日本医薬品添加剤協会 |
和名 炭酸プロピレン 英文名 Propylene Carbonate CAS 108-32-7 (link to ChemIDplus) 別名 プロピレンカーボネート(110340)、Carbonic acid, cyclic propylene ester、cyclic methylethylene carbonate、cyclic propylene carbonate、(±)-4-methyl-1,3-dioxolane-2-one、1,2-propanediol cyclic carbonate、1,2-propylene carbonate、propylene glycol cyclic carbonate、4-methyl-2-oxo-1,3-dioxolane 収載公定書 薬添規(JPE2018) USP/NF(27/22) 用途 可溶(化)剤,基剤,溶剤,溶解補助剤 ■単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
雌雄Sprague Dawleyラット5匹に未希釈炭酸プロピレンを5 g/kgの用量で強制経口投与した。動物を投与後14日間観察した。単回投与直後に流涎がみられた。死亡動物はなく、死後剖検で病変は観察されなかった。 1群5匹の非断餌Carworth-Wistarラットに炭酸プロピレンを対数用量で経口チューブにより経口投与した。この単回経口投与後14日間動物を観察した。Thompson およびWeilの方法を用いてLD50および信頼区間を算出した。急性経口LD50は29.1 g/kgであった。HodgeおよびSternerの毒性分類法によると、炭酸プロピレンは経口投与でラットに「比較的無害」であった。 雄の白色マウスにおける炭酸プロピレン単回経口投与時のLD50は20.7 g/kgであった。詳細は報告されていない。 20%炭酸プロピレンを含有する試験的腋下スティックの急性経口毒性をSprague Dawleyラット10匹(雄5匹、雌5匹)を用いて評価した。連邦規則集タイトル16パート1500.3 に記載されている方法を用いて試験した。製品5.0 g/kgを25%w/vのとうもろこし油混合液として単回経口投与した。動物を投与後14日間観察した。投与直後の4時間に雄で「鎮静」および(または)「呼吸困難」がみられ、雄5匹中1匹は死亡した。生存雄4匹は2日から14日まで正常であった。雌はすべて生存し、14日の観察期間を通じて正常であった。すべての生存動物は正常な体重増加を示し、剖検でいずれの動物にも肉眼的病変は観察されなかった。 炭酸プロピレンを各2%含有するクリーム頬紅および発汗抑制剤の急性経口毒性を評価した。断餌Harlan Wistarラット(雌雄各5匹)にクリーム頬紅5 g/kgを25%トウモロコシ油懸濁液として単回経口投与した。投与3時間後に身づくろいの減少および赤色軟便がみられ、3日間持続した。7日の試験終了時に雄ラットの平均体重は25 g減少したが、雌は平均37 g増加した。発汗抑制剤は10 mL/kgを白色ラット10匹(雌雄各5匹)に胃ゾンデで単回経口投与した。一般症状はラットで個体差があったが、いずれも炭酸プロピレンに関連した症状は認められなかった。消化管のガス膨満とこれに伴う暗色粘液内容物が雄2匹で観察された。3番目の雄に腎臓うっ血がみられた。雌には剖検で病変はみられなかった。動物はすべて生存し、14日の試験期間に十分な体重増加を示した。発汗抑制剤の経口LD50は10 mL/kgより大きかった。 炭酸プロピレンを含有する3種のリップ製品の急性経口毒性をSprague Dawleyラットで試験した。3種の試験材料はリップスリッカー(slicker)2種(それぞれ炭酸プロピレン約0.54%含有)およびリップグロス1種であった。リップグロスは鉱油に50%の濃度で混合して試験し、リップグロス/鉱油混合液は約0.25%の炭酸プロピレンを含有した。1群10匹の成熟ラット(雄5匹、雌5匹)に各試験材料を単回経口投与した。リップスリッカー2種は20 mL/kgの用量で強制投与し、リップグロス/鉱油混合液は15 g/kgの用量で投与した。動物30匹を14日間観察した。死亡動物または毒性作用は観察されなかった。 急性皮膚毒性 未希釈炭酸プロピレンを2 mg/kgの用量で白色ウサギ雄5匹および雌5匹の擦過皮膚に単回塗布した。投与部位をガーゼおよびラバーダムで覆って試験材料の蒸散を遅らせた。24時間後に包帯を除き、その後ウサギを14日間観察した。