日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 食用赤色3号
英文名 Food Red No. 3

CAS 16423-68-0 (link to ChemIDplus)
別名 エリスロシン, 2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン二ナトリウム
収載公定書  食添(JSFA-IX)
用途 着色剤


JECFAの評価(FAS 28,(1991)) (link to JECFA)
本色素による腫瘍形成作用のために、ラットに対する無作用量は判定できなかったが、委員会は、ラットにおける甲状腺腫瘍発生は主としてホルモン作用に起因する可能性が高いと判断し、甲状腺機能への影響に関する無作用量に基づいてADIを設定できると結論付けた。ヒトとラットの甲状腺の生理学的差を考慮し、委員会は過去に報告されたヒトデータの無作用量に基づいて評価した。したがって、委員会は、60 mg/ヒト/日(1 mg/kg体重/日に相当)という無作用量に安全係数10を適用して、本色素のADIを0〜0.1 mg/kg体重と設定した1)(FDA, 1991)

毒性作用を示さない用量
ラット:0.25%混餌(125 mg/kg体重/日に相当)2) (FDA, 1986)
(甲状腺ホルモン代謝および甲状腺制御に対する生化学的影響についての試験に基づく)。

ヒトの1日摂取許容量(ADI)の推定値
0〜0.6 mg/kg体重 2) (FDA, 1986)


単回投与毒性 (link to ChemIDplus)2,3)
動物種 投与経路 LD50 文献
マウス 経口 6,800 mg/kg Butterworth et al., 1976a
マウス 腹腔内 360 mg/kg Butterworth et al., 1976a
マウス 静脈内 370 mg/kg Waliszewski, 1952
ラット 経口 1895 mg/kg Lu & Lavallee, 1964
ラット 経口 1840 mg/kg Hansen et al., 1973a
ラット 経口 7100 mg/kg Butterworth et al., 1976a
ラット 腹腔内 300 mg/kg Emerson & Anderson, 1934
ラット 腹腔内 350 mg/kg Butterworth et al., 1976a
スナネズミ 経口 1930 mg/kg FDA, 1969
ウサギ 静脈内 200 mg/kg Emerson & Anderson, 1934



反復投与毒性 (link to TOXLINE)
マウス
マウス 24ヶ月間反復投与毒性試験
Charles River CD-1マウス5群(雌雄各60匹/群)に、0(対照群2群を使用)、0.3、1.0、3.0%本色素を24ヶ月間混餌投与した。本色素平均摂取量は、雄で0、424、1474、4759 mg/kg体重/日、雌で0、507、1834、5779 mg/kg体重/日であった。3.0%投与群の雌雄で統計学的に有意な体重減少(試験期間中全体で)が認められたことを除き、全投与群において、その他の調査パラメータ(死亡率、摂餌量、血液学的検査、肉眼による病理学的検査、および病理組織学的検査)には、本色素投与による有害な影響はみられなかった2) (Richter et al., 1981)。

ラット
ラット 3日間反復投与毒性試験
若齢ラット5匹から成る群に、3日間にわたって本色素水溶液250 mg/kg体重を1日2回皮下(s.c.)注射し、4日目にラットを屠殺した。エストロゲン作用性の活性は認められなかった(子宮重量は正常であるという結果に基づく)2,3)(Graham & Allmark, 1959)。

ラット90日間反復投与毒性試験
ラット雌雄各15匹から成る5群に、0、0.25、0.5、1、2%本色素を90日間混餌投与した。体重、摂餌量、血液学的検査、血液および尿検査に関して、試験物質投与に関連すると考えられる有害な作用は認められず、全投与群において盲腸の絶対および相対重量が高値になったことを除き、臓器重量は正常であった。盲腸腫脹は用量に関連していたが、組織学的検査結果は正常であった。甲状腺の絶対および相対重量は2%投与群で高値となった。2%投与群の雌および全投与群の雄において用量依存的に尿細管で色素沈着物が認められたことを除き、病理組織学的検査では異常は認められなかった。本色素は蛋白結合本色素であると同定された。さらに、血清中における総蛋白結合ヨウ素(PHI)および蛋白結合エリスロシン量は、全群において用量依存的に高くなった。蛋白非結合ヨウ素量も用量と関連して上昇した。しかし、T4ヨウ素に変化はなく、131I取り込みは低下した2,3) (Hansen et al., 1973b)。

ラット 90日間反復投与毒性試験
BlBRA研究所の報告によれば、ラットに本品の0.25、0.5、1.0及び2.0%添加飼料を90日間投与したが、体重、摂餌量、血液学的所見、血液及び尿分析で、本品の投与に関連したと考えられる影響はなかった。器官重量では甲状腺の実重量と体重比重量が2.0 %で増加した。また各投与群で盲腸の膨大が用量に関連して認められたが、病理学的所見は正常であった3,4) (FDA, 1974) 。

ラット 90日間反復投与毒性試験
Carworth farm E SPF系ラット(雌雄各15匹/群)5群に対して、0、0.25、0.5、1.0、2.0%本色素を90日間混餌投与した。体重増加率または摂餌量に、あるいは血液学的検査、血清検査、または腎機能検査の結果に、投与によると考えられる影響はみられなかった。体重に対する甲状腺の重量は、1.0および2.0%本色素投与群でわずかに高値となった。いずれのエリスロシン混餌投与群においても、甲状腺活性に影響はみられなかった。このことは、投与ラットにおいて、甲状腺は病理組織学的に正常であり、血清T4濃度に対する作用は認められず、酸素消費率は正常であったことから、明らかになった2) (Butterworth et al., 1976a)。

ラット 6ヶ月間反復投与毒性試験
ラット1匹(体重200〜250 g)につきエリスロシン5、10、15、または50 mgを週2回6ヶ月間投与したところ、3ヶ月後にヘモグロビンおよび赤血球数が低下し、雄のコレステロール濃度が低下した2,3) (Bowie et al., 1966)。

