和名 ジシクロヘキシルアミン亜硝酸塩
英文名 Dicyclohexylamine Nitrite
CAS 3129-91-7 (link
to
ChemIDplus)
別名 亜硝酸ジシクロヘキシルアミン,亜硝酸ジシクロヘキシランモニウム,Dicyclohexylaminonitrite
収載公定書 薬添規(JPE2018)
用途 防錆剤
■単回投与毒性 (link
to
ChemIDplus)
動物種
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投与経路
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LD50
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文献
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マウス
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強制経口
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205±15mg/kg
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McOmie
& Anderson, 1949 1)
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ラット
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強制経口
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240±26mg/kg
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McOmie
& Anderson, 1949 1)
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モルモット
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強制経口
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350±50mg/kg
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McOmie
& Anderson, 1949 1)
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急性毒性試験
試験動物: マウス・ラット・モルモット
試験方法: 亜硝酸ジシクロヘキシルアミンを水溶液またはアカシア・デキストローズ懸濁液として、100-800mg/kgの用量で単回強制経口投与した。
結果 : 毒性発現の傾向はマウス・ラット・モルモットで同様であり、100mg/kg以上の投与で、10分から15分後に間代性痙攣が観察された。ラットおよびモルモットでの死亡例の病理検査結果等より、死亡原因は呼吸器障害によるものと推察された。致死量以下で観察された反応は、短時間に完全に消失した。1)
(McOmie & Anderson,1949)
■反復投与毒性 (link to
TOXLINE)
34日間反復投与毒性試験
試験動物: モルモットおよびラット。
試験目的: 強制経口投与による34日間反復投与毒性の有無。
試験方法: モルモットに、亜硝酸ジシクロヘキシルアミンを1%濃度で水に溶解、あるいは1%デキストロース水溶液に懸濁して15mg/kgで34日間反復強制経口投与した。
ラットには、亜硝酸ジシクロヘキシルアミンの500ppm水溶液を34日間飲水投与した。投与量は平均42.3mg/kg算出された。モルモット、ラットともに投与終了の5および10日後に、2例ずつ屠殺、解剖した。
結果 : 剖検時にはわずかな体重減少が観察されたが、病理解剖学検査で変化は認められなかった。病理組織学的検査において、モルモットで背景病変でもある心筋でのリンパ球浸潤が認められた以外、異常は認められなかった。1)
(McOmie & Anderson,1949)
亜急性試験(吸入毒性試験)
試験動物: マウス
試験目的: 曝露による亜急性毒性の有無。
試験方法: 亜硝酸ジシクロヘキシルアミンを10%濃度で50%メタノール溶液に溶解し 50mlを動物(10例)に噴霧した。コントロールとして、50%メタノール溶液の50mlを動物(10例)に噴霧した。暴露は15日間で10回行った。一回の噴霧時間は約5分間であった。
結果 : 10回の曝露終了直後には両群で全ての動物が生存していたが、曝露群において、2例は曝露終了後24時間以内に、2例は48時間以内に、3例は5日後死亡し、曝露終了2週間後には1例のみが生存していた。コントロール群では、曝露終了2週間後までに1例のみが死亡した。各群2例を最終曝露の3日目に病理解剖した結果、両群において、肺にうっ血が観察された。病理組織学的検査では、両群ともに肺胞の広範囲な出血が認められた。肝臓におけるわずかな病理変化が認められたが、腎臓には異常は認められなかった。1)
(McOmie & Anderson,1949)
