日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 硫酸亜鉛水和物
英文名 Zinc Sulfate

CAS 7446-20-0 (link to ChemIDplus),  (link to JAN DB), (link to JANe DB),
  7733-02-0 (無水物) (link to ChemIDplus)
別名 硫酸亜鉛七水塩、Zinc sulfate heptahydrate
収載公定書  局方(JP17) 、 食添(JSFA-IX),外添規(無水物:2017), USP/NF(27/22)  EP
用途 安定(化)剤,分散剤,溶解補助剤


JECFAの評価 (link to JECFA)
JECFAは ADI(1日許容摂取量)を設定していないが、硫酸亜鉛を600mg (亜鉛200mgに相当)まで漸増投与したヒトを用いた数ヶ月間試験に基づいて、亜鉛の暫定的MTDI (最大許容1日摂取量)を0.3-1.0mg/kgと設定している1) (第26回会議、1982年)。


単回投与毒性:7446-20-0 (link to ChemIDplus), 無水物 (link to ChemIDplus)
化合物 動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
硫酸亜鉛 マウス 経口 611mg/kg Caujolle et al., 19641)
硫酸亜鉛 ラット 経口 1374mg/kg Caujolle et al., 19641)
硫酸亜鉛 ラット 経口 920mg/kg Litton Bionetics, 19731)
硫酸亜鉛7水塩 ラット 経口 750mg/kg Hahn & Schunk, 19551)



反復投与毒性:7446-20-0  (link to TOXLINE), 無水物 (link to TOXLINE)
マウス
マウスを用いた14ヶ月間反復投与試験
150匹のC3H系マウスに500ppm硫酸亜鉛を飲水投与し、14ヶ月間反復投与試験(含む途中殺処分)を実施した。なお、対照群には蒸留水を投与した。病理組織学的検査で、下垂体の活性を伴う副腎皮質及びランゲルハンス島の肥大が投与開始後3ヶ月から認められた。肝臓、脾臓及び皮膚の亜鉛含量ならびに血漿中のインスリン値及び血糖値に変化は認められなかった1) (Aughey et al., 1977)。

ラット
ラットを用いた21ヶ月間反復投与試験
1群8匹のオズボーンメンデル系ラットに硫酸亜鉛0、100、500又は1000ppm含有食を与え、21ヶ月間反復投与試験(含む途中殺処分)を実施した。多染性と高色素性赤血球が混在する小赤血球症が全被験物質投与群に認められたが、持続的ではなかった。骨髄塗沫検査で被験物質投与群にM/E比の低下(投与群1.16-1.35、対照群2.14)が認められ、雄の500及び1000ppm群の腎臓に腫大及び表面顆粒状が観察された1) (Hagan et al., 1953)。

イヌ
イヌを用いた7週間反復投与試験
10週齡のダルメシアン種のイヌ4匹に硫酸亜鉛200mg/kgを与え、7週間反復投与試験を実施したが、嘔吐のため投与期間の後半には投与量を100、50mg/kgに減少した。その後、50mg/kgの投与量で70週間反復投与試験を実施した。4例全例に低色素性貧血及び軽度の骨髄過形成が観察されたが、骨髄塗沫検査でM/E比に異常は認められなかった1) (Hagan et al., 1953)。


遺伝毒性:7446-20-0  (link to CCRIS), 無水物 (link to CCRIS), (link to GENE-TOX)
in vitro
復帰変異試験及び宿主経由復帰変異試験
硫酸亜鉛はS. typhimurium G46 及びTA1530株を用いたin vitro復帰変異試験ならびにS. cerevisiae D3株を用いた宿主経由復帰変異試験において変異率に有意な上昇は認められなかった。S. cerevisiae を用いた試験で用量反応性を伴う変異率の上昇が硫酸亜鉛群に認められたが、陰性対照群の4倍以下の値のため陰性と判断された1) (Litton Bionetics, 1973)。

ラット骨髄細胞を用いた染色体異常試験
硫酸亜鉛2.75、27.5 又は 275mg/kgを経口投与したラットの骨髄細胞を用いた分裂中期像による染色体解析に異常は認められなかった1) (Litton Bionetics, 1973)。

ヒト胎児肺由来の細胞を用いた染色体異常試験
硫酸亜鉛0.1、 1.0 又は10 μg/mLを添加培養したヒト胎児肺由来の細胞を用いた細胞分裂後期像の染色体解析に異常は認められなかった1) (Litton Bionetics, 1973)。

in vivo
ラットを用いた優性致死試験
10匹の雄ラットを硫酸亜鉛2.75、27.5 又は 275mg/kg投与群、陽性対照群(トリエチレンメラミン0.3mg/kg)、陰性対照群(生理食塩液)に割り当て、1又は5回経口反復投与による優性致死試験を実施した。1週当たり2匹の雌と交配させる試験を7又は8週間実施したが、異常は認められなかった1) (Litton Bionetics, 1973)。


