衣剤,乳化剤,粘着剤,粘稠剤,粘稠化剤,賦形剤,分散剤,崩壊剤


JECFAの評価 (link to JECFA)
食品添加物として使用する際には緩下作用に注意する必要がある。1日許容摂取量(ADI)は推定で きず規定していない。


単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
ウサギ
ウサギに1%のメチルセルロース溶液を10-100mg/kg静脈内に注射し、血圧及び呼吸に影響は見られなかった。1) (Weidersheim et al., 1953)

ウサギに1%のメチルセルロース溶液を静脈内に注射した結果、動脈壁内膜下にメチルセルロースの沈着が見られ、広範な石灰化、化骨化、軟骨形成及び脂質沈着を伴っていた。1) (Sterbens & Silver, 1966)

イヌ
イヌに0.7-2.8%のメチルセルロース生理食塩水溶液を40ml静脈内投与した。軽度の貧血、白血球減少が見られ、血球沈降速度が亢進した。1) (Hueper 1944)


反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
1群雌雄各5例のラットに10%のメチルセルロース含有食を95日間与えた。雄では体重増加は正常であったが、雌では軽度の摂餌量低下と成長の抑制が見られた。心、肝、脾及び腎の臓器重量は正常で、それらの肉眼的及び顕微鏡的観察においても異常は見られなかった。胃の重量は対照群に比し15%重かった。1) (Tainter, 1943)

80匹のラットにメチルセルロースを0.8%含む混餌食及び1%含む飲料水を8ヶ月間与えた。ラット1匹あたりの1日平均投与量は436mgに相当した。摂水・摂餌量に変化はなく、成長にも影響は見られなかった。諸臓器には肉眼的、組織形態学的な異常は認められなかった。1) (Deichmann & Witherup, 1943)

1群5匹の雌ラットに1.66又は5%のメチルセルロース混餌食を6ヶ月間与えたが、何ら副作用は認められなかった。1) (Bauer et al., 1944)

1群雌雄各5匹のラットにメチルセルロースの0.17%(6週間後に0.5%に増量)又は5%混餌食を8ヶ月間与えた。ラットの成長には影響がなく、各臓器にも肉眼的及び顕微鏡的観察で異常は見られなかった。また、組織に異常物質の沈着は認められなかった。3世代にわたって観察したが繁殖能にも障害はなかった。第2、第3世代のラットに5%セルロース混餌食を4ヶ月間与えた場合にも異常は見られなかった。1) (Bauer & Lehman, 1951)

3群のラットを用い、変形ペアーフィーディング実験を行った。1群には50%メチルセルロース混餌食を、他の1群には50%セルロース粉末混餌食を、残りの1群には基本食を90日間投与した。前2者の群では成長の抑制が見られた。メチルセルロース又はセルロース混餌食を基本食に置き換えると著しい体重の増加が認められた。1) (Bauer & Lehman, 1951)

1群10匹のラットに、正常食又はビタミン欠乏食を与えつつメチルセルロース50mgを28日間投与した。体重増加を指標に1日量6μgのチアミン(ビタミンB1) 又は3単位のビタミンAの吸収に及ぼす影響を検討したが、何ら影響は見られなかった。1) (Ellingson & Massengale, 1952)

1%の塩化ナトリウム溶液を飲料水として与えたラットに総量160mgのメチルセルロースを10日間以上にわたって4回腹腔内投与したところ、 動脈の血圧上昇及び糸球体腎炎が見られた。更に実験を継続するとメチルセルロースが腎糸球体に沈着し、糸球体濾過の減少及びナトリウム貯留を来たし、高血圧及び糸球体の障害は進展した。1) (Hall & Hall, 1962)

1%のメチルセルロース溶液をラットに3日間隔で静注し、最終投与21日後に脾の肥大が認められた。肥大した脾は赤血球の寿命を早めた。1) (Fitch et al., 1962)