2日目にすべての動物に軽度皮膚紅斑が認められたが、3日目にはすべての投与部位は正常な外観を呈した。死亡動物はなく、すべての動物は正常な体重増加を示した。剖検で病変は観察されなかった。 炭酸プロピレンの急性皮膚LD50はウサギで5 g/kgより大きかった。試験法の詳細は報告されていない。 炭酸プロピレンの急性皮膚毒性および皮膚透過性をDraizeらが報告した24時間プラスティック・スリーブ法で評価した。体重2.5〜3.5 kgの雄ニュージーランド白色ウサギ4匹のそれぞれ刈毛した皮膚に未希釈材料を不透過性プラスティック・スリーブ下に塗布した。体表面積の約10分の1を試験材料と接触させた。しかしながら、20 mL/kgを超える用量では皮膚との接触を維持できなかった。24時間後に試験部位のプラスティック・スリーブを除いた。この後、動物の死亡を14日間観察した。急性皮膚LD50は20 mL/kgより大きかった。 第2の試験で、プラスティック・バインダー下で試験材料を塗布する同様の方法を用いて、2.0%炭酸プロピレンを含有する発汗抑制剤の皮膚毒性を評価した。雄2匹および雌2匹の白色ウサギの刈毛した無傷皮膚を10 mL/kgの未希釈製品に24時間単回曝露すると、「軽度抑うつ」が発現したが、死亡はみられなかった。「曝露期間の初期体重減少」後に、すべての動物は「十分な」体重増加を示した。ウサギ1匹に「軽度努力性呼吸」が発現し、投与後3日まで持続した。ウサギ2匹で投与後5および6日に運動失調が観察された。発汗抑制剤の急性皮膚LD50は10 mL/kgより大きかった。 20%炭酸プロピレンを含有する試験的腋下スティックの急性皮膚毒性を評価した。連邦規則集タイトル16パート1500.40に記載されている方法を用いて試験した。白色ウサギ10匹の刈毛した背部の皮膚に製品2.0 g/kgを単回投与した。動物5匹(雄2匹および雌3匹)の皮膚は擦過したが、残りの動物(雄3匹および雌2匹)の皮膚は無傷のままとした。投与部位をガーゼパッチで覆って、不透過性プラスティック・スリーブによって体に固定した。24時間後にガーゼ包帯を除いた。すべての動物は生存し、14日の観察期間を通じて「正常な外観」を示した。軽微から軽度の皮膚紅斑がパッチ除去時に観察され、雄1匹および雌1匹で試験の最後の7日間に軽度体重減少がみられた。臓器の剖検で雄1匹および雌1匹に「陥凹腎臓(pitted kidney)」並びに別の雄1匹の腎臓に「限局性出血部位」が認められた。残りの7匹の動物で剖検病変は認められなかった。 ■反復投与毒性 (link to TOXLINE) 3.5、10.5および17.5%炭酸プロピレン含有生理食塩液の亜慢性皮膚毒性をKuramotoらが評価した。各試験材料をWistarラットの刈毛した背部皮膚に毎日、週6日、1ヵ月間塗布した。対照群には10%生理食塩液を同様に塗布した。皮膚試料の検鏡所見として、高用量2群のラットの投与部位に角化亢進および基底細胞数の増加がみられた。唾液腺、胃および小腸の剖検並びに脳、肺、心臓、腎臓、脾臓、副腎、胃、表皮、小腸、精巣、甲状腺および精管(sperm duct)の検鏡で、投与ラットに曝露に関連した影響は認められなかった。投与動物と対照動物で行動、摂餌量および飲水量、体重増加、臓器重量、血液学的検査値(ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数および白血球数)、血液化学パラメータ(アルカリホスフェターゼ、糖、血清蛋白、血清トランスアミナーゼ)および尿検査値(尿量、pH、糖)に関して差はみられなかった。 1000 mg/kgの用量の炭酸プロピレンのウサギへの毎日2週間の亜慢性皮膚塗布により「薬理学的毒性または病理変化は発現しなかった。」この試験のこれ以上の詳細は報告されていない。 5種の各「有機修飾クレイ・マスターゲル」の皮膚累積刺激性をフランス共和国公報に記載されている方法の修正法によって試験した。炭酸プロピレンを各3%(w/w)含有するクレイ・マスターゲルの組成は既述のとおりである(眼刺激性の項参照)。ニュージーランドウサギ雄3匹の刈毛した側腹部に未希釈試験材料1日量2 mLを週5日、6週間塗布した。試験物質を手で皮膚に均一に広げた後、皮膚を30秒間軽くマッサージして材料が「確実に最大浸透する」ようにした。過剰な材料はガーゼで除いた。投与皮膚の紅斑、浮腫、肥厚、乾燥および発毛を毎日観察した。体重は毎週記録した。6週後に、各動物の投与皮膚から2つの生検試料を採取した。0(皮膚刺激性なし)から8(重度皮膚刺激性)のスケールを用いて「平均最大刺激指数」を計算した。スコアは1.67〜2.67で、試験材料は白色ウサギの皮膚に「軽度」から「中等度」の刺激性があることを示している。投与皮膚の剖検および検鏡に基づき、試験医師は試験材料について、「忍容性は比較的良好」であるか、または「軽度不耐性」を起こすと結論した。 ■遺伝毒性