ラット 27週間反復投与毒性試験
雄ラットに4.0%本色素を長期間混餌投与したときに認められる甲状腺腫瘍は、過剰なヨウ素(本色素の不純物あるいは本色素からのヨウ素代謝物質のいずれか)によって発生したのか、あるいは本色素が有する非ヨウ素関連の別の性質により発生したのかについて調べるため、試験を実施した。試験は後述のCharles River CDラット70匹(雌雄各35匹)の6投与群で行い、投与は27週間続けた。

群1−混合物なしの飼料を投与した
群2−1 gあたりNaI(ヨウ化ナトリウム)80 μgを含有する飼料を投与した
群3−精製本色素を4.0%で混餌投与した
群4−1 gあたりNaI(ヨウ化ナトリウム)80 μg含有の、精製本色素4.0%混餌飼料を投与した
群5−1 gあたりNaI(ヨウ化ナトリウム)160 μg含有の、精製本色素4.0%混餌飼料を投与した
群6−市販本色素を4.0%で混餌投与した

市販本色素の4%混餌投与は甲状腺機能亢進を引き起こした。TSHおよびT4は上昇したが、T3濃度は低下した。臨床化学検査パラメータ、体重、摂餌量の変化も甲状腺機能亢進を示した。市販本色素製剤をさらに精製して遊離ヨウ素を除いても、このような作用に変化はなかった。NaIのみを含有する飼料を投与した場合には、このような反応は認められなかった。本試験では、本試験および過去の試験で認められた甲状腺の変化はTSH濃度の増加によるものであることが裏付けられた。しかし、このような本色素作用の機序は本試験の結果からは解明できなかった2) (Couch et al., 1983)。

ラット6または12ヶ月間反復投与毒性試験
Sprague-Dawley雌ラット(12〜20匹/群)に対し、本色素0%(対照群)または0.2%(投与群)の混餌投与を6または12ヶ月間行った。試験期間の最後の12週間において、12ヶ月間投与群にわずかな体重増加抑制が認められた。摂餌量、血液学的検査、臨床化学検査、尿検査、および臓器重量のようなその他のパラメータは、6ヶ月および12ヶ月投与のいずれにおいても、投与群および対照群で同様であった。投与群および対照群において散発的な病理学的変化が認められた2) (Sekigawa et al., 1978)。

ラット 18ヶ月間反復投与毒性試験
ラット雌雄各5匹に対し、本色素を4%で18ヶ月間混餌投与した。腺胃および小腸に肉眼で着色が認められ、粒状の沈着物が胃、小腸、結腸に認められた。肝硬変が12ヶ月間生存していたラット4例のうち1例で認められた。20ヶ月以上観察した対照ラット50匹には腫瘍または肝硬変の発現は認められなかった2,3) (Willheim & Ivy, 1953)。

ラット18ヶ月間反復投与毒性試験
6週齢の無菌F344ラットの群(雌雄各50匹)に対して、本色素を1.25%または2.5%で18ヶ月間混餌投与した。雌雄各30匹から成る対照群には本色素非含有飼料を投与した。投与の最初の20週間には本色素をペレット状飼料に混餌させ、残りの投与期間には粉末飼料に混餌させた。本色素に曝露したラットは試験開始から18ヶ月後、対照群ラットは24ヶ月後に屠殺した。病理組織学的検査以外のパラメータは報告されなかった。病理組織学的検査において、自然発生の腫瘍(生殖器系、内分泌系、造血系、および消化管系の腫瘍)が散発的に認められたが、その発現頻度は本色素投与群間では同等であり、対照群とも同様であった。甲状腺において病理学的変化は認められなかった2) (Fukunishi et al., 1984)。

ラット 86週間反復投与毒性試験
100日齢のラット(試験群:雌雄各25匹、対照群:雌雄各50匹)に、本色素を0、0.5、1.0、2.0、4.0%で86週間混餌投与した。また、他の100日齢のラット群(雌雄各25匹)には、85週間にわたってゾンデにより本色素0、100、235、750、1500 mg/kg体重を週2回強制経口投与した。この投与後、2年にわたる試験の残りの期間は、基礎飼料で動物を飼育した。2%群および4%群に体重減少が認められた。タンパク結合ヨウ素(PBI)の上昇が認められたが、これは甲状腺機能障害が原因ではなく、PBI測定時の本色素による妨害が原因であった。T4ヨウ素濃度に影響はなかった。その他に血液学的差はみられず、貧血は認められなかった。肉眼において有害な病理学的所見はみられなかった。病理組織学的検査では、本色素に関連する異常は認められなかった2,3) (Hansen et al., 1973b)。

ラット 2年間反復投与毒性試験
Osborne-Mendel離乳ラット雌雄各12匹から成る群に、2年間にわたって本色素を0、0.5、1.0、2.0、または5.0%で混餌投与した。5%本色素投与群に成長抑制が認められた。脾臓の相対重量は、雄の全試験群および雌の5%投与群で低値であった。軽度盲腸腫脹が1%投与群で認められ、用量とともに顕著になったが、腫脹した盲腸の組織学的検査所見は正常であった。また、統計学的検査では、5%投与群で数例の下痢が認められたが、最高用量において臓器重量に有意な変化は認められず、本色素投与と関連する、その他の肉眼的所見または病理組織学的所見は認められなかった2,3) (Hansen et al., 1973b)。

ラット 29ヶ月間反復投与毒性試験
Charles River CD離乳ラット2群(70匹/性/群)に対して、本色素を0または4%でin utero曝露後約29ヶ月間混餌投与した。本色素の平均摂取量は、雄で2465 mg/kg体重/日であり、雌で3029 mg/kg体重/日であった。一般状態、行動、死亡率、摂餌量、血液学的検査、臨床化学的検査、尿検査、眼科的所見について、本色素に関連する一貫した有意な影響は認められなかった。投与群の平均体重(雌雄)は試験期間を通して対照群に比してわずかに低値になった。この差は、雄で3〜5週および122週、雌で0〜4週、6週、114週を除いて統計学的に有意であった。甲状腺の絶対および相対重量平均は、対照群の2倍以上であった。病理組織学的検査では、甲状腺過形成(濾胞細胞およびC細胞)の発生率は投与群雄で有意に高かった。投与群雄の甲状腺の濾胞腺腫発生率(16/68)は、対照群(0/69)に比して統計学的有意に高くなった。甲状腺C細胞がんおよび濾胞がんなどの悪性腫瘍の発生率は、投与群と対照群で同様であった2) (Brewer et al., 1982)。