2.5%のメチルセルロース溶液をラットに1週間に2回、1〜16週間腹腔内投与してヘマトクリット値の減少及び脾重量増加が用量反応性に認められた。脾髄及び類洞には泡状の組織球の蓄積が認められ、電顕観察ではリゾゾームによる貪食像が観察された。1) (Lawson & Smith, 1968)

一群雌雄各10匹のSD系ラットに、粘度10cPのメチルセルロースを0、1、3、10%又は粘度4000cPのそれを0、3、10%含有する食餌を90日間与えた。10cP10%群の雄では最終体重が対照群に比し軽度低下していたのを除き、全ての群で成長は正常であった。摂餌量は10cP10%群の雄及び4000cP3%群の雄、同10%群の雌雄で有意に増加した。血液学的検査、血清化学検査、尿検査、臓器重量、病理組織学的検査には投与に起因する影響は見られず、網内系へのメチルセルロースの蓄積も認められなかった。1) (McCollister et al., 1973)

一群雌雄各20匹のSD系ラットに、粘度15、400又は4000cPのメチルセルロースを0、1又は5%含有する食餌を2年間与えた。投与終了時に一群雌雄各5匹については肉眼的な病理観察を行い、採血して血液検査(PCV、血色素量、白血球数)及び血清化学検査(尿素窒素、酸フォスファターゼ)を行った。残りのラットは投与開始12及び18ヵ月後に剖検し、雌雄各10匹について血液学的及び血清化学的検査を行った。肺、心、肝、腎、脾、精巣については重量を測定し、膵、副腎とともに病理組織学的検査を行った。全期間を通じ死亡率及び各種測定項目等に投与に起因する影響は認められなかった。1) (McCollister et al., 1973)

イヌ
18匹のイヌに、1%の食塩水に溶解した種々の分子量のメチルセルロース0.7〜2.8%溶液を1週間に5回、40〜130mL静注した。最大総投与量は6ヶ月間で5720mLであった。動物の殆どは死亡し、血液学的な反応及び泡沫細胞の形成が認められた。1) (Hueper, 1944)

2匹のイヌにメチルセルロースを1日2gから100gに漸増して1ヶ月間投与したが、特に異常は認められなかった。1) (Bauer, 1945)


遺伝毒性 (link to CCRIS)
メチルセルロースに関する遺伝毒性の結果は以下の通りである。1)
試験 試験系 濃度 μg/plate 結果 文献
エームス試験 ネズミチフス菌
TA98, TA100,TA1535,
TA1537 TA1538
50μg/plate 陰性 Blevins & Taylor, 1982
エームス試験 ネズミチフス菌
TA92, TA94, TA98,
TA100, TA1535,TA1537,
TA1538
<70μg/plate 陰性 Ishidate,Jr. et al., 1984
復帰突然変異ラット ネズミチフス菌
TA1530, G46
1x4.75,
47.5, 475mg/kg &
5x5000mg/kg
陰性 Litton Bionetics, 1974
有糸分裂組み換え、ラット 酵母菌
TA1530, G46
1x4.75,
47.5, 475mg/kg &
5x5000mg/kg
陰性 Litton Bionetics, 1974
染色体異常 チャイニーズハムスター
線維芽細胞
<4.0mg/mL 陰性 Ishidate,Jr. et al., 1984
染色体異常誘発 ヒト胎児肺細胞 80, 800, 8000μg/mL 陰性 Litton Bionetics, 1974
染色体異常誘発 ラット骨髄細胞 1x4.75,
47.5, 475mg/kg &
5x5000mg/kg
陰性 Litton Bionetics, 1974
優性致死 雄ラット 1x4.75,
47.5, 475mg/kg &
5x5000mg/kg
陰性 Litton Bionetics, 1974



がん原性
25匹のラットの皮下にメチルセルロースの粉末500mgを埋め込んで検討したが、発癌性を示唆する所見は得られなかった。1) (Hueper, 1959)