■がん原性 該当文献なし ■生殖発生毒性 該当文献なし ■局所刺激性 眼刺激性 雄3匹、雌3匹の白色ウサギの各右眼に未希釈炭酸プロピレン(0.1 mL、pH 8.82)を滴下注入した。この後、Draizeらの方法に従って眼刺激性を評価した。1、24、48、72時間後および7日後の平均スコアはそれぞれ12.5、9.8、5.1、4.8および0.0で、刺激性はごく軽微であることを示している。試験したウサギ6匹中、5匹は結膜のみの刺激性で、1匹は角膜、虹彩および結膜に刺激性がみられた。 10.5%、17.5%および100%炭酸プロピレンの眼刺激作用を3群のウサギについて評価した。各3匹のウサギ(濃度あたり3匹)の片眼の結膜嚢にいずれかの試験材料を一滴注入した。他眼は無投与対照とした。毎日連続14日間滴下注入した。100%炭酸プロピレン投与群のウサギ3匹中2匹で7日までに黄色眼脂がみられたが、他の化学的誘発所見は観察されなかった。低濃度の2群の炭酸プロピレン投与ウサギ6匹には眼刺激性は認められなかった。 第2の試験で、CarpenterとSmythが報告した方法で、この化粧品成分による眼障害を評価した。炭酸プロピレン0.5 mLの単回注入によりウサギ眼球に中等度刺激性がみられた。 炭酸プロピレン0.5 mLをウサギ眼球の結膜嚢内に注入すると、24時間以内に結膜に著明紅斑、強膜に血管新生並びに眼瞼および瞬膜に浮腫が生じた。7日目までにすべての眼球は正常に戻った。 炭酸プロピレンを各3%(w/w)含有する5種の「有機修飾クレイ・マスターゲル」の眼刺激性を評価した*。試験方法は、フランス共和国公報に記載されている方法を修正して使用した。ニュージーランド雄ウサギ各6匹の右眼の結膜嚢内に未希釈試験材料0.1 mLを単回注入し、各動物の左眼は無投与対照とした。投与眼の水洗浄は行わなかった。5種の試験材料のそれぞれにつき、試験あたり6匹の動物を使用した(試験材料、試験あたり6匹)。注入の1時間後および1、2、3、4および7日後に眼球の結膜、虹彩および角膜病変を検査した。KayとCalandraの方法に従って、刺激性を0(刺激性なし)から110(著明刺激性)のスケールでスコアした。スコアは8.5から17.17の範囲であり、これらの試験材料はウサギ眼球に刺激性があるか、「軽度」刺激性があることを示している。 炭酸プロピレンを含有する化粧品の眼刺激性を異なる8試験で検討した。8試験のうち3試験で、頬紅クリーム1種(2%炭酸プロピレン)およびリップスリッカー2種(それぞれ0.54%炭酸プロピレン含有)を白色ウサギ6匹の群を用いて評価した。片側の眼球(ウサギ6匹/製品)に製品0.1 mLを単回注入した。曝露眼の後処置は行わず、無曝露眼を無投与対照とした。曝露後ウサギを3〜7日間毎日観察した。頬紅クリーム(2%炭酸プロピレン)の投与1時間後に軽度結膜刺激性が認められた。しかしながら、この刺激性は24時間後の評価時までに消散した。角膜および虹彩には刺激症状はみられなかった。2種のリップスリッカー(0.54%炭酸プロピレン)のうち1種でもウサギ1匹で結膜刺激性が発現した。この刺激性は24時間後の評価時点で観察されたが、48時間後の判定時までには消失していた。第2のリップスリッカー(0.54%炭酸プロピレン)曝露後には眼刺激性は観察されなかった。 第4の試験で、炭酸プロピレン0.51%を含有するリップグロス0.1gをニュージーランド雌ウサギ6匹の各片眼の結膜嚢内に注入した。曝露眼のうち3眼は投与4秒後に塩化ナトリウム水溶液で洗い、曝露した他の3眼は洗浄しなかった。無曝露眼を対照とした。投与24、48および72時間後にウサギを観察した。眼刺激性は認められなかった。 8試験の第5の試験で、炭酸プロピレン1.85%を含有するアイライナー0.1 mLをニュージーランド雌ウサギ9匹の各片眼に注入した。ウサギ9匹中3匹の眼は注入後洗浄しなかった。第2群のウサギ3匹の眼は投与2秒後に塩化ナトリウム水溶液で洗い、第3群のウサギ3匹の眼は製品曝露4秒後に同様に洗浄した。無曝露眼を無投与対照とした。刺激性を投与24、48および72時間後に判定した。