日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 トリアセチン
英文名 Triacetin

CAS 102-76-1 (link to ChemIDplus)
別名 グリセリルトリアセタート(110887)、1,2,3-Propanetriol triacetate, glyceryl triacetate, triacetyl glycerine, Enzactin, Fungacetin
収載公定書  薬添規(JPE2018) USP/NF(28/23) EP(5.0)
用途 可塑剤,基剤,コーティング剤,溶剤,溶解補助剤


JECFAの評価 (link to JECFA)
入手可能なデータ(毒性学的、生化学的データ等)によると、その物質の使用や、効果が期待されうる水準での使用による一日摂取量からは健康への危険性が認められないため、一日許容摂取量(ADI)は規定しない。


単回投与毒性  (link to ChemIDplus)
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
マウス 皮下 2670mg/kg Spector, 19561)
マウス 腹腔内 1400-1700mg/kg Gast, 19631)
マウス 経口(雄) 1800mg/kg SGast, 19632)
マウス 経口(雌) 1100mg/kg Gast, 19633)
ラット 皮下 3250mg/kg Spector, 19561)
ラット 経口 3000mg/kg Unichema, 1994 2)
ラット 経口 >2000mg/kg Unichema, 19942)
ラット 経口 6400-12800mg/kg Anstadt, 19762)
ラット 吸入(雄雌) >1.721mg/L(4時間) Unichema, 19942)
ウサギ 皮下 >5000mg/kg  Unichema, 19942)
ウサギ 皮下 >2000mg/kg Unichema, 19942)
モルモット 皮下 >20mL/kg Unichema, 19942)


反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
1群5匹の雄のラットにトリアセチンを1%、2%、4%、8%含む餌を16週間与えた結果、毒性は認められなかった。2) (Blumnthal, 1964)

3ヶ月の混餌投与実験では、トリアセチンを20%含む餌を与えたラットには体重減少はみられず耐性を示した。60%含む餌では顕著な体重増加抑制および死亡率の増加が認められた。2) (Sheftel et al., 1969)

1群8匹の雄のSprague-Dawelyラットにトリアセチンを30%含む粉餌を3〜4週あるいは12〜13週間与えた。成長抑制が認められ、肝臓の腫大は全ての動物に認められた。2) (Shapira et al., 1975)

脂肪の代わりに55%のトリアセチンを含む餌をラットに与えた結果、体重の増加がみられた。2) (Opdyke, 1978)

0%、50%、90%(15.2および27.2g/L)のトリアセチンを7日間ラットに静脈内持続投与した結果、明らかな毒性徴候は認められなかった。2) (Bailey et al., 1992)

雄のSprague-Daweleyラットを用いて、トリアセチンの消化管粘膜細胞や血漿基質への代謝の影響を調べた。ラットは全カロリーの28.5%のトリアセチンを含む餌を30日間与えられたが、明らかな毒性徴候は認められなかった。2) (Lynch et al., 1994)

250ppmのトリアセチンを1日6時間、週5日、64日間にわたって1群3匹のラットに吸入させた結果、NOELは250ppmであった。1日6時間、64日間8271ppmのトリアセチンを吸入させた3匹のラットも、NOELは8271ppmであった。2) (Unichema et al., 1994)

250ppmのトリアセチンを蒸気として週5日、13週間にわたりラットに吸入させた。肝臓および腎臓重量、血球数、尿検査で変化は認められなかった。2) (Unichema et al., 1994)   


遺伝毒性 (link to CCRIS)
成熟したキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を用いて変異原性を調べた。0.2〜0.3mgの用量において750分の1の割合で染色体に自然発生性の突然変異が認められた。2) (Efremova, 1962)

サルモネラ菌株のTA1535、TA1537、TA1538を用いてトリアセチンを0.0013%、0.00065%、0.000325%の濃度でDMSOに溶解しPlate testを実施した。代謝活性化を行っても行わなくても変異原性は認められなかった。また、サルモネラ菌株のTA1535、TA1537、TA1538を用いてトリアセチンを0.0013%、0.00065%、0.000325%の濃度で、また酵母菌株D4を用いてトリアセチンを1.25%、2.5%、5%の濃度でDMSOに溶解し、suspension test を実施した。代謝活性化を行っても行わなくても変異原性は認められなかった。2) (Litton Bionetics, Inc. 1976)