がん原性
該当文献なし


生殖発生毒性:7446-20-0  (link to DART) , 無水物 (link to DART)
マウス
マウスを用いた生殖試験
CD1マウスに妊娠6日から15日まで硫酸亜鉛0、0.3、1.4、6.5 又は 30mg/kgを投与した。妊娠17日に帝王切開により胎児を摘出し、胎児の外観及び骨格検査を実施した。着床率、母獣及び胎児の生存率に異常は見られず、さらに催奇形作用は認められなかった1) (Food and Drug Research Laboratories, 1973a)。

ハムスター
ハムスターを用いた生殖試験
ハムスターに妊娠6日から10日まで硫酸亜鉛0.9、4.1、19.0 又は 88mg/kgを投与した。妊娠14日に帝王切開により胎児を摘出し、胎児の外観及び骨格検査を実施した。着床率、母獣及び胎児の生存率に異常は見られず、さらに催奇形作用は認められなかった1) (Food and Drug Research Laboratories, 1973b)。

ラット
ラットを用いた次世代試験
若齢ラットに亜鉛末、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛又は炭酸亜鉛を0.25又は0.5%含有食を与え、次世代試験を実施した。成長、一般行動、臓器重量、生殖能の検査に異常は認められなかった1) (Heller & Burke, 1927)。

ラットを用いた生殖試験
Wistar系ラットに妊娠6日から15日まで硫酸亜鉛0.4、2.0、 9.1 又は 42.5mg/kgを投与した。妊娠20日に帝王切開により胎児を摘出し、胎児の外観及び骨格検査を実施した。着床率、母獣及び胎児の生存率に異常は見られず、さらに催奇形作用は認められなかった1) (Food and Drug Research Laboratories, 1973c)。

ラットを用いた生殖試験
1群4匹のhooded Wistar系ラットに妊娠6日から12日まで硫酸亜鉛20mg/kg又は生理食塩液を経口投与し、妊娠20日に胎児を摘出し観察した。硫酸亜鉛投与群に胎児数の有意な減少が認められたが、奇形は観察されなかった1) (Dreosti et al., 1981)


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
妊娠ラットを用いた3H-thymidine取り込み試験
妊娠20日の母獣ラットに硫酸亜鉛を投与した結果、胎児の肝及び脳DNAの3H-thymidine取り込み率は減少した1)(Dreosti et al., 1981)


ヒトにおける知見: 無水物 (link to HSDB)
硫酸亜鉛450mg/200mLは成人の催吐用量で、亜鉛の金属味は15ppmから感知可能で、40ppmは確実感知量である。殆どの食物中の亜鉛含量はこれらの値以下であるが、調理肉及びカキなどの一部の食品にはそれ以上の亜鉛が含まれている。亜鉛900ppmを含有するカキ3g/kgを4名に与えたが、異常は認められなかった。数ヶ月後に亜鉛1970ppmを含有するカキを与えた4名中1名に嘔気、重篤な痙攣及び下痢が認められた1) (Mannell, 1967)。

亜鉛塩に起因する集団中毒が2件報告されている。第1件目は300〜350名が罹患し、主な症状は腹部痙攣を伴う重篤な下痢で、その他に血便、しぶり、嘔気、嘔吐及びショック(9名)で持続時間は18-24時間、糞便中に大量の亜鉛が検出されたと記載されている。第2件目は後日2200ppmの亜鉛が検出されたアルコール飲料(1名当たりの推定摂取量、325-650mg)によるもので、飲んだ約50名に急性症状として辛味及び口腔乾燥が、その後に下痢、全身不快感、筋肉痛、複視(1名)が認められたと記載されている1) (Brown et al., 1964)。

経口投与による亜鉛の安全性を確認する目的で、慢性下腿潰瘍の入院患者を硫酸亜鉛220mg群又はプラセボ群に割り当て、経口投与による臨床試験を実施した。亜鉛に対する認容性は良好で、血液、腎臓及び肝臓のいずれにも毒性所見は認められなかった2) (Tschumi et al., 1981)


参考文献
内閣府 添加物 database (link to 評価書)

1)  WHO Food Additive No.17 Zinc sulfate. 1982  (link to WHO DB)
2) Tschumi P, Floersheim GL.. Tolerance of large doses of oral zinc sulfate. Schweiz Med Wochenschr. 1981 Oct 17;111(42):1573-7.





   

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