炭酸プロピレン1.85%を含有するアイライナーは眼刺激性を起こさなかった。 第6の試験では、連邦規則集タイトル16パート1500.42に記載されている方法を用いて、炭酸プロピレンを20%含有する試験的腋下スティックの眼刺激性を評価した。製品0.1 gを白色ウサギ9匹の各片眼の結膜嚢内に単回注入した。無曝露眼を対照とした。ウサギ9匹中6匹は注入後の洗浄は行わず、残りの3匹は製品曝露30秒後に投与眼を水(1000 mL/1分)で洗った。注入1時間後並びに1、2、3および7日後に投与眼を観察した。虹彩または角膜に病変は観察されなかった。すべてのウサギの結膜に軽微刺激性が認められた。しかしながら、この刺激性の重症度は通常7日で低下、また水で洗浄するととともに低下した。無洗浄眼の平均眼刺激性スコアは、1時間後、1、2、3および7日後にそれぞれ9.7、7.7、4.3、3.0および2.7であった。洗浄眼の同時点の平均眼刺激性スコアは、それぞれ4.0、2.0、2.0、2.0および0.7であった。試験医師は、本品は眼刺激性が「ないとは言えない」と結論した。 8試験の第7の試験で、Draizeの方法を用いて炭酸プロピレンを2.0%および1.67%含有する2種の発汗抑制剤を評価した。試験した各発汗抑制剤について、製品0.1 mLをニュージーランドウサギ10匹の各片眼に単回注入した。投与した10眼中5眼は発汗抑制剤の注入後に水で洗わず、残りの5眼は試験材料の注入4秒後に水で洗った。無曝露眼を対照とした。2種の発汗抑制剤のそれぞれに対する眼球反応は7日の観察期間中同様であった。水洗浄していないウサギでは注入3〜4日後まで軽微結膜刺激性が観察された。角膜および虹彩の軽微刺激性もみられたが、この刺激性はいずれの例でも48時間の判定時点までに消失した。水洗浄ウサギの結膜および虹彩刺激性は軽微であった。結膜刺激性は投与後3日以上は持続せず、虹彩刺激性は投与後1時間以上持続しなかった。水洗浄ウサギに角膜病変は認められなかった。 吸入 Smythらは用量設定試験で、炭酸プロピレンの「濃縮蒸気」を8時間吸入させてもラット6匹は14日の観察期間中に死亡しなかったと報告した。この試験の炭酸プロピレンの蒸気濃度は報告されていない。 イヌ、モルモットおよびラットで吸入試験を実施し、動物を2.8 mg/Lの濃度で炭酸プロピレンのエアゾールに1日6時間、週5日、21日間曝露した。ラットにおいて鼻漏および下痢が発現した。他に毒性的影響は発現しなかった。 筋刺激性 炭酸プロピレンの組織刺激性をニワトリ胸筋で試験した。炭酸プロピレン0.5 mLを7〜8週齢の雄Hubbard雑種ニワトリ6匹の右側および左側胸筋内に0.5インチの深さに注入した。単回注入には20ゲージ針を使用した。注入1、3および7日後に2匹を屠殺して剖検し、注射部位の病変を評価した。試験部位の組織刺激性を1(視覚的組織障害または変色なし)から5(壊死)までのスケールを用いて評価した。各動物の右側および左側胸筋のスコアは5であり、組織壊死を意味していた。投与部位の組織内に試験材料は認められなかった。 皮下毒性 1群10匹のdd-系雄マウスに9.6〜20 mL/kgの用量範囲の炭酸プロピレンを単回皮下投与した。雄Wistarラットに同様に6.7〜20 mL/kgの用量範囲の炭酸プロピレンを単回皮下投与した。両動物を投与後72時間観察すると、「全般的に活動性低下が観察された。」皮下投与LD50値はマウスで15.8 mL/kgおよびラットで11.1 mL/kgであった。 皮膚刺激性 未希釈炭酸プロピレン(pH 8.8)を白色ウサギ各6匹(雄3匹および雌3匹)の無傷および擦過、刈毛皮膚に塗布した。投与24および72時間後に皮膚反応を評価した。24時間後の評価時に極軽度から明確な紅斑および軽微浮腫が認められた。72時間後にはすべての投与部位は正常であった。皮膚一時刺激指数は0.2(最大=8.0)であり、軽度皮膚刺激性を示している。 炭酸プロピレンの刺激性を白色ウサギ5匹の刈毛皮膚に局所塗布して評価した。未希釈試験材料0.01 mLの塗布で24時間以内に軽度皮膚刺激が生じた。 炭酸プロピレンを各3%(w/w)含有する5種の「有機修飾クレイ・マスターゲル」の皮膚刺激性を評価した。クレイ・マスターゲルの組成については既に記述した(眼刺激性の項参照)。フランス共和国公報に記載されている方法を修正して皮膚刺激試験を行った。未希釈試験材料0.5 mLを含む開放および(または)閉鎖パッチをニュージーランド雄ウサギの擦過および無傷の刈毛皮膚に貼付した。