ラット 30ヶ月間反復投与毒性試験
 Charles River CD離乳ラット雌雄各70匹から成る群に、本色素を0.1、0.5、1.0%で子宮内投与後30ヶ月間混餌投与した。同時対照群2群(70匹/性/群)には本色素を含まない飼料を投与した。本色素の平均摂取量は、雄で49、251、507 mg/kg体重/日、雌で61、307、642 mg/kg体重/日であった。子宮内投与試験相において、本色素に関連する一貫した有意な影響は認められなかった。本試験でも、一般状態、行動、死亡率、摂餌量、血液学的検査、臨床化学的検査、尿検査、眼科的所見について、本色素関連の一貫した有意な影響は認められなかった。投与期間中、対照群および投与群の平均体重に有意差はみられなかった。肉眼で認められた病理学的変化は、本色素投与に起因しないと判断された。非腫瘍病変の発生率は、投与群と対照群において同様であった。良性甲状腺腫瘍(濾胞腺腫)の発生率は対照群では0/140であったのに対し、雌の1.0%投与群では6/68であり、統計学的に有意な上昇が認められた。投与群の悪性腫瘍発生率は対照群と同様であったsup>2) (Brewer et al., 1981)。

イヌ
イヌ 2年間反復投与毒性試験
雌雄各3匹のビーグル犬に本色素を0、0.5、1.0、2.01%で2年間混餌投与した。すべてのイヌは試験期間中生存した。肉眼および病理組織学的検査では、本色素投与に関連する病理学的変化は認められなかった2,3) (Hansen et al., 1973b)。

スナネズミ
スナネズミ 19ヶ月反復投与毒性試験
スナネズミ3群(雌雄各15匹/群)に対して、本色素を200、750、900 mg/kgで19ヶ月間混餌投与した(900 mg/kg群の動物には、最初の3ヶ月間、1200 mg/kg投与した)。対照群の構成は、雌雄各30匹であった。全投与群の雄のスナネズミに、体重減少が認められたが、雌では900 mg/kg群でのみに認められた。また、タンパク結合ヨウ素(PBI)上昇が認められたが、これはPBI測定時にみられる本色素による妨害が原因であった。その他の血液学的検査結果に差はみられなかった。肉眼的病理学的検査では異常は認められなかった。病理組織学的検査は実施されなかった2,3) (FDA, 1969)。

スナネズミ 97週間反復投与毒性試験
約6ヶ月齢の雄スナネズミ(Mongolian gerbil)20〜24匹の群に、ゾンデによって200、750、900 mg/kgの本色素(水に溶解)を97週間にわたって週2回強制経口投与し、対照群(雌雄各32匹)にはゾンデによって蒸留水のみを投与した。投与量を10 mL/kg体重とした。臨床毒性、死亡率、体重増加、血液学的検査、臓器重量、肉眼による病理学的検査、病理組織学的検査のような臨床検査パラメータについて、本色素に関連する有害な影響は認められなかった2) (Collins & Long, 1976)。

スナネズミ105週間反復投与毒性試験
約6ヶ月齢のスナネズミ(Mongolian gerbil)3群(雌雄各15〜16匹/群)に対して、本色素を1.0、2.0、4.0%で105週間混餌投与し、対照群(雌雄各31匹)には本色素非含有飼料を投与した。全投与群の動物は、対照群と比較して、統計学的有意な用量に依存した体重増加抑制を示した。全般的に、投与群ラットのヘマトクリットおよびヘモグロビン、白血球数および網状赤血球数にわずかな低下が認められ、有意な低下も散発的に認められた。心臓、肝臓、脾臓の相対重量は雌雄いずれにおいても2高用量群で有意に低値になった。投与群ラットの甲状腺には、用量と関連する濾胞肥大のような変化がみられ、中には局所的な過形成が認められた。病理組織学的検査では本色素に関連する影響は認められなかった2) (Collins & Long, 1976)。

ブタ
ブタ 14週間反復投与毒性試験
大型の白系ブタ4群(各体重約20 kgの雌雄各3匹/群)に対して、本色素を0、167、500、1500 mg/kg体重/日で14週間混餌投与した。投与群のブタでは、対照群に比して血清T4濃度の低下が認められた。全投与群のブタで、血清タンパク結合ヨウ素(PBI)濃度、タンパク非結合ヨウ素濃度、タンパク結合本色素濃度について、用量依存的な増加が認められた。甲状腺重量に用量依存的な増加が認められたが、対照群と比較した場合、その差は高用量群(500および1500 mg/kg体重/日)の雌ブタにおいてのみ統計学的に有意であった。投与群のブタにはいずれも甲状腺の病理学的変化は認められなかった2) (Butterworth et al., 1976b)。


遺伝毒性 (link to CCRIS),  (link to GENE-TOX)
微生物突然変異 (−)
染色体異常誘発試験 (−)
修復試験 (+)

復帰突然変異試験
本色素の変異原性について試験したところ、0.5 g/100 mLで、Escherichia coliに対して非常にわずかではあるが統計学的に有意な変異原性を示した。キサンチン分子そのものに原因があり、置換基は単にその作用を変えるのみであることが明らかになった2) (Luck et al., 1963、Luck & Rickerl, 1960)。

復帰突然変異試験
代謝活性有りおよび無しの状況下において1〜10,000 ?g/プレートの濃度でエームス試験を実施したところ、Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537およびTA1538において本色素の変異原性は認められなかった2) (Auletta et al., 1977、Bonin & Baker, 1980、Brown et al., 1975)。

