和名 サッカリン 英文名 Saccharin
CAS 81-07-2 (link to
ChemIDplus)別名 収載公定書 食添(JSFA-IX) 外原規(2006) USP/(27/22) EP(4)
用途 甘味剤,矯味剤
■JECFAの評価
(link to
JECFA)ADI( 1日許容摂取量); 0-5
mg/kg bw/日 (サッカリン、同カルシウ塩、カリウム塩、ナトリウム塩のグループ ADI
として ) (第 28回 1984)、(第 41回 1993年) サッカリンは、 1968年JECFA第 11回で評価され、その後第 21回( 1978年)、第 24回( 1980年)、第 26回( 1982年)、第 28回( 1984年)に評価され、第 21回 JECFAで既に設定されていた unconditional ADI 5 mg/kg
bwを暫定 ADI 0-2.5 mg/kg
bwに変更すると共に、特殊用途のみに限定し設定していた conditional ADI 0-15
mg/kg
bwを削除した。 この理由は動物試験により、サッカリンを長期にわたり、過乗摂取した場合に、発ガン性のリスクが懸念されたためである。 その後、暫定 ADIを継続し、第 28回( 1984年) JECFAで、これまでに得られたデータの再評価を行って、サッカリン、同カルシウ塩、カリウム塩、ナトリウム塩のグループ ADI として 0-5 mg/kg bw/日とした。
無作用量( NOEL); ラット1%混餌( 500 mg/kg
体重 /1日に相当) 3)
以下のデータには、サッカリンナトリウムのデータも含む
■単回投与毒性 (link to
ChemIDplus)
動物種 |
投与経路 |
LD50又はLC50 |
文献 |
マウス |
経口 腹腔内 |
17,500 mg/kg bw 6,300 mg/kg
bw 17,500
mg/kg bw |
Taylor
et al., 19681) Taylor et al.,
19681) Tanaka,
19641) |
ラット |
経口 腹腔内 |
14,200-17,000 mg/kg bw 7,100 mg/kg
bw |
Taylor
et al., 19681) Taylor et al.,
19681) |
ハムスター |
経口(F) |
8,700
mg/kg bw |
|
(8-day
LD50値)
|
経口(M) |
7,400
mg/kg bw |
Althoff
et al., 19751) |
ウサギ |
経口 |
5,000-8,000
mg/kg bw(LD) |
Folin
& Herter, 19121) |
イヌ |
腹腔内 |
2,500
mg/kg bw(LD) |
Becht,
19201) | ■反復投与毒性 (link to
TOXLINE) ラット 1群雌雄10匹の離乳ラットに次に示す飼料を13週投与した。 (1)対照群、(2)サッカリンナトリウム20、000ppm(2%)、(3)o-sulfamoyl安息香酸(o-SABAと略)20、000ppm(2%)、(4) o-カルボキシベンゼンスルフォン酸アンモニウム(A-o-CBSと略)20、000ppm(2%)、(5) サッカリンナトリウム100ppm(0.01%)+o-SABA450ppm(0.045%)+A-o-CBS A450ppm(0.045%)、(6)サッカリンナトリウム500ppm(0.05%)+o-SABA2250ppm(0.225%)+A-o-CBS
A2250ppm(0.225%)、(7)
サッカリンナトリウム2000ppm(0.2%)+o-SABA9000ppm(0.9%)+A-o-CBS A2250ppm(0.9%)(なお、A-o-CBS及びo-SABAはサッカリンの加水分解物である。) 体重増加率、摂餌量は1週間毎に検査し、行動観察を行った。血液学的検査(RBC、総及び奇形白血球数、ヘモグロビン、へマトクリット)、血液化学的検査(ブドウ糖、BUN、血清アルカリフォスターゼ、SGPT)、尿検査(アルブミン、ブドウ糖、顕微鏡観察項目、pH、比重)について、試験開始前、試験中間点、試験最終時点でそれぞれ検査した。全ての動物を検視し組織学的検査を行った。肝臓、腎臓、脾臓、生殖腺重量を測定し、体重に対する割合を算出した。これらの結果は全ての指標において、対照群及びサッカリン投与群の間で有意な差異は認められなかった。1)(Kennedy et al.