一群雌雄各30匹のSD系ラットに、粘度15、400又は4000cPのメチルセルロースを0、1又は5%含有する食餌を2年間与えた。諸臓器の肉眼的な検査は、実験中の死亡例及び最終段階で病気であった例及び残りの生存例について行った。剖検で認められた結節や腫脹は病理切片を作成して組織病理学的検査を行った。メチルセルロース投与により腫瘍発生頻度が増加するとの兆候は得られなかった。1) (McCollister et al., 1973)



生殖発生毒性 (link to DART)
マウス
1群20〜22匹の妊娠マウスにトウモロコシ油に懸濁したメチルセルロースの0、16、74、345又は1600mg/kgを妊娠6〜15日に1日1回強制経口投与した。陽性対照としてアスピリンの150mg/kgを同様に処置した。妊娠17日目に帝王切開し検査に供した。345mg/kg以下の投与群では着床及び母獣、胎仔の生存率に影響は認められなかった。最高用量群では母獣死亡率の有意な増加、妊娠率の低下が見られ、吸収胚の著しい増加、生仔数の有意な減少と発育遅延・体重減少が認められた。しかし、最高用量群においても催奇形性は認められなかった。1) (Food and Drug Research Laboratories Inc., 1973)

1群12〜17匹の妊娠マウスにトウモロコシ油に懸濁したメチルセルロースの70、153、330又は700mg/kgを妊娠6〜15日に1日1回強制経口投与した。陽性対照としてアセチルサリチル酸の110mg/kgを同様に処置した。妊娠17日目に帝王切開し検査に供した。母獣の成長、死亡率及び肉眼的病変の発生頻度に用量反応的な影響は認められなかった。しかし、高用量群ではトウモロコシ油対照群に比し着床数、生仔数及び黄体数は有意に減少した。胎仔の外表、内臓及び骨格異常の頻度、体重減少及び死亡率には変化は見られなかった。1) (Cannon Labs., 1975)

ラット
1群20〜25匹の妊娠ラットにトウモロコシ油に懸濁したメチルセルロースの13、51、285又は1320mg/kgを妊娠6〜15日に1日1回強制経口投与した。陽性対照としてアスピリンの150mg/kgを同様に処置した。妊娠20日目に帝王切開し検査に供した。母獣の成長、死亡率及び肉眼的病変の発生頻度に用量反応的な影響は見られなかった。着床数、生仔数、死亡胚及び吸収胚の頻度は正常の範囲内であった。高用量群の母獣から得られた胎仔では脊椎の中心外化骨化の頻度が高かったのを除き、胎仔の外表、内臓及び骨格異常の頻度にも増加は見られなかった。胎仔の体重に影響は見られなかった。1) (Food and Drug Research Laboratories Inc., 1973)

1群13〜18匹の妊娠ラットにトウモロコシ油に懸濁したメチルセルロースの120、260、550又は1200mg/kgを妊娠6〜15日に1日1回強制経口投与した。陽性対照としてアセチルサリチル酸の250mg/kgを同様に処置した。妊娠20日目に帝王切開し検査に供した。母獣の成長、死亡率及び肉眼的病変の発生頻度に用量反応的な影響は見られなかった。着床数、生仔数、黄体数、死亡胚及び吸収胚の頻度は正常の範囲内であった。高用量群の母獣から得られた胎仔では脊椎の中心外化骨化の頻度が高かったのを除き、胎仔の外表、内臓及び骨格異常の頻度にも増加は見られなかった。胎仔の体重には影響は見られなかった。1) (Cannon Labs., 1977)

ハムスター
1群22〜24匹の妊娠ハムスターにトウモロコシ油に懸濁したメチルセルロースの10、46、216又は1000mg/kgを妊娠6〜10日に1日1回強制経口投与した。陽性対照としてアスピリンの250mg/kgを同様に処置した。妊娠24日目に帝王切開し検査に供した。母獣の成長、死亡率及び肉眼的病変の発生頻度に用量反応的な影響は見られなかった。着床数、生仔数、死亡胚及び吸収胚の頻度は正常の範囲内であった。胎仔の外表、内臓及び骨格異常の頻度にも増加は見られなかった。胎仔の体重にも影響は見られなかった。1) (Food and Drug Research Laboratories Inc., 1973)