復帰突然変異試験
最近実施されたその他いくつかの試験でも、同様に、エームス試験で陰性の結果が得られた2) (Tarjan & Kurti, 1982、Ishidate et al., 1984、Jaganath & Myth, 1984a、Muzzall & Cook, 1979)。

復帰突然変異試験
指標菌としてE. coli WP2 UVrAを用いたところ変異原性は認められなかった2) (Haveland-Smith & Combes, 1980)。

復帰突然変異試験
Salmonella typhimurium(TA1535、TA1537、TA1538、TA98、およびTA100)によるプレート法により、点変異誘発の有無について本色素を試験した。変異原性は認められなかった。フラビンモノヌクレオチドを活性混合物に添加する改良法でも、陰性の結果が得られた1) (Cameron et al., 1987)。

復帰突然変異試験
B.subtilis 17A/45T 株 2,4) (Kada et al., 1978)及びS.typhimurium TA 1535(250 μg/plate) 2,4)) (Brown et al., 1978)で変異原性陽性を示した。また、チャイニーズハムスターに対する小核形成試験(300μg/ml)で陽性を示した1,4) (Rogers et al., 1988)。

復帰突然変異試験
TA97a、TA98、TA100、TA102、およびTA104によるエームス試験では、ラット肝臓S9または盲腸の内容物(caecal-cell free extract)による代謝活性の有無にかかわらず、2 mg/プレートまでの濃度において、本色素は変異原性を示さなかった。comutagenであるハルマンおよびノルハルマンを加えても、S9の有無にかかわらず、変異原性はみられなかった。自然復帰頻度に用量に依存した抑制が認められた。修復欠損株(TA97a、TA98、およびTA100)に毒性(光毒性)が認められたが、修復能を有する株(TA102およびTA104)には認められなかった。本色素は、ベンゾ(a)ピレンおよびマイトマイシンCに抗変異原性を示したが、4-nitroquinoline-N-oxideおよびmethylmethanesulfonateには示さなかった1)(Lakdawalla & Netrawali, 1988a)。

Rec assay
宿主経由rec assay 2) (Kada et al., 1972)、およびSalmonella typhimurium TA98、TA100、TA1537を用いたマウスによる宿主経由試験において、本色素は不活性であった2)(Tarjan & Kurti, 1982)。

その他
マウス リンパ腫試験
マウスリンパ腫L5178Y TK+/-前進変異試験において、本色素は変異原性を示さず2) (Cifone & Myhr, 1984)、in vitroあるいはin vivoでラット胚細胞に細胞形質転換を誘発しない2) (Price et al., 1978)ことが確認された。

マウス リンパ腫試験
L5178Y TK+/-細胞によるマウスリンパ腫試験では、S9添加および無添加いずれの場合も、本色素は陽性であると報告された。高度毒性を示す濃度で認められる反応は、陽性対照であるethylmethanesulfonateの反応と同様であった1)(Cameron et al., 1987)。このような結果はLin & Brusickによる結果と対照的である1)(Lin & Brusick, 1986)。

マウス小核試験
本色素はマウス小核試験2) (Tarjan & Kurti, 1982、Ivett & Myhr, 1984)で不活性であった。ハムスター細胞を用いたin vitro染色体異常試験では作用が認められたが、これは、そのような結果が認められたときの高濃度の本色素(5 mg/L)の浸透作用が原因であった可能性がある2) (Ishidate et al., 1984)。

マウス小核試験
早期に発表されたマウスにおける小核試験を再評価した1) (Lin & Brusick, 1986)ところ、陽性反応は、低用量で認められているが(本色素24 mg/kg体重の腹腔内投与)、高用量では認められなかった(80および240 mg/kg体重)1)(Brusick, 1989)。

マウス小核試験
B6C3F1マウスに、本色素0、50、100、200 mg/kgを24時間ごとに繰り返し腹腔内投与して、末梢リンパ球の姉妹染色分体交換、及び骨髄多染性赤血球と末梢血網状球の小核を測定したところ、対照との差異を認めなかった。この結果は、本色素による発がんの機序が非遺伝毒性であるとの仮説が支持された4) (Zijno et al., 1994)。

DNA修復試験、ほうこう試験、プレート試験等
DNA修復試験、ほうこう試験(fluctuation)、およびプレート試験2) (Haveland-Smith et al., 1981)および酵母B234株2) (Sankaranarayanan & Murthy, 1979)およびD5株2) (Jaganath & Myhr, 1984b、Matula & Downie, 1984)を用いた有糸分裂遺伝子転換試験において、本色素は活性を示さなかった。酵母D7株を用いた有糸分裂遺伝子転換試験2) (Matula & Downie, 1984)および酵母XV185-14Cを用いた復帰変異原性試験で報告された陽性結果については疑問がある2) (Brusick, 1984)。

ラット DNA修復試験
in vitroにおいて、最高1 mMの本色素を添加してもラット肝細胞のDNA修復は誘発されず、in vivoでも、本色素200 mg/kg体重を経口投与したが、DNA修復は誘発されなかった1) (Kronbrust & Barfknecht, 1985)。

修復試験
報告によると、蛍光灯下でインキュベートしたところ、本色素は除去修復能を有するBacillus subtilis 168株の胞子形成多重遺伝子マイナス変異の発生を増加させた。この作用は除去修復欠損株her-9 (exc)株には認められなかった。本色素は両株に高度毒性を示した1) (Lakdawalla & Netrawali, 1988b)。