各試験材料につき、試験あたり6匹の動物を使用した(試験材料、試験あたり6匹)。皮膚に24時間接触させた後、パッチを除いて試験部位の紅斑および浮腫を評価した。試験物質の投与72時間後に2回目の評価を行った。皮膚刺激性を0(刺激性なし)から8(重度刺激性あり)のスケールで評価した。各5種の試験物質の「皮膚一時刺激指数」は0〜3.25の範囲にあり、5種の試験物質は白色ウサギの皮膚に刺激性がないか、「軽度」刺激性あるいは「中等度」刺激性があることを示している。 別の7試験で、炭酸プロピレン0.51〜20%を含む化粧品でウサギに軽度から中等度の皮膚刺激性が認められた。これらの試験を以下に説明する。 連邦規則集タイトル16パート1500.41に記載されている方法を用いて、炭酸プロピレンを20%含有する試験的腋下スティックの皮膚刺激性を評価した。製品を白色ウサギ6匹のそれぞれの擦過および無傷皮膚に投与した。投与部位はガーゼパッチで覆い、ウサギの体幹周囲に不透過性プラスティック・スリーブを巻いて動物に固定した。24時間後にガーゼ包帯を除き、投与24および72時間後に投与部位の紅斑および浮腫を評価した。ウサギ6匹中4匹で軽度紅斑がみられ、6匹中1匹で軽度浮腫がみられた。腋下スティックの皮膚一時刺激指数は0.46であり、軽度刺激性が認められた。 第2の試験で、炭酸プロピレン2.0%を含有する頬紅クリーム(0.5 mL)を白色ウサギ3匹の剃毛背部に毎日4日間塗布した。7日の観察期間の6日と7日に軽度浮腫および脱水が観察された。0(刺激性なし)から8.0(腐食性)のスケールで評価した「皮膚刺激指数」は0.3であり、軽度刺激性が認められた。 第3の試験で、2%炭酸プロピレンを含有する発汗抑制剤をニュージーランドウサギ4匹の刈毛した無傷皮膚に「プラスティック・バインダー」下で24時間塗布した。初期皮膚反応として軽度から中等度紅斑とこれに伴う軽度浮腫がみられた。浮腫は投与後5日までに、紅斑は6日までに完全に消退した。すべての動物で5日目に軽度から中等度の落屑が発現し、投与後12日まで持続した。 第4および第5の試験で、2%炭酸プロピレンを含有する発汗抑制剤および1.67%炭酸プロピレンを含有する発汗抑制剤をそれぞれ評価した。各試験で、ニュージーランドウサギ4匹の刈毛した皮膚に製剤を密封包帯下で24時間塗布した。擦過皮膚部位および無傷皮膚部位とも0.5 mLを投与した。刺激をDraizeらの方法に従って、0(刺激性なし)から8.0(腐食性)のスケールで評点した。2%炭酸プロピレン含有発汗抑制剤の一次皮膚刺激指数は0.94であり、もう一方の1.67%炭酸プロピレン含有発汗抑制剤では0.88で、いずれの場合も軽度刺激性が認められた。 第6および第7の試験で、それぞれ0.54%炭酸プロピレンを含有するリップスリッカーおよび0.51%炭酸プロピレンを含有するリップグロスの皮膚刺激性を評価した。各リップ製品を0.5 mLまたは0.5 gの1日量でニュージーランド雌ウサギ6匹の刈毛した皮膚に3日間塗布した。各塗布の際には開放パッチを使用した。リップグロスで24時間の評価時にウサギ2匹の皮膚に軽度紅斑がみられたが、48時間の評価時点では両動物に刺激性は認められなかった。同様に、リップスリッカーで24および48時間の評価時にウサギ2匹に軽度紅斑が観察されたが、72時間の時点ではこの刺激症状は消退していた。 ■その他の毒性 依存性 該当文献なし。 抗原性 該当文献なし。 ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) 臨床試験で、未希釈炭酸プロピレンで中等度の皮膚刺激性がみられたが、5%および10%炭酸プロピレン水溶液では皮膚刺激性または感作性は認められなかった。20%炭酸プロピレンを含有するエタノール溶液で被験者に軽微から中等度の皮膚刺激性が発現した。炭酸プロピレンを0.54〜20%含有する化粧品またはゲルには基本的に感作性はなく、せいぜい、ヒト皮膚に中等度刺激性を示す程度であった。炭酸プロピレンを1.51〜20%含有する製品には一般的に光毒性および光感作性は認められなかった。しかしながら、20%炭酸プロピレンを含有する1製品で、被験者25例中1例で低レベルの光アレルギー反応が生じた可能性がある。未希釈炭酸プロピレンの皮膚刺激性を白人男女大学生5例のグループについて試験した。試験材料(100μL)を布ディスクに付け、水透過性の非密封テープで乱切皮膚に貼付した。炭酸プロピレンは1日1回3日間投与した。判定は24時間毎に行ったが、72時間の判定(ディスク除去後30分)をスコアの計算に使用した。