1976)
1群25匹(雄5匹、雌20匹)のラットにサッカリン0、1.0、10%を36週間、混餌投与した。 同グループには一生涯サッカリンを0、0.1、1.0%投与した。 第2の試験で、各群から雌1匹を選び交配させ、各同腹出産児から4匹の子ラットを選び、親と同じ濃度のサッカリン含有餌で一生涯飼育した。 10%投与群では成長が抑制されたものの、低投与群における主要な臓器の組織学的検査結果には悪影響は認められなかった。1)(Fantus & Hektoen,
1923)
イヌ 雄、雌各1匹のイヌにサッカリン150mg/日を、18ヶ月間、混餌投与した。体重、妊娠、及びその他体機能に悪影響は認められなかった。胎児も正常に成育した。1)(Bonjean, 1922)
サル 1群雌雄3匹のrhesus
monkeysにサッカリン0(対照群)、500mg/kg/日、及び1群雌雄2匹のサルに20、100mg/kg/日をそれぞれ6日間/週、76週間投与した。 投与群では1匹、対照群では2匹のサルが実験終了前に死亡したが投与によるものではなかった。試験期間中種々の機会に行った代謝試験において、大部分のサッカリンは速やかに代謝されないまま尿中に排泄された。病理学的検査及び成長、血液学的検査、臨床化学的検査結果はいずれもサッカリンの投与による有意な変化は認められなかった。1) (McChesney et al.,
1977)
1群10匹のサルからなる2群にサッカリン25mg/kg bwを経口投与した。1群は平均122ヶ月間5回/週の頻度で投与し、他の群は同様に36ヶ月投与した。試験開始後、動物の死亡はなく、毒性或いは腫瘍の発生は認められなかった。2)(Andamson & Sieber,
1983)
■遺伝毒性 (link to
GENE-TOX)
サッカリンの遺伝毒性試験結果まとめ 3)
試験 |
試験系 |
濃度μg/plate |
結果 |
文献 |
Cell mutation/オウバイン抵抗性 |
人RSa細胞 |
10-22.5mg/ml |
陽性 |
Suzuki and Suzuki
1988 |
In
vitro染色体異常試験 |
チャイニーズハムスター肺繊維芽細胞 |
8-16 mg/ml |
陽性 |
Ashby and Ishidate
1986 |
In
viro染色体異常試験 |
ICR/Swiss雄マウス |
0、0.5、1.0、1.5 g/kg bw/day, p.o. 24週間 |
陽性 |
Prasad and Rai
1987 |
優性致死試験 |
ICR/Swiss雌雄マウス |
0、1及び2
g/kg bw/12時間×5、p.o. |
陽性 |
Prasad and Rai
1986 |
昆虫による遺伝子毒性試験 |
ショウジョウバエmeiosis repair
deficient |
0.5、5.0、50mgを栄養素へ混入 |
陰性 |
Lamm et al.