チャイニーズハムスター小核試験
V79チャイニーズハムスターの肺細胞を用いて本色素の遺伝毒性を試験した。200 μg/mLでコロニーの縮小が認められ、400 ?g/mLでは90%以上の細胞致死が認められた。本色素はV79細胞のHGPRTおよびNa+、K+、ATPアーゼ遺伝子座に対して変異原性を示さず、ラット肝細胞による活性の有無にかかわらず、姉妹染色分体変換の発生頻度を上昇させなかった。300 ?g/mLにおいて本色素は肝細胞無添加の状態で小核発生頻度を上昇させた。前期有糸分裂数の増加に起因する有糸分裂頻度の用量依存的な増加が認められた。このように、細胞毒性が十分認められる濃度においてのみ、遺伝毒性の増加が認められた1,4) (Rogers et al., 1988)。



がん原性 (link to CCRIS)
マウス
マウス がん原性試験
マウスについて長期混餌投与試験が行われた。マウス70匹に本色素を1%または2%で混餌投与した。試験期間に生き残ったマウスの数はわずかであり、確認された腫瘍数もわずかであったため、腫瘍形成への作用は、本色素に起因しないと考えられた2,3) (U.S. FDA, 1969)。

マウス 78週間がん原性試験
雌雄ICRマウスに2.5、1.25%検体添加飼料を78週間投与した実験で、有意の腫瘍発生を認めず、がん原性はないと判定された4) (井坂, 1979)。

マウス 18ヶ月間がん原性試験
体重27〜38 gの7週齢のICRマウス2群(雌雄各50匹/群)に対して、本色素を1.25あるいは2.5%で18ヶ月間混餌投与した。最初の20週間には、マウスに本色素含有固形飼料(cube diet)を投与し、その後は本色素を基礎粉末飼料に混合した。さらに6ヶ月間、試験群のすべての動物に本色素を含まない基礎飼料を投与した。その後、動物を屠殺し、剖検した。対照群の構成は雌雄各45匹であった。死亡率は、対照群よりも本色素投与群で高かった(2.5%投与群で約61%、1.25%投与群で59%、対照群で36%が死亡した)。体重増加には本色素摂取による有害な影響はみられなかった。両試験群の動物では、リンパ性白血病の発生率が高く、肺腺腫の散発的な発現が認められた。両病変の発現頻度は、本系統マウスでみられる自然発生率の範囲内であった。こうした結果から、本試験条件下において本色素はICRマウスに対して発がん性を示さないことが示唆された2) (Yoshii & Isaka, 1984)。

マウス 700日間がん原性試験
50〜100日齢の合計122匹の雌雄マウス(5系統の混合雑種)に、動物1匹につき本色素1 mg/日を混餌投与した。マウス168匹から成る陰性対照群、および?-アミノトルエンおよびジメチルアミノアゾベンゼンを投与した陽性対照群2群も試験に含めた。500日間の観察期間後に多数のマウスを屠殺し、残りのマウスを700日後に屠殺した。陽性対照群の動物には約200日後に肝腫瘍形成が認められた。本色素投与群における腫瘍発生率は、陰性対照と比較して有意に高くはなかった2-4)(Waterman & Lignac, 1958)。

マウス 24ヶ月間がん原性試験
CD1マウスに本色素0、0.3、1.0及び3.0%含有飼料を長期問摂取させる慢性毒性/発がん性試験を実施した。各群雌、雄、60匹を用い、最大24ヶ月まで投与した。生存率、血液学的所見及び一般外見所見に対する、本色素投与の影響は観察されなかった。また、発がん率に対する対照群との有意差も認められなかった。本試験における無影響量は、雄で3.0%(4,759mg/kg/日)、雌で1.0%(1,834mg kg/日)であった1,4) (Borzelleca et al., 1987)。

ラット
ラット がん原性試験
ラットに本色素0.8%水溶液を1ml ずつ1週間に2回の割合で皮下注射したが局所に肉腫を形成する傾向は認められなかった2-4) (Grasso et al., 1966) 。

ラット 300日間がん原性試験
20匹のラットに5% 液の1 m1を週1回注射したところ、 300日以上生存したのは7匹であったが、腫瘍発生は認められなかった2-4) (Umeda, 1956)。

ラット 78週間がん原性試験
雌雄F344ラットに、2.5、1.25%検体添加飼料を78週間投与した実験で、有意の腫瘍発生を認めず、 がん原性はないと判定された4) (福西, 1979)。

ラット 18ヶ月間がん原性試験
ラット雌雄各5匹に対して、本色素を4%で18ヶ月まで混餌投与した。腺胃および小腸に肉眼で着色が認められ、粒状の沈着物が胃、小腸、結腸に認められた。肝硬変が12ヶ月間生存していたラット4例のうち1例で認められた。20ヶ月以上観察した対照ラット50匹には腫瘍または肝硬変の発現は認められなかった2,3) (Willheim & Ivy, 1953)。

ラット 82週間がん原性試験
ラットに本品を82週間、週2回100、235、750及び1,500mg/kgを経口投与し、また一方84週間、0.5、1.0、2.0及び4.0%含む飼料で投与した。更にこれらの動物は普通飼料で2年目まで飼育した。成長の抑制が2.0及び4.0%群で見られ、 4.0%群では下痢も認められた。赤血球数、ヘマトクリット値、ヘモグロビン量、白血球数などの血液学的検査では変化が見られなかった。タンパク結合ヨウ素(PBI)値の増加が見られたが、本色素の投与を中断すれば16週後には正常に帰する。 これは甲状腺の機能障害とするよりも、 むしろPBIの測定時の本色素による干渉と思われる。剖検並びに病理細織学的検査で本色素によると思われる異常は認められなかった2-4)(Hansen et al., 1973)。

ラット 85週間がん原性試験
ラット20匹に5%本色素水溶液を596日間(85週間)にわたり毎週1 mL皮下(s.c.)注射した。投与した本色素の総量は動物1匹当たり2.65 gであった。ラット7匹が300日以上生存した。腫瘍は認められなかった2-4) (Umeda, 1956)。

ラット 97〜99週間がん原性試験
18匹のラットに本色素の2% 又は3% 液の1 mlを週1回、94〜99週皮下注射したが、注射局所及び他の部位に腫瘍発生を認められなかった3,4) (Nelson, 1953)。