皮膚反応は、0(刺激性なし)から4(融合した重度紅斑で、時に浮腫、壊死または水胞形成を伴う)までの5点スケールで判定した。72時間の時点の各被験者の平均スコアは1.5〜2.4の範囲にあり、中等度の皮膚刺激性を示した。 2群の被験者について5または10重量%の炭酸プロピレンを含有する水溶液で反復傷害パッチテストを行った時、皮膚刺激性、疲労または感作性は観察されなかった。この試験法は被験者あたり15の密封パッチを必要とした。被験者50例を各濃度で試験した。それ以上の試験法の詳細は報告されていない。 26例の被験者について20%炭酸プロピレンをそれぞれ含有する試験的腋下スティックおよびエタノール溶液の累積刺激性を評価した。投与前に、試験材料(0.2 gまたは0.2 mL)をパッチ上に30分間のせて揮発物質を蒸発させた。パッチを毎日(月〜金曜日)背部皮膚に計21回投与した。腋下スティックを投与した被験者に「軽微」または「均一」紅斑(大部分の被験者)から「明赤色」紅斑(被験者3例)までの皮膚反応がみられた。また、皮膚の乾燥、色素沈着過度、軽度浮腫および小水疱が少数被験者で観察された。12例の被験者はエタノール-炭酸プロピレン液に皮膚反応を示した。この12例の反応者のうち、11例が「軽微」皮膚紅斑で、1例は「明赤色」紅斑であった。また、この被験者12例に時に色素沈着過度および乾燥もみられた。1例は両材料に「多少爆発反応パターン」を示すと認められ、「angry-back症候群」(または「前感作」反応)の可能性が示唆された。試験的腋下スティックおよびエタノール-炭酸プロピレン液の「累積刺激性」評点は、最大可能スコア2184(被験者26例×21日×最大刺激スコア4)のうち、それぞれ276.5および66.0であった。陰性対照(ベビーオイル)の累積刺激指数は4.5であった。 20%炭酸プロピレンを含有する試験的腋下スティックの皮膚刺激性および感作性を反復傷害パッチテストで評価した。試験群は18〜78歳の男女91例からなった。主に白人であったが、ヒスパニック、黒人およびアジア系も含まれた。感作期は試験材料(200 mg)を含む密封パッチを貼付して開始した。しかしながら、3回投与後に、製品は密封(閉鎖)条件で試験するには刺激性が強すぎることが「判明した。」製品50 mgおよび半密封(開放)パッチを使用して、新たな部位で試験を再開した。感作は連続10回、48時間パッチとし、金曜日に貼付したパッチは72時間そのままにした。14日間の無処置期間をおいた後、10回目の感作を行った。惹起は、それまでの未曝露部位に1回48時間のパッチを行った。惹起パッチに対する皮膚反応を製品投与後48および72時間に評価した。感作期間中の反応は、通常「かろうじて認められる」(「疑わしい」)紅斑から「明確な」紅斑の範囲であった。被験者によっては時に浮腫もみられた。被験者10例で惹起パッチにより皮膚反応が発現した。これら10例の反応者のうち、6例はかろうじて認められる(疑わしい)紅斑で、4例は明確な紅斑または軽微浮腫であった。後者の4例の反応者(被験者A、B、CおよびD)のうち、3例(A、B、C)は再惹起試験に同意した。再惹起試験の結果は被験者BおよびCの感作は陰性で、被験者Aは再惹起パッチでかろうじて認められる(疑わしい)紅斑が発現した。試験医師は、20%炭酸プロピレンを含有する試験的腋下スティックは本試験条件下において感作性はないと結論した。 各約3.5%の炭酸プロピレンを含有する4種のゲル(A、B、CおよびD)の皮膚刺激性および感作性を試験した。ゲルAは、被験者54例(男子3例、女子51例)の上腕部または背部に24時間密封パッチを行った。毎週月、水および金曜日にパッチを貼付し計10回投与した。14日間の無処置期間をおいた後、元の接触部位に24時間の惹起パッチを行った。惹起後48時間に皮膚部位を観察した。ゲルB、CおよびDには、異なる試験法を使用した。これらの各3材料では、24時間密封パッチで月、水および木曜日に計15回感作を行った。17日間の無処置期間をおいた後、元の接触部位に24時間の惹起パッチを行った。曝露部位を惹起後48時間に観察した。ゲルBは49例の被験者群(男子9例、女子40例)について試験し、ゲルCおよびDは51例の被験者群(男子5例、女子46例)について試験した。4種のゲルに曝露した被験者154例のうち、ゲルDで2例に皮膚反応が発現した。これら2例の反応者の皮膚反応は、1例が4および5回目感作の評価時にみられた軽度から明確な皮膚紅斑で、もう1例は10回目感作時の紅斑および浮腫であった。