サルモネラ菌株TA1535、TA1537、TA98、TA100 を用いて50から5000μg/plateのトリアセチン用量でAmes試験を実施した結果、代謝活性化を行っても行わなくても変異原性は認められなかった。2) (Unichema et al., 1994)


がん原性 (link to CCRIS)


生殖発生毒性 (link to DART)


局所刺激性
ウサギ
50%の濃度のトリアセチンをウサギの結膜嚢へ投与した結果、顕著な充血と中程度の水腫が認められた。2) (Li et al., 1941)

未希釈のトリアセチン0.1mlをウサギの結膜嚢へ投与した結果、1時間後に2.1/110、24時間に1.5/110と標準的な成績を示した。2) (Draize et al., 1944)

アルビノのウサギ6匹を用いて未希釈のトリアセチン0.1mlを結膜嚢へ投与した。眼はDraizeの方法によりスコア化し、角膜の厚さも測定した。また、1群4匹のウサギを用いて同様の処置を施し、2時間後と24時間後に安楽殺した。2時間後ではDraizeスコアは1で、角膜の厚さに変化は認められなかった。2時間以降では角膜の乾燥重量/湿重量は有意に減少したが、24時間後では対照群と比較し有意な差は認められなかった。結膜の乾燥重量/湿重量は2時間後と24時間後で差が認められなかった。2) (Conquet et al., 1977)

モルモット
閉塞性パッチを24時間貼付け、5あるいは10cc/kgのトリアセチンを2匹のモルモットに投与し皮膚刺激性を調べた。軽度の紅斑が認められた。5から20cc/kgのトリアセチンを含む閉塞性パッチを3匹のモルモットに貼付けした結果、軽度の水腫と紅斑が観察された。高用量を投与した動物では軽度の皮膚刺激性が認められた。2) (Anstadt, 1976)

1群3匹、3匹、2匹のモルモットを用いてトリアセチンの刺激性を調べた。14日間の観察期間の終了時には、紅斑、軽度の水腫、脱毛、剥離が認められた。2) (Unichema et al., 1994)


その他の毒性
抗原性
トリアセチンを投与開始5日間、1日3回モルモットの皮膚に投与し、1、2、3週間後に再び投与したところ、モルモットへの感作性は認められなかった。2) (Unichema et al., 1994)


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
未希釈のトリアセチンを用いてMaximization testを33人の被検者に実施した。トリアセチンは刺激性がないことが示唆されていたため、閉塞性パッチを用いて試験部位を2%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)によって24時間前処置した。トリアセチンの閉塞性パッチを5日ごとに48時間前腕の掌側面に貼付した。10日から14日の非投与期間後に、以前に暴露していない右側背部にトリアセチンのパッチを貼付した。暴露の前に、閉塞性パッチにより2%SLSを左側背部に30分間暴露した。加えてSLS対照パッチとペトロラタムパッチをそれぞれ左側と右側に貼り付け、対照として用いた。未希釈のトリアセチンは刺激性も感作反応も示さなかった。2) (Epstein, 1976)

Duhring-chamber testを健康な志願者20人に対して実施した。被検物質を50%の希釈液として24時間投与したところ、わずかに皮膚の反応が認められた。2) (Unichema et al., 1994)

市販されているトリアセチン(ジアセチンやモノアセチンを含む)は、ヒトに重度の熱傷、疼痛、結膜の発赤を引き起こしたが、組織傷害性は認められなかった。純粋なトリアセチンよりもジアセチンが不快感を与えると著者は主張している。2) (Unichema et al., 1994)



この資料の一部は食品・医薬品共用添加物の安全性研究の成果を引用した.

参考文献
OECD database (link to SIDS)

1) WHO Food Additive Series No.8 Triacetin. 1975 (link to WHO DB)
2) Fiume MZ, Final report on the safety assessment of triacetin. Int J Toxicol. 2003; 22 Suppl 2; 1-10 (link to the Journal)




   

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