ラット 2年間がん原性試験
離乳ラット24匹(雌雄各12匹)から成る群に、本色素を0、0.5、1.0、2.0、5.0%で2年間混餌投与した。5%投与群でわずかな成長抑 制が認められた。0.5%以上の本色素を投与した動物では、盲腸腫脹が認められたが、病理組織学的検査では腫脹した盲腸は組織学的に正常であった。ラットにおける試験の統計学的評価では、最高用量において臓器重量に有意な変化は認められなかった。5%投与群で数例の下痢が認められた。試験群の生存に差は認められなかった2,3) (FDA, 1969)。

ラット 2年間がん原性試験
ラット18匹に対して、2年間にわたり1匹当たり本色素12 mg含有の水溶液を週1回皮下注射した。注射部位あるいは身体の他の部位で腫瘍は認められなかった2-4) (Hansen et al., 1973b)。

イヌ
イヌ 2年間がん原性試験
ビーグル犬に本色素の0.5、1.0、2.0%添加飼料を2年間投与したが、 剖検並びに病理組織学的検査で本色素による影響は認められなかった2-4) (Hansen et al., 1973)。


生殖発生毒性 (link to DART)
ラット
ラット 生殖試験
バイオテスト研究所の報告によれば、1群雌20匹、雄10匹のラットに1.25、12.5、37.5及び125.0 mg/kgを摂餌させ3世代にわたる生殖試験を行った。受精率、同腹産仔数、生育力及び出生後の発達には異常を認めなかった。また1群15ないし19匹の妊娠ラットに25、85及び120 mg/kgを妊娠6日目より15日目まで傾向投与し20日目に屠殺した。母獣の体重、死亡率及び一般症状に変化は見られず、胎仔の死亡率、体重、外形及び内臓、骨格にも影響は見られなかった3,4) (FDA, 1974)。

ラット 生殖試験
Charles River CDラット(雌雄23〜25匹/群)から成る4群に、本色素を0、0.25、1.0、または4.0%で連続3世代にわたって混餌投与した。F0親ラットには各群の食餌を交配前に69日間投与した。試験では、妊娠期間中、全世代の1.0%投与群および4.0%投与群の母動物で、体重増加量平均の軽度(slight)〜中等度(moderate)の減少が認められた。授乳0、4、14、21日目に、全世代の4.0%投与群で、出生児平均体重の軽度〜中等度の減少が記録された。これらの減少は授乳21日目のみ統計学的に有意であった。いずれの世代においても、雌雄の生殖行動および各用量群の出生児の生存に対して、本色素に関連する一貫した影響は認められなかった2) (Albridge et al., 1981)。

ラット 生殖試験
成熟Sprague-Dawleyラットの雌雄18〜22組(体重200〜220 g)から成る群に対して、交配前2週間および交配期間中に本色素を0、0.25、0.5、または1.0%で混餌投与した。雌については混餌を妊娠および授乳期間中も続け、出生児には生後90〜100日に達するまで混餌を続けた。陽性対照群のラットには本色素を混餌投与せず、出生児に対して生後2〜10日にヒドロキシウレア50 mg/kgを連日注射した。2年後、1回目の試験と同じ用量群および各群同じ動物数で2回目の試験を行った。両試験において、体重および摂餌量、生殖に成功した雌について親動物を評価した。また、行動毒性と体重、摂餌量、身体的発育、および脳重量について、出生児を評価した。
本色素投与によって、親動物および出生児の体重および摂餌量に減少はみられなかった。1回目の試験において、本色素投与によって、0.5%投与群と1.0%投与群の離乳前出生児の死亡率が有意に増加したが、2回目の試験でそのような増加はみられなかった。いずれの試験においても、平均同腹児数に、本色素による悪影響はみられなかった。挙動的に、本色素は用量依存的な影響を示さず、それは2試験を通して同様であった。本試験から、本色素の最高1.0%の混餌投与は発育ラットに対して精神毒性を示すという証拠は得られなかったと結論された。2) (Vorhees et al., 1983)。

ラット 生殖試験
ラットを用い本色素を餌に混ぜ、F0への交配前投与及びF1への長期投与による慢性毒性/発がん性試験を実施した1)。即ち、交配前の2ヶ月間、雌、雄各60匹のラット(F0)に本色素を、それぞれ0、0.1、0.5、1.0及び4.0%含有する餌を摂取させた。上記処理後F0ラットの交配により得た雌、雄のF1ラット各群70匹を用いてF0同様に本色素の投与を、最大30ヶ月問実施した。
F0ラットにおける受精率、妊娠率、出産率、授乳及び仔の生存率に対する本色素投与による影響は観察されなかった。F1では、本色素4.0%投与群(3,029mg/kg)の雌で、平均体重が対照群に比して有意(p<0.01)に低かった以外、血液学的所見、尿検査及び生存日数に対し、本色素投与による影響は見られなかった。一方、4.0%投与群(2,464mg/kg/日)の雄では、甲状腺平均重量が、対照群44mgに比して、92mgと増加がみられ、甲状腺小胞肥大、過形成並びに状腺小胞腺腫の頻度の有意な増加がみられた。本研究における無影響量は、雄で0.5%(251mg/kg/日)、雌で1.0%(641 mg/kg/日) であった1,4) (Borzelleca et al., 1987)。