これらの皮膚反応は初回感作時より遅れて発現し、接触部位を変えると再発しないことから、試験医師は「疲労」を意味すると考えた。3.5%炭酸プロピレンを含有するゲルDは累積刺激性または疲労性があると結論した。 2.0%炭酸プロピレンを含有するクリーム頬紅の皮膚刺激性および感作性を判定するために、Shelanski/Jordanの反復傷害パッチテストを実施した。製品を付けた密封ガーゼ包帯を各210例の被験者の上背部に24時間貼付した。毎週月、水および金曜日に3.5週間計10回感作パッチを行った。最終感作後10〜14日に、48時間惹起パッチを実施した。初回惹起の7〜10日後に、2回目の48時間惹起パッチを実施した。皮膚反応を0(反応なし)から4+(著明浮腫および小水疱)のスケールで判定した。2例の被験者に1回2+の反応(紅斑および丘疹)が発現した。これらの反応の1つは6回目の感作評価時に観察され、もう1方の反応は9回目の感作評価時に観察された。これら両反応は「非特異的刺激反応」と報告された。感作期または惹起期に他の皮膚反応は認められなかった。クリーム頬紅に「強い刺激性および接触感作性はない」と結論された。 2.0%炭酸プロピレンを含有する発汗抑制剤は、成人白人被験者51例(男子19例および女子32例)を対象とした反復傷害パッチテストで「基本的に刺激性はなく」、感作性も示さなかった。Draizeの方法の修正法を使用した。製品0.5 mLを含む密封パッチを上腕部の擦過および無傷皮膚部位に毎週月、水および金曜日に連続3週間(9回感作)24時間貼付した。6週に、元の無傷部位並びに無投与部位に24時間の惹起パッチを実施した。被験者4例の無傷部位に皮膚紅斑並びに他の4例の擦過部位に紅斑が感作期間を通じて様々な評価時にみられた。これらの反応は1、2回の評価時のみで持続しなかった。惹起パッチに対する反応は観察されなかった。 炭酸プロピレン約1.85%および0.54%をそれぞれ含有するアイライナーおよびリップスリッカーの皮膚感作性を評価した。リップスリッカーは206例の被験者、アイライナーは210例の被験者について試験した。製品をつけた密封パッチを上背部に月、水および金曜日に連続3週間貼付した。この感作期間終了時に、2週間の無処置期間を置いた後、2回の連続48時間惹起パッチを行った。惹起パッチは元の感作部位および隣接部位に行った。惹起後48および96時間に皮膚反応を判定した。いずれの製品にも感作性は観察されなかった。 304例の被験者を対象として、1.51〜1.98%の炭酸プロピレンを含有する3種の「眼部製品」の皮膚刺激性、感作性および光感作性を評価した。試験方法はSchwartzおよびPeckの報告した方法を使用したが、皮膚反応はWilkinsonらのスコアリング法に従った。感作期に、各被験者の皮膚に1回の閉鎖パッチおよび1回の開放パッチを48時間貼付した。惹起曝露は、感作期の10〜14日後に第2の48時間開放および閉鎖パッチのセットで行った。感作および惹起の判定の後に閉鎖パッチ部位に紫外線(UV)光を照射した。光源は、波長365 nmを含むスペクトルのスペクトロニクスB-100ブロードスペクトルランプを用いた。皮膚から12インチの位置にランプをおいて1分間照射した。感作期に評価した304例の被験者のうち、閉鎖パッチで9例に「軽度(非水疱性)」反応および1例に「著明(水疱性および潰瘍性)」反応がみられた。開放感作パッチの結果あるいはUV曝露の結果として反応は観察されなかった。惹起期に評価した304例の被験者のうち、閉鎖パッチで2例に軽度の非水疱性反応がみられたのに対し、UV光では4例に皮膚反応が発現し、開放惹起パッチでは反応は観察されなかった。過度の閉鎖パッチ条件およびUV光でみられた少数の陽性反応が炭酸プロピレンによるのか、あるいは製品中の他の成分によるのかは確認できなかった。試験医師は、この3種の眼部製品は本試験条件下において刺激性、感作性および光感作性はないと判断した。 同一の3種の眼部製品について、被験者149例を対象とした第2の試験でUV曝露を行う反復傷害パッチ法で試験した。試験方法および皮膚反応の判定方法は、それぞれShelanskiおよびWilkinsonらの方法に従った。製品(1.51〜1.98%炭酸プロピレン)をつけた開放および閉鎖パッチを皮膚に隔日に24時間貼付して、開放感作投与を計10回および閉鎖感作投与を計10回行った。各感作パッチの間は皮膚は24時間無処置状態とした。