1989 |
Ashby (1985) のレビューによると、サッカリンによる変異原性の誘発はサッカリンとDNAが相互にイオン対を共有するようなものではなく、測定に使用した濃度が高いためのイオンバランスによるものではないかとしている。In vitroで見られるeukaryoticセルの損傷とin
vivo試験で見られる非常に弱い活性の断続は食塩の遺伝毒性プロファイル似たものと結論される。 サッカリンの異なった塩でも(8-16mg)チャイニーズハムスター肺細胞で同じような染色体異常誘発の活性を示しており(Ashby and Ishidate
1986)、このような活性は培地のイオン濃度及び浸透圧の変化が起因するとしている。 マウスのリンパ細胞(Brusick
1986; Moor and Brock 1988)及びSaccharomyces
cerevisae(Parker and von Borster
1987)を用いたテストで、高濃度の食塩で突然変異及び染色体異常が生じることが証明されている。
種々のコートカラー遺伝子を持つヘテロ接合体マウスの胎児に、親マウスを通して0.075、0.75、1.5、3.0、5.0又は7.5g/kg bw/日のサッカリンを、妊娠8、9又は10日目に強制投与し子宮内暴露した。 サッカリン投与マウスのカラースポットの発現率は対照区が0.9(P=1×10−6)であるのに対し、3.6%と多かったが、有意差は認められなかった。2)(Mahon & Dawson,
1982)
これに対し、Fahrig (1982) はサッカリン(Remsen-Fahlberg法で製造したもので、OTSが27ppm残存している)を非突然変異物質に分類している。サッカリンを妊娠10日目に1g/kg bw ip投与した結果、701匹の子動物中、遺伝子に基づくと判断されるものは1スポットのみであった。 1g/OTS
kg体重の影響(経口投与)も3回繰り返しテストしたが、統計的に有意差が見られたのは1度だけであった。従って、OTSは突然変異物質であるかどうかはこの試験のみでは判断ができない。2)(Fahrig, 1982)
■がん原性 マウス 1群50匹の雌Swissマウスに18ヶ月、対照群(2群)、10%砂糖、5%サッカリンをそれぞれ混餌投与した。実験開始1週間前に、半数のマウスには0.2mlのポリエチレングリコールを胃へ強制投与し、残り同数のマウスにはベンゾ(a)ピレン50μgを含有するポリエチレングリコールを同様に胃へ強制投与した。体重、生存率は対照群と比較し、有意差は全く認められなかった。 ベンゾ(a)ピレンの投与は明らかに前胃上皮にneoplasmの発生率は高かったが、他の投与群ではこのようなneoplasmに対し効果はなかった。 全てのマウスについて、注意深く肉眼観察を行った結果、膀胱にneoplasmの発生は認められなかったが、顕微鏡観察は行わなかった。1)(Roe et al., 1970)
Bio-Research Consultants Inc.で2度行った実験で、1群8週令の雌雄マウス25匹にサッカリン0、10000又は50000ppm(0、1、5%に相応)を24ヶ月間、混餌投与した。 各投与群に発生した膀胱腫瘍は次のとおりであった。対照群の雄:19匹中1匹、1%サッカリン投与群の雄:1度目の試験では15匹中0、2度目の試験では15匹中0、5%サッカリン投与群の雄:1度目の試験では15匹中1匹、2度目の試験では19匹中2匹であった。各投与群の雌マウスではいずれの群も膀胱腫瘍の発生はなかった。1)(Homburger,
1978)
1群雌雄50匹の30日令マウスにサッカリン0、0.2、1.0又は5.0%を21ヶ月間、混餌投与した。 投与による悪影響は認められなかった。1)(Miyaji, 1974)
ハムスター 1群雌雄30匹の8週令のマウスに、サッカリン0、0.156、0.312、0.625、又は1.25%を飲料水で一生涯投与した。 平均生存期間は50-60週であった。全体の腫瘍発生数は、対照群において10.1%(168匹中)、サッカリン投与群において14.7%(299匹中)で、腫瘍のタイプは対照群と同じものであった。又、尿管neoplasmの発生は両群とも認められなかった。1) (Althoff et al.,
1975)
ラット(1世代投与試験) サッカリンの2年間投与試験を最初に行い、対照群(雄7、雌9匹)、サッカリン1.0%(雄10、雌10匹)、5.0%(雄9、雌9匹)混餌投与した。サッカリンの投与により、死亡率、血液学的検査、臓器重量(肝臓、腎臓、脾臓)には明らかな影響が認められなかった。 唯一病理学的変化が認められたのは5%投与群で7匹にリンパ肉腫が観察された点である。 膀胱の組織学的検査は行わなかった。1)(Fitzhugh et al., 1951)