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
ラット
ラット 60日間反復投与毒性試験(甲状腺毒性)
雄のSprague-Dawleyラット160匹から成る3群に本色素を0.0、0.25、4.0%で混餌投与(0.0、147.1、2514.3 mg/kg体重/日に相当)した。試験前、および試験中には毎週、全試験動物の一般状態観察および体重・摂餌量測定を実施した。投与0、3、7、10、14、21、30、60日目に、1群につき20匹までの動物を剖検した。各屠殺時に、腹部大動脈から採血して得られた血清を調製し、ラジオイムノアッセイによってサイロトロピン(TSH)、チロキシン(T4)、3,5,3’-トリヨードサイロニン(T3)、3,3’,5’-トリヨードサイロニン(rT3)を測定した。各屠殺時に甲状腺および脳下垂体の重量を測定し、臓器重量/体重比を算出した。甲状腺および脳下垂体についてのみ、肉眼による剖検を実施した。
4.0%の本色素を混餌投与したラット3匹が試験第2週に自然死した。4.0%本色素混餌投与群のラットの体重は、試験第1週に減少した。試験中、その平均体重は対照値に比して有意に低値になった(1週目に13%、8週目に17%)。4.0%本色素を混餌投与したラットの摂餌量は1週目において対照値に比して有意に少なかったが、2週目以降は同様になった。この結果はおそらく、最初の2週間に起こった味の好みの問題に起因していた。4.0%本色素混餌投与群の雄の脳下垂体絶対重量は、投与7、10、14、21、60日目において対照値に比して統計学的有意に低値になった。
その差は、高用量群と対照群の体重差に起因すると判断された。4.0%本色素混餌投与群ラットの甲状腺/副甲状腺の絶対重量は、対照値に比して総じて低値であったが、その差はわずかであり、群間の体重差に起因すると考えられた。これら臓器の相対重量は21日目に(対照値に比して)有意に高値になった。それ以外において、相対重量はわずかに高値であったが、有意ではなかった。0.25%本色素混餌投与群ラットの甲状腺/副甲状腺の絶対重量および相対重量は、60日目に対照群に比して有意に低値であったが、それ以外では対照群と同様であった。甲状腺および脳下垂体の肉眼による剖検では、投与に関連する変化は認められなかった1) (Kelly & Daly, 1988)。

ラット 60日間反復投与毒性試験(甲状腺毒性)
ラットの血清ホルモン濃度測定から、次のことが示された。60日間の試験期間中に、対照ラットの血清TSH濃度に変化(わずかな上昇)が認められた。TSH濃度のベースライン値(0日目)は21、30、60日目の濃度に比して有意に低かった。0.25%群では、14、21、30および60日目の血清TSH濃度がベースライン値(0日目)に比して有意に高かった。対照群のTSH濃度と比較すると、21、30、60日目に有意な上昇が認められた。4.0%群のTSH濃度は、ベースライン値(0日目)および対応する全測定点の対照濃度よりも有意に高かった。
0.25%群と比較すると、4.0%群の血清TSH濃度は3、7、10、14日目に有意に高かった。0.25%群の血清T4濃度は10および14日目にベースライン値および対照値よりも高かったが、4.0%群のT4濃度は全測定点で高かった。さらに、4.0%群のT4濃度は、7、10、21、30、60日目に0.25%群よりも有意に高かった。0.25%群ラットの血清T3濃度は30日目に低かったことを除き、対照値と同様であった。4.0%群ラットの血清T3濃度はベースライン値(0日目)および対応する全測定点で対照値よりも有意に低かった。
さらに、血清T3濃度は3、10、14、21、30および60日目において0.25%群ラットの濃度に比して低かった。0.25%群では、血清rT3濃度は7、10、14、21、30、60日目にベースライン値(0日目)よりも高く、10、14、21日目に対照値よりも高かった。全測定点において、4.0%群の血清rT3濃度は、対照群および0.25%群よりも顕著に高かった。
以上の結果は、4%本色素混餌投与は、急速かつ持続的な血清TSH、T4、rT3濃度の上昇および同程度の血清T3濃度の低下をきたし、またこのような変化は0.25%の混餌投与でも発生するが、変化量は少ないことを示している。このような結果は、T4およびrT3の5’位脱ヨウ素化を本色素が阻害した結果であり、これにより、T4からのT3生成およびrT3の脱ヨウ素化が低下する1) (Braverman & DeVito, 1988)。

ラット 60日間反復投与毒性試験(甲状腺毒性)
雄のSprague-Dawleyラット80匹から成る3群に本色素を0.0、0.03、0.06、4.0%(0.0、17.5、35.8、2671.7 mg/kg体重/日に相当)で最高60日間混餌投与した。対照群(雄100匹)には標準的な試験動物用飼料を投与した。試験前、および試験中には毎週、全試験動物の一般状態観察および体重・摂餌量測定を実施した。ベースラインデータを測定するにあたり、対照ラット20匹をTSH、T4、T3、rT3のラジオイムノアッセイ用に放血させ、試験0日目の投与開始前に屠殺した。
追加の剖検実施は不定期であったため、7、21、30、60日目の各時期に各群20匹のラットを放血死させ、ラジオイムノアッセイ試料を得た。脳、脳下垂体、甲状腺の重量を測定し、全動物の臓器/体重比および臓器/脳重量比を算出した。全動物の甲状腺、脳下垂体、および脳について、肉眼による剖検を実施した。4%本色素混餌投与群では、試験1週間目に、おそらく食餌の嗜好に起因すると考えられる大幅な体重減少および摂餌量減少が認められ、その結果、試験期間中ラットの体重は統計学的有意に低値となった。
4%本色素混餌投与群の甲状腺/副甲状腺の絶対重量および相対重量(臓器重量/体重の相対比)は、21、30、60日目に高値となった。4%本色素混餌投与群ラットの脳下垂体の絶対重量および相対重量(臓器/脳重量比)は、7日目において対照値に比して低値となった。0.03%群では、甲状腺/副甲状腺の絶対重量および相対重量は21日目および30日目に対応する対照値に比して高値となったが、7日目および60日目では対照値と同様であった。このように、低用量では一貫して用量に依存する絶対的および相対的な臓器重量変化は認められなかった。肉眼による甲状腺、脳下垂体および脳の剖検では、投与に関連する変化は認められなかった1) (Kelly & Daly, 1989)。