■遺伝毒性
(link to
CCRIS)
■がん原性
試験動物: ラット、マウス
試験方法: マウスに1%濃度の亜硝酸ジシクロヘキシルアミン0.1ml、12-13ヶ月間皮下投与した。ラットに2%濃度の亜硝酸ジシクロヘキシルアミン0.5mlを11-13ヶ月間皮下投与した。
結果 : 5例のマウスで13-20.5カ月後に腫瘍が認められた。腫瘍は、肝細胞癌、肺癌2例、肝原発性アデノーマ、海綿状肝血管腫であった。7例のラットで腫瘍の発生が認められた。6例は線維肉腫、1例は皮膚への転移を伴う肺癌であった。発症が12ヶ月後であったことから、発がん性は弱いものと考えられた。2)(
Pliss,1958)
■生殖発生毒性
該当文献なし
■局所刺激性
皮膚一次刺激試験
試験動物: ウサギ
試験方法: 亜硝酸ジシクロヘキシルアミンを50%メタノールに溶解し、ガーゼ(10×10cm)に浸したものを毛刈りしたウサギの背部に24時間貼付した。コントロールとして50%メタノールをガーゼに浸したものを同様に貼付した。亜硝酸ジシクロヘキシルアミンの投与量は2.5mg/kgに設定した。
結果 : 観察の結果、皮膚刺激性は認められなかった。検体除去後2週間に、全身性の影響も認められなかった。1) (McOmie & Anderson,1949)
パッチテスト
試験動物: ウサギ
試験方法: Draize法に従い、亜硝酸ジシクロヘキシルアミンの固体を直接もしくは10%濃度で50%メタノールに溶解したものを、ウサギ2例の無傷皮膚および擦過皮膚に投与した。さらにコントロールとして50%メタノールを、1例の無傷皮膚および擦過皮膚に投与した。
結果 : 紅斑・浮腫は認められなかった。検体除去1週間後、損傷皮膚に病理組織学的な障害は認められなかった。1) (McOmie
& Anderson,1949)
累積刺激性試験
試験動物: ウサギ
試験方法: 10%亜硝酸ジシクロヘキシルアミン溶液の10mlを20日間にわたり15回、体毛を除去した4例のウサギの背部皮膚100平方cmに塗布した。コントロールとして1例に50%メタノール液を同様の頻度で塗布した。塗布終了後塗布群の一例を屠殺して剖検を行った。
結果 : 炎症・紅斑・発毛停止・その他の皮膚反応は認められなかった。肺・腎臓・肝臓・皮膚に反応は見られなかった。1) (McOmie & Anderson,1949)
眼刺激試験
試験動物: ウサギ
試験方法: Draize法に従い実施した。
結果 : 2例のウサギにおいて軽度の結膜炎の兆候を認めたが、有意なものではなかった。1) (McOmie & Anderson,1949)
■その他の毒性
ウサギの血圧に対する作用
試験動物: ウサギ
試験方法: ペントバルビタールナトリウム麻酔下、亜硝酸ジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピル亜硝酸塩、亜硝酸塩をウサギ耳静脈に注入後の頸動脈血圧を測定した。対照として血管拡張薬のニトログリセリンを使用した。
結果 : 亜硝酸ジシクロヘキシルアミンでは明らかな血圧降下作用が認められ、その効果は亜硝酸塩よりも大きかった。作用時間はニトログリセリンより長かったが、亜硝酸塩とほぼ同様であった。1)
(McOmie & Anderson,1949)
肝毒性
試験動物: ラット
試験方法: 亜硝酸ジシクロヘキシルアミン32.5mg/kgを24例のラットに3日間腹腔内投与した。同様にシクロへキシルアミン349mg/kgの投与も行った。投与終了後に屠殺し、肝組織について電子顕微鏡観察を行った。
結果 : 亜硝酸ジシクロヘキシルアミン投与群の肝実質細胞で、シクロヘキシルアミン投与群に比して有意な変化が認められた。すなわち、多くの細胞で核の膨化、クロマチン量の減少、グリコーゲン顆粒の減少が認められ、粗面小胞体の拡大も認められるなど、亜硝酸ジシクロヘキシルアミンはシクロヘキシルアミンに比してより早期かつ著明に肝障害性を示すと結論している。3)(Gordienko,1977)
■ヒトにおける知見
該当文献なし
■引用文献
1) McOmie WA, Anderson HH: The toxicity of dicyclohexylamine nitrite. In: Anderson HH, Alles, GA, Daniel TC, editors. University of California Publications in Pharmacology vol. 2 Berkery and Los Angels California:University of California Press; 1938. p.231-240.
2)Voprosyl Onkologil. 1958;
4: 659-667.
(link to
PubMed)
3)
TSITOL GENET. 1977; 11: 76-78.
(link to
PubMed)
■Abbreviation
TOXNET DB; ChemIDplus DB in TOXNET,
CCRIS;Chemical
Carcinogenesis Research Information System , DART;
Developmental Toxicology Literature
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