1群雌雄20匹のラットからなる5群に、サッカリンを2年間、0、0.005、0.05、0.5又は5.0%を混餌投与した。更に、陽性対照群として、トリパンブルーの1%水溶液を2週間に1度、1年間、静注投与した。サッカリン5%投与群並びにトリパンブルー投与群では対照群に比べ死亡率が高かった。また、0.05%投与群では、対照群よりも死亡率は低かった。 サッカリン5%投与群の雌雄では、対照群に比べ摂餌量が多いにもかかわらず、成長遅延が観察された。5%投与群の雌1匹、雄4匹に膀胱結石が観察され、雄1匹では更に腎臓結石も認められた。結石が認められた雌ラットでは膀胱に移行性上皮乳頭腫が認められたが、5%投与群の結石を認めなかったその他の雌ラットにおいては、過形成、乳頭腫が観察された。 全てのラットで線虫は認められなかった。1) (Lessel, 1967)
1群54匹の40日令雄ラットにサッカリン0、0.2、1.0又は5%を28ヶ月混餌投与した。サッカリン投与による腫瘍の発生は何ら認められなかった。1) (Miyaji, 1974)
Litton Bioneticsで行われた試験で、1群雌雄26匹のラットからなる3群に、サッカリン0、1又は5%を24ヶ月混餌投与した。なお、試験は2度繰り返した。24ヶ月時点における腫瘍の発生割合は、最初の試験の対照群で45%及び雄で60%、2度目の試験で80%、雌で55%であった。このように対照群においても高い腫瘍発生率であるように、試験結果も幅広い変動があることを留意することが必要である。2度目の試験で、サッカリン高投与群の雌ラットの膀胱に乳頭腫が認められたが、他のラットでは認められなかった。1) (NRC、1974)
1群8週令の雄ラット25匹からなる3群に、サッカリン0、10000又は50000ppm(0、1又は5%に相応する。)を24ヶ月混餌投与した。試験は重複して行った。膀胱癌の発生は、最初の試験で、対照群:16匹中1匹、1%サッカリン投与群:13匹中1匹、2度目の試験では15匹中1匹、5%サッカリン投与群:最初の試験では12匹中1匹、2度目の試験では14匹中0であった。1) (Homburger, 1978)
■生殖発生毒性 (link to
DART) マウス 21匹の妊娠マウスに40-168 mg/kg
bw/日のサッカリンを、3度出産を行う期間を通じ投与したが、成長、同腹児数、出産時の生存児数については、砂糖を投与した対照群と比較し差は認められなかった。1) (Lehmann,
1929)
マウスによる催奇形性試験結果は陰性であった。1)(Tanaka, 1964: Lorke,1969:
Kroes et al., 1977)
ラット Remsen-Fahlberg法で製造したサッカリンを0、0.05、0.5又は5%を14週間混餌投与した後、各グループ毎の対で交配した。母ラットには交配期間、妊娠期間、授乳期間を通じ試験試料を投与した。分娩5日前に隔離し出産させ、出産後離乳するまで新生児と同居させた。新生児の生存数を28日間記録した。記録には親の確認、出産児数(総数、生存数、死亡数)、出生後4、21日目の生存数、28日間生存児の体重が含まれる。 この結果は、サッカリンは交配能力、生存児数、生存児の体重増加率に影響を及ぼさなかった。 サッカリンを投与した全ての群では、対照群に比較し同腹平均児数は少なく、平均生存出産児数も減少した。 結果については統計的処理をしていないが、これらの低下に関しては投与グループ全体の傾向ではなく、各グループに極度に低下した1〜2匹の結果が寄与しているものである。 従って、これらの変化は通常の試験における変動内にあるものと推測される。 生存及び死亡胎児の肉眼観察では異常は認められなかった。1) (NAS, 1974)
ラットによる催奇形性試験結果は陰性であった。1) (Boug et al., 1967: Fritz
&. Hess, 1969; Lessel, 1970; Tayler & Friedman, 1974)
サカッリンを0.3%含有する餌を妊娠期間中投与した。 対照群の胎児の異常水晶体の発生類津は12.4%であったのに対し、サッカリンを投与した母親の胎児で37.9%であった。1) (Lederer &
Pottier-Arnould, 1973)
