日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 乳酸
英文名 Lactic Acid

CAS 50-21-5 (link to ChemIDplus),  (link to JAN DB), (link to JANe DB)
   DL体598-82-3、D体10326-41-7 (link to ChemIDplus)、L体79-33-4 (link to ChemIDplus)
別名 2-Hydroxypropanoic acid
収載公定書  局方(JP17), 食添(JSFA-IX), USP/NF(27/22)  EP(4) 
用途 安定(化)剤,可溶(化)剤,緩衝剤,基剤,矯味剤,湿潤調整剤,pH調節剤,溶解剤,溶解補助剤


JECFAの評価 (1973年,第17回):50-21-5  (link to JECFA)
ヒトのADI(1日摂取許容量);“Not Limited(制限せず)” 香料として使用する時、現在の摂取量では、安全性に関する懸念はない。 〔成人の最大耐容量:1530 mg/kg体重1) (Nazario, 1952)〕


下記データには乳酸塩を含む

単回投与毒性:50-21-5 (link to ChemIDplus), L体 (link to ChemIDplus)
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
ラット 腹腔内投与(乳酸ナトリウム)
経口投与(乳酸)
2000
3730
Rhone-Poulenc, 1965 1)
Smyth et al., 1941 1)
モルモット 経口投与 1810 Smyth et al., 1941 1)
マウス 経口投与 4875 Fitzhugh, 1945 1)


マウス,ラット
ラットに2000〜4000 mg/kg体重を皮下投与しても、死亡しなかったと報告されている。マウスに2000〜4000 mg/kg体重を皮下投与したところ、アルカローシス発現の有無に関わらず、死亡した1) (Furth & Engel, 1930)。


反復投与毒性 (link to TOXLINE), L体 (link to TOXLINE)
ラット
ラット2匹の群に乳酸ナトリウム1000、2000 mg/kg体重(乳酸として)を14〜16日間連日投与した。試験の結果、蓄積作用は認められなかった1) (Furth & Engel, 1930)。

イヌ
イヌ2匹に、乳酸600〜1600 mg/kgを2.5ヶ月間に42回経口投与しても、有害な影響は認めらなかった1) (Faust, 1910)。

トリ
10%乳酸を与えると、炭水化物、蛋白質、または脂肪含量の高い飼料によって発生するB1欠乏症と類似する多発神経炎性クリーゼ(polyneuritic crises)を引き起こすと報告された1) (Lecoq, 1936)。


遺伝毒性 50-21-5 (link to CCRIS)
復帰突然変異試験
ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)のTA97, 98, 100, 104を用いた復帰突然変異原性試験において、0.5-2.0 μl/プレート の用量で、代謝活性化の有無にかかわらず、陰性であった2) (Al-Ani & Al-Lami、1988)。

染色体異常試験
CHO K1細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)を用いた染色体異常試験において、900-1400 μg/mlの用量で、代謝活性化の有無にかかわらず、陽性であった2) (Morita、1990)。


がん原性
Fishcer344ラットに乳酸カルシウム0、2.5、5%を2年間混餌投与した。これらはそれぞれ0、2500、5000 mg/kg体重/日に相当する。有害事象は認められず、いずれの器官および組織においても用量に相関した腫瘍の有意な増加はみられなかった。また、血液学および血液生化学パラメータにおいても投与に関連した変化は認めなかった2) (Maekawa et al, 1991)。


生殖発生毒性 50-21-5 (link to DART
)


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
該当文献なし


ヒトにおける知見 50-21-5 (link to HSDB)
誤用
ヒトに対して、33%乳酸100 mlを事故により十二指腸内投与したところ、12時間以内に死亡した1) (Leschke, 1932)。

その他
満期産の新生児40名に0.4%D,L-乳酸を含む市販の栄養製剤を与えた。生後2週〜4週の体重増加率に影響は認められなかった1) (Jacobs & Christian, 1957)。

生後3ヶ月までの10日間に、健康な乳児に対して、0.4〜0.5%D,L-乳酸によって酸性化した調乳を与えた。尿の酸度が滴定可能な程度の増加を示し、尿pHが低下した。「乳含量の高い」試験食(4/5乳混合物)を与えた乳児の尿への酸排泄量は、乳含量の低い試験食を与えた乳児の2倍となり、約33%がアシドーシスを発現した。臨床的には、体重増加率の抑制、摂餌量の低下が認められた。酸性化した試験食から「甘いミルク」の試験食に切り替えたところ、認められた影響は急速に改善した1) (Droese & Stolley, 1962)。

0.35%D,L-乳酸を、生後10日〜20日の健康な乳児に与えたところ、L(+)-乳酸の尿排泄量は3倍、D(-)-乳酸の尿排泄量は12倍に増加した。試験食から乳酸を除いたところ、尿に排泄される乳酸濃度は正常に戻った。試験に使用したラセミ体混合物の組成はL(+)-乳酸80%およびD(-)-乳酸20%であったことから、幼若な満期産児にとって、D(-)-乳酸の代謝はL(+)-乳酸よりも困難であると考えられる。乳酸の尿排泄量はいずれの型でも増加したことから、幼若な乳児は、乳酸含有率0.35%の食事に対応した速度では、乳酸を利用できないことが明らかになった。多数の乳児は乳酸に耐容性がなかった。そのような乳児には、急速な体重減少、頻繁な下痢、血漿重炭酸濃度の低下、尿への有機酸排泄量の増加が認められた。試験食から乳酸を除くと、このようなすべての影響は改善した1) (Droese & Stolley, 1965)。

ヒトは何世紀もの間、D,L-乳酸を含有する果物、サワーミルク、その他の発酵食品を摂取しているが、有害な影響はまったく認められていない1)


引用文献
1) WHO Food Additive Series No. 5 Lactic acid and its ammonium, calcium, potassium and sodium,1974 (link to WHO DB)
2) WHO Food Additive Series No. 48 Aliphatic Acyclic Diols, Triols, and Related Substances, 2002 (link to WHO DB)




   


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