ウサギ
1群10〜17匹の妊娠ウサギにトウモロコシ油に懸濁したメチルセルロースの7、32、148又は685mg/kgを妊娠6〜18日に1日1回強制経口投与した。陽性対照として6-アミノニコチナミドの7mg/kgを同様に処置した。妊娠29日目に帝王切開し検査に供した。最高用量群の母獣では死亡率の増加及び妊娠率の低下が認められたが、成長及び肉眼的病変の発生頻度には用量反応的な影響は見られなかった。黄体数、着床数、生仔数、死亡胚及び吸収胚の頻度は正常の範囲内であった。胎仔の外表、内臓及び骨格異常の頻度にも増加は見られなかった。胎仔の体重にも影響は見られなかった。1) (Food and Drug Research Laboratories Inc., 1973)


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
該当文献なし


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
誤用

その他
3名の健常人に5gのメチルセルロースを1日2回、8日間投与した。糞便排泄量は約2倍となり、排便回数も軽度増加した。1) (Tainter, 1943)

ヒトに5又は10gのメチルセルロースを単回経口投与したが、異常は見られなかった。1) (Machle et al., 1944)

2.5〜5.25gのメチルセルロースを250mLの水でゲル状にしたものを投与し、軽度の便秘が見られた。1) (Bauer., 1945)

37名の患者に1日量として1〜6gのメチルセルロースを4〜240日間投与し(最高は6gを240日間)、何ら副作用は認められなかった。1) (Schweig, 1948)

患者に2gのメチルセルロースを食前投与し、有害な作用は認められなかった。1) (Bargen, 1949)

2名の患者に60〜90mLのメチルセルロース製剤を5日間投与した。浮腫、視力障害及び神経学的徴候が見られたが、投与中止後72時間以内には消失した。これらの所見はナトリウム及び水分保持と関連しており、血清浸透圧の上昇とアルドステロンの排泄低下を来たした。1) (Crane et al., 1969)

5名の成人男性ボランティアに1日量として250mg/kgのメチルセルロースを3回に分けて23日間以上にわたり連続投与した。アレルギー反応はなく、排泄パターンにも変化は見られなかった。予め水和したゲル状のメチルセルロースは糞便の重量を増加させ、腸管通過時間は3名では延長し、2名では短縮した。血液検査、血清化学検査及び尿検査の値は正常範囲内であった。糞便中の揮発性脂肪酸及び中性ステロールは軽度減少したが、呼気中の水素量には影響はなかった。1) (Eastwood et al., 1988)、2)(Eastwood et al., 1990)

50名の健常人(女性44名、男性6名、年齢18〜70才)に緩下剤として偽薬又はメチルセルロース(粘度;4000cP、置換度;30%)の2又は4gを1日量として1週間投与した。投与前には全員に1週間偽薬を投与した。研究の第2相では59名の便秘患者(女性56名、男性3名)にメチルセルロースを1日量として1、2又は4gを、また、陽性対照には3.4gの車前子(オオバコ)を1週間投与した。試験期間の糞便量を測定し、固形物及び水分含量を分析した。健常成人に4gのメチルセルロースを投与した群では糞便中の水分量及び腸管運動頻度が増加したが、2gの投与では偽薬投与時と変わらず影響は見られなかった。一方、便秘患者では糞便の大きさ、硬度に有意な変化はなかったが、メチルセルロース、車前子投与群ともに全ての投与群で排便回数の増加が見られた。しかし、腹部不快感及び放屁の有意な増加はなかった。1) (Hamilton et al., 1988)


引用文献
1) WHO Food Additive Series No.26 Modified cellulose. 1990 (link to WHO DB)

2) Eastwood MA, Brydon WG, Anderson DM. The effects of dietary methylcellulose in man. Food Addit Contam. 1990; 7: 9-19




   



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