ウサギ ウサギによる催奇形性試験結果は陰性であった。1) (Boug et al., 1967:
Koltzsche, 1969; Lessel, 1970; Tanaka et al., 1974)
■局所刺激性 該当文献なし
■その他の毒性 尿成分及び膀胱上皮増殖に及ぼすサッカリンの影響3) 塩の種類 異なるサッカリンの塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム及び酸)を10週間投与したところ、塩の種類により膀胱上皮における標識した[3H]-thymidineに異なる影響を与えることが判明した(Hasegawa & Cohen 1986)。ナトリウム塩の摂取が最も大きな影響をもつ標識指数(0.6土0.2%)で、カリウム塩は有意差が認められたものの弱い影響(0.2土0.1%)、カルシウム塩は殆ど対照群と変わらず(0.1土0.1%)、酸(サッカリン)は対照群と同じ(0.06土0.04%)となった。この場合、全ての実験区で尿中の遊離陰イオン(サッカリン)は同じ濃度になるよう投与している。ナトリウム、カリウム塩は尿量の増加をもたらし、pHも対照群に比較しやや高くなる。一方、カルシウム塩と酸ではpHが低くなり、尿量には変化がみとめられなかった。これらの結果は、以下の試験でも確認されている。即ち、200μmol/gの異なるサッカリンの塩類(ナトリウム塩として5%に相当)を含有する餌を10週間投与した。ナトリウム塩及びカリウム塩を摂取したラットでは膀胱上皮細胞の過形成が認められたが、カルシウム塩及び酸を摂取した群では認められなかった。この影響は尿中のサッカリンの総量や尿中の濃度とは関連しない独立した現象である。3) (Anderson et
al.,1988)。 サッカリン陰イオンの濃度が略同じにもかかわらず、オスラットの膀胱上皮細胞増殖の程度がナトリウム、カリウム、カルシウム及び酸の種類で異なることに関し、サッカリン分子の電子構造によるものか、核磁気共鳴スペクトロスコピーで調査した。 その結果、水素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、炭酸、尿素の各イオン濃度が変化していることが観察された。これらのイオン濃度は、生理学的濃度の場合にはサッカリン分子の電子構造を変えることはない。3) (Williamson et al.,
1987)
発癌プロモーター作用又はコーカルシノージェン作用 N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitorosoamin (BBN)
又はN-2fluorenylacetate (2-FAA)を4週間投与した後、サッカリン5%濃度又は0.05%フェノバルビタール含有飼料で32週間飼育した際の肝臓、腎臓腫瘍の発生を誘導、増加させるかどうか試験した。F344雄ラットに予め0.02%2-FAA又は0.01%BBN含有飲料水を投与した。その結果、0.02%2-FAA及び0.01%BBN共に肝臓、腎臓の発癌を誘導したが、サッカリン、フェノバルビタールのプロモーティング作用は特定の臓器のみに認められた。2)((Nakanishi et al., 1982)
同様の結果はTsuda et al.も報告している。2)(Tsuda et al.,
1983)
F344雄ラットに0.01%BBN含有飲料水を4週間与え、その後試験対象物質を投与した。 サッカリンの用量相関の雌雄ラットで、BBN投与後32週間、サッカリン0、0.04、0.2、1.0及び5%を混餌投与した。ドーズレスポンスカーブからは0.2―5%投与区で過形成を増加させる結果が得られた。同様に臓器特異性も認められた。2) (Ito et al.,
1983a)。同様の研究結果は他にも報告されている。2) (Nakanishi et al., 1982;
Tsuda et al., 1983)
■ヒトにおける知見 (link to
HSDB)
人で1.5-3.0 g/日のサッカリンを投与すると、しつこい金属性の甘味を感じるようになる(Carlson
et al., 1923)。 5-10
gの単回投与では十分に耐えられ、経口で100g投与しても何ら害は認められなかった。致命的ではないが急性の中毒症状及びアレルギー症状が観察された。1) (NAS-NRC,
1955)
これまで報告されているサッカリン摂取に伴う悪影響の基本的なものは次のとおりである。
(1) サッカリン1−1.5g/日を摂取した人で、弱い消化不良をが認められた。1)(Herter &