ラット 60日間反復投与毒性試験(甲状腺毒性)
0.03%および0.06%群では、60日間の投与期間において血清TSH、T4、T3、rT3濃度に有意な変化は認められなかった。4.0%群のTSH濃度は、21、30、60日目に対応する対照値に比して有意に高くなった。7日後に認められた41%の増加は対照値と比較して統計学的に有意ではなかった。血清TSH濃度は21、30、60日目に0.03%群の値よりも高く、30日目に0.06%群よりも高かった。4.0%群では、血清T4濃度は投与期間中において対照値よりもわずかに高かった。しかし、この増加は30日目のみ統計学的に有意であった。4.0%群ラットの血清T3濃度は、全測定点において対照群値に比して有意に低かった。全測定点において、対照群または0.03%群および0.06%群のラットと比較して、4.0%群ラットの血清rT3濃度は顕著に高かった1) (Braverman & DeVito, 1989)。

ラット 27週間反復投与毒性試験(甲状腺毒性)
Primate Research Instituteの27週間毒性試験(「長期試験」のCouch et al., 1983の試験を参照)で得られた甲状腺を電子顕微鏡による超微形態的検査に供した。報告によると、本色素を投与したラットでは、合成および分泌小器官(粗い小胞体、ゴルジ体、および長い微小絨毛)の発達に伴う濾胞細胞肥大が認められた。これらの変化は、血清T4濃度上昇に伴い、濾胞細胞が軽度〜中等度の刺激を受けていることを示すと解釈された。
本色素を投与したラットのリソゾーム構造は、対照群と比較して大型、不規則な形状で、電子密度が高く、コロイド小滴の境界膜と密着あるいは癒着しているようであり、その過程は甲状腺ホルモン分泌と関連があるとされた。甲状腺刺激、および濾胞細胞におけるコロイド小滴とリソゾームの蓄積の程度は、市販本色素を投与した雌ラットよりも雄ラットの方が大きいと報告された。長期甲状腺刺激の超微形態的所見は、ヨウ素を添加した精製本色素を投与したラットと比較して、市販本色素を投与したラットの方が大きいと考えられた2) (Capen, sine data a)。

ラット 7ヶ月間反復投与毒性試験(甲状腺毒性)
甲状腺機能に関する7ヶ月間試験において本色素を0、0.25、0.5または4.0%で混餌投与したラットの甲状腺を、電子顕微鏡検査に供した。報告によると、本色素を混餌投与したラットの甲状腺濾胞細胞には、合成・分泌作用による用量依存的な刺激があることを示す超微形態的特徴がみられた。その特徴は、4%本色素混餌投与群のラットで最も顕著であり、分泌小器官の発達に伴う濾胞細胞の肥大として認められた。このような特徴は、長期のTSH刺激に対する反応と概ね一致すると考えられた。
超微形態的変化は、最終月のT3投与によって逆転した。投与ラットの濾胞細胞で認められた多数のリソゾーム様構造物の用量依存的な蓄積は、TSH刺激のみへの予想された反応ではないと考えられた。報告では、本色素0.25および0.5%混餌投与群のラットにも、濾胞細胞刺激およびリソゾーム様構造物蓄積に、顕著さは劣るが同様の変化が認められた2) (Capen, sine data b)。


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
ヒト 3週間摂取試験
ヒト被験者5人(21〜35歳の男性4人および女性1人)は、本色素含有の食事を3週間摂取した。含有量を5、10、25 mg/日と毎週増量させた。本色素用量を毎週増量するに従って、総血清中ヨウ素およびタンパク結合ヨウ素(PBI)は緩慢かつわずかに増加した。試験の3週間において、血清T4、T3、TSH、エリスロシン、尿中ヨウ素、エリスロシン排泄量、およびT3レジン摂取量に関するその他の試験結果に、変化はみられなかった。投与期間中にみられた血清中PBIおよび総血清中ヨウ素の増加は、エリスロシンとして摂取されたヨウ素の一部が消化管から吸収されることを示している。血清TSH、T4、T3濃度に変化が無かったことから、5、10、25 mg/日と毎週増量する3週間の本色素投与期間中、甲状腺機能および甲状腺制御機序は本色素による影響を受けなかったと考えられた2) (Ingbar et al., 1983)。

ヒト 体内動態試験
ヒト被験者に131I標識本色素75〜80 mgをミルクセーキまたはレモネードに混合して1回投与した。甲状腺による131I取り込みを防ぐために被験者は毎日ヨウ化カリウムの飽和水溶液5滴を摂取した。全身の放射能を計測し、すべての便および尿の放射活性を調べた。毎日採血した血液試料についても総血清131IおよびT4とT3を測定した。
被験者4人において便排泄された131Iはほぼ100%になった。被験者2人で達成された回収率は低かった(80%および90%)が、全身放射能計測値、尿中131I、または血清中131Iに未回収の放射活性が認められなかったことから、これはおそらく回収が不完全であったためであると考えられた。いずれの被験者でも、48時間における標識含有尿排泄は投与量の0.38%を超えず、48時間後の尿の放射能計測値は背景値と同様であった。全身放射能計測値から、131I標識本色素は急速かつほぼ完全に消失し、7日後の残留量は投与量の1%未満であることが示された。わずかな残留活性は投与7〜14日後に急激に低下し、その半減期は平均8.4?2.1日であった。この緩慢な減少相をゼロ時間に挿入したところ、初期の身体残留量は投与量の1.2?0.4%と算出された。わずかな量の131Iが血清中に認められたが、血清1 L中で用量の0.013%を超えない量であった。いずれの試験でも、本色素摂取後に血清T4およびT3濃度は有意に変化しなかった。
以上の試験から、摂取した本色素のうちほんの一部がヒト消化管から吸収され、試験した単回経口投与の用量において、本色素は甲状腺ホルモン濃度に影響を与えないことが示された2) (Ingbar et al., 1984b)。


引用文献
1) WHO Food Additive Series No.28 Erythrosine  1991  (link to WHO DB)
2) WHO Food Additive Series No.21 Erythrosine  1986  (link to WHO DB)
3) WHO Food Additive Series No.6 Erythrosine  1974  (link to WHO DB)
4) 第7版食品添加物公定書解説書


   

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