10回目の感作パッチの2〜3週後に、皮膚に48時間の開放および閉鎖惹起パッチを行った。初回、4、7および10回目感作パッチの評価後並びに惹起パッチの後に閉鎖パッチ部位をUV光に曝露した。光源は、波長365 nmを含むスペクトルのスペクトロニクスB-100ブロードスペクトルランプを用いた。皮膚から12インチの位置で1分間照射した。感作期および惹起期ともに少数被験者(反応者2〜6例/評価時)に軽度の非水疱性反応が観察されたが、反応は閉鎖パッチ部位に限られた。6および7回目感作の評価時に閉鎖パッチ部位で単発性の「強い」(浮腫性または水疱性)反応も認められた。開放パッチまたはUV光ではいずれも皮膚反応は観察されなかった。試験医師は、1.51〜1.98%炭酸プロピレンを含有する3種の眼部製品は皮膚に対する刺激性、感作性および光感作性はないと判断した。 被験者をUV照射および20%炭酸プロピレンを含有する試験的腋下スティック製品の両者に曝露した時、光毒性は観察されなかった。製品(50 mg)は被験者10例(23〜71歳の白人男女)の背部皮膚に半密封(開放)パッチにて投与された。24時間後にパッチを除いた後、製品の投与部位を320〜400 nmの発光スペクトルのフィルター光源(UVAおよびUVBレンジ290〜400 nmの連続発光スペクトルをもつキセノンアークSolar Stimulator(150 W)および紅斑誘発波長UVB290〜320 nmを遮光するSchott WG 345フィルター)で12分間照射した。UV曝露24および48時間後に皮膚反応を評価した。48時間後の評価で、被験者10例中8例の製品を投与しUV光を照射した部位並びに照射のみの部位に色素沈着過度が観察され、2例の被験者では皮膚反応はみられなかった。24時間後評価時の反応も同様であった。24または48時間に試験的腋下スティックのみを投与した部位に皮膚反応は認められなかった。試験医師は、試験的腋下スティックに光毒性の証拠はないと結論した。 同一の試験的腋下スティック(20%炭酸プロピレン)について、被験者25例で光アレルゲン性を評価した。被験者は18〜75歳の白人男女であった。感作期に、製品(50 mg)を週2回(月および木曜日)半密封パッチで各被験者の背部皮膚に投与した。計6回感作投与を行った。各感作投与24時間後に投与部位を各被験者のMED(最少紅斑線量)の3倍の線量に曝露した。光源は、UVAおよびUVBレンジ(290〜400 nm)の発光スペクトルをもつキセノンアークSolar Stimulator(150 W)とした。7日の無処置期間をおいた後、製品を含む惹起パッチを非曝露部位に貼付した。24時間後、惹起パッチを除き、投与部位にUVA(320〜400 nm)を3分間照射した。製品投与24時間後、照射24、48および72時間後に惹起期の皮膚反応を評価した。被験者25例のうち、14例で惹起期に皮膚反応が発現した。14例の反応者のうち、9例は「軽微」(または「疑わしい」)紅斑で、2例は「色素沈着過度」、3例は「軽度」から「中等度」紅斑であった。この後者の3例(被験者A、BおよびC)にはさらに色素沈着過度または様々な程度の浮腫がみられた。この3例のうち、2例(B、C)は非照射対照部位(製品曝露のみ)にも同様に反応がみられた。照射対照部位(UVA曝露のみ)は、25例のいずれの被験者でも反応はみられなかった。1例の反応者(A)は再惹起試験を終了した。この被験者に発現した反応は「おそらく」光刺激性があると考えられ、「低レベル」の光アレルギーの可能性は「除外できない。」試験医師は、被験者25例中24例には光アレルギー所見はないと結論した。感作期の結果は報告されていない。 その他 加水分解されて二酸化炭素とプロピレングリコールになるが、本反応を触媒する酵素がラット肝臓に存在し、生成するプロピレングリコールの毒性が示唆されている。2) (Yang et al., 1998) ■引用文献 1) Anonymous (1987) Final report on the safety assessment of propylene carbonate. J Am Coll Toxicol 6(1), 23-51. 2) Yang Y-L et al. (1998) Enzymatic hydrolysis organic cyclic carbonates. J Biol Chem 273(14), 7814-7817. |メニューへ| |
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