Folin 1911) サイクラメートとサッカリンを7g/日投与すると軟便が観察された。1) (Berryman et al., 1968) この投与量でサッカリンの摂取量は7g/日となった。他の研究報告ではサイクラメートのみを5-7g/日投与した場合に軟便が生じると報告している。
(2) アレルギー反応については、基本的には光毒性或いは光感受性の反応であるが、その発生頻度は低い。
あるケースでは同時に摂取したサイクラメートに起因するとしている。1) (Fujita et al., 1965; Stritzler & Samuels, 1956;
Kingsley, 1966; Boros, 1965; Meisel, 1952; Gordon, 1972; Taub,
1972)
また、ある研究者はスルフォニルウレアと光毒性皮膚反応を示す同種の医薬品で、交差感受性が起こるのではないかとしている。 接触皮膚炎と光感受性又は光毒性反応に関しては、仕事上でサッカリンに接触する人では報告されていない。1) (NAS, 1974)
疫学的データ サッカリンの摂取と膀胱癌との関係に関する1983年迄に報告されている疫学的データをMorgan &
Wongは再評価し、その結果を報告している。評価した報告の中には、新報告及びJECFA提出されなかった報告(Walker et al.,
1982; Hoover & Hartge, 1982; Jensen & Kamby, 1982; Morrison et
al, 1982; Nakajima et al;
1982)が含まれている。これらのデータの統計学的分析結果から、サッカリンの摂取による膀胱癌発生リスクの相関性は1.13以上で95%の信頼性で相関性が認められた。2)(Morgan & Wong
1985)
1985年以降も、サッカリン摂取による膀胱癌発生リスクの疫学データも報告されている。この中には検死標本を用い、人の膀胱組織切片について組織学的検査を行い、細胞中の異常核酸の存在、数等を調査した面白い研究もある。282名の患者から採取した総数6503枚の切片を調査したところ、膀胱上皮における変化とサッカリン使用との関連性は認められなかった。3) (Garfinkel 1999)
他の重要なデータとしては、先にサッカリンに関連したリスクは男性で増加(発生確率1.6)し、女性では増加しないとする報告を行ったグループ(Howe
et al, 1977)が、最近行ったケースコントロール調査結果では、826名の組織学的に異なる膀胱癌患者について調査したところ、サッカリンを含む多数の人工甘味料の利用と膀胱癌との関連性は、男女共に認められなかったとしている。3) (Risch et al.,1988)
2種のケースコントロール研究結果がアメリカで報告されており、膀胱癌と人工甘味料の摂取との関連性はなかったと報告している。その1つの研究報告は、173名の膀胱癌患者を、人工甘味料の摂取量で2グループに分け、人工甘味料使用飲料やテーブルトップ用甘味料を生涯にわたり100倍以上使用していたグループとそれ以下のグループで調査しており(Piper et al.,1986)
3)、他の研究は人工甘味料使用飲料を含めた溶液の摂取量を増加した場合の膀胱癌発生率増加の可能性を調査している。その結果は人工甘味料使用飲料の摂取量の増加と膀胱癌発生率の間には関連性が認められなかったとしている。3) (Slattery et al., 1988)
前記報告を含め、1983年迄に報告されている疫学的データの総合評価と同様、Morgan及びWongはそれ以降の疫学的データの評価を行っている。この結果は前回と略同様であり、15報告の評価結果によるとサッカリンの摂取と膀胱癌の発生には相関性が認められなかった。3) (Elcock & Morgan 1992)
■参考文献 内閣府 添加物 database(2006/2011年)カルシウム塩
(link to
評価書) 内閣府 添加物 database(2011年)
ナトリウム塩 (link to
評価書)
1)WHO
Food Additive Series 17 (1983) (link to
WHO DB) 2)WHO Food Additive Series 19 (1985) (link to
WHO DB) 3)WHO Food Additive Series 32 (1993) (